監督から母へ その9 「自分をマイノリティと思って生きること」

前回と前々回、くみちょ。がご自身の「生い立ち」について書いてくださいました。数奇とも壮絶とも表現できるかもしれないその生き様を、私は一気に読むことができなくて、ときどき文章から目を離して、自分の感情をリセットしながら読み進めました。

くみちょ。がなぜ性別違和や発達障害のあるお子さんを、すんなりと受け入れ、葛藤なく笑って生きてこれたのか、その秘訣が少しずつ明らかになってきたように思います。そしてここには、私たちひとりひとりがどうやって自分の個性や運命を認めて、どう生き進めていったらより心地よい人生が送れるのか、たくさんのヒントがあるように思いました。ここまでご自分の生い立ちについてオープンに話してくださるくみちょ。に心から感謝です。

それでも「いきポン」な私は、もう少し突っ込んで聞いてみたいこともあります。くみちょ。の生い立ちの6回シリーズが終わったら、とこちょからくみちょへの質問コーナーを設けたいと思いますので、そちらも楽しみにしていてくださいね。
いきポンの説明についてはこちら↓
https://note.com/bokuzero/n/nef8fe15e9f72

さて、今度は私の生い立ちを。
と言ってもくみちょの後では、「なんて普通の人生だったんだろう」と思いますけど…。そもそもこの「普通」というキーワードも曲者ですね。

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小学校時代、私はクラスの中心人物でした。授業中はいつも1番で手をあげる。1学期の学級委員に選ばれる。絵をかけば入賞する。作文をかけば文集に載る。朝の朝礼で賞状が配られる時、かなりの確率で「トコイミユキ」の名前が呼ばれました… ただし3年生までは…。

4年生になると、それまでの当たり前は、すべて幻影だったことに気づくことになります…

それまで私は、教師である母親が務める小学校に越境通学していたのです。私は「常井先生の子ども」として特権をもっていた。それは「虎の威をかる狐」の構図だった…。4年生のとき地元の小学校に転校したときから私の辛い学校生活が始まりました。

もう虎がいなくなっていたことに気づいていなかった私は、転校してもしばらくは「それまでの当たり前」と同じように振舞っていました。そうしたらあっという間にクラスメートたちから煙たがられました。だんだん孤立するようになりました。

なんでこれまでと同じようにやっているのに、うまくいかないんだろう?私は混乱していました。その混乱は中学校を卒業するまで続きました。私にとって「学校」は辛い場所となりました。一度作りかけたアイデンティティが等身大ではない幻影だったので、作り直さなくてはならず、その作り直しの作業にとても時間がかかったんだと思います。

「自分」ってなんだっけ?なんで私は私になったんだろう?なんで毎朝起きても私は私のままなんだろう?自分がわからなくて辛かったし、どういう自分でいたら、クラスに溶け込めるのか全くわからなかったのです。しかも「ルールを守ること」や「周りに合わせる」ことが人一倍苦手でした。

中学校に入ると辛さは倍増していきました。制服はじめ校則を守る意味がわからなかった。前髪の切り方やスカートの長さまで決まっていた。全員が入ることを強制されていた部活はテニスを選びましたが、レギュラーと非レギュラーは、ユニフォームから、練習の内容、練習の時間帯、挨拶の順番まですべて差をつけられていて、へたっぴだった私は、いつも差別されているかのような心持ちがして悲しい思いをしていました。

部活のときを振り返った内容はこちら↓ https://note.com/bokuzero/n/ndaf03e63b848

クラスでは、いくつかの女子グループに分かれていて、序列もあったように思います。グループを渡り歩くことは禁止、グループ内ではいつも一緒にいて行動を共にしなければならない、そういう暗黙の了解もあったように思います。私はそういう暗黙の了解を読むことがとても下手で、そのため「シカト」などの制裁を受けたこともありました。

そんな自分自身を私は、何かがおかしくて変なのではと思っていました。周りがみんな「普通」に見えて、私は普通になりたいとずっとずっと思っていました…当時は「マイノリティ」という言葉は知らなかったけど、私はずっと自分をマイノリティだと思って生きてきたのです。そして「自分とは何者か」とずっと問い続けてきたのです。

そして、そんな私を慰めてくれていたのは「ミュージックビデオ」でした。特に大好きだったイギリスのポップバンドのビデオはどれも格好良くて新しいアイディアに溢れていて、いつかこんな映像が作れたらいいなって思っていました…

いまでも当時のことを振り返ると辛い思いが再現しますね。同時に、いま生きている自分の姿から当時のことを考えると、スティーブ・ジョブスの言葉じゃないですけど「connecting the dots」ーーすべてがあったからこそ、今の自分があると心から思います。

さて、今ある自分に感謝しながら、またくみちょ。にバトンを渡します。

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