元町映画館での上映を終えて (LINDA)
こんにちは、LINDAです。この記事をお読みの方はすでに、ブルボンヌさんのレビューをお読みになられたでしょうか。
本当に素敵なレビューですので、皆様ぜひお読みください!
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さて、11/5は元町映画館での上映最終日でした。平日にも拘わらず、多くの方にお越しいただき、最後まで楽しい時間を皆さんと過ごすことが出来ました。お越しくださった皆様、本当にありがとうございました。
そして11/6には、シネ・ヌーヴォでの上映が始まりました。上映初日は客席もほぼほぼ満席で、大変活気に溢れていました。連日のトークで疲れが見えていた監督も、その顔にはみんな大好きな、くしゃくしゃとした笑顔が浮かんでいて、遠くでトークする彼を眺めていながら、私もとても嬉しい気持ちになりました。
ということで今日は、元町映画館での日々を振り返ってみたいと思います。
なぜ私は上映活動に参加したのか
とは言いつつ、まずは少し私の話をさせてください。それは今まで上映委員にも、そして監督にさえも話したことがなかったことです。
劇場に立っていると、どうしてLINDAさんはこの映画の上映活動に参加しようと思われたのですか、とよく聞かれます。確かに私は、この映画に出ているわけでもないし、製作に関わっているわけでもありません。この映画との接点はただ一つ、監督の髙木佑透と知り合いであること、それだけです。ですから、そう問われるのも尤もなことだなあと思ってしまいます。そしていつも、正直にお答えしたものかと思案します。思案の末、「初めて観た瞬間にこの映画に魅せられた」、「ブルボンヌさんと繋がれるかもしれないと感じた」、「映画の持つ優しい語り口に共感した」というようにお答えします。それはどれも本当のことです。確かに私はこの映画を観た瞬間に視界が開けたような気持ちになりましたし、先日のブログに書いたようにブルボンヌさんと繋がれるかもしれないと感じてもいました。
けれど、もっと根源的で、決定的な理由、それはいわば「不純な」ものなのです。
つまり、本当はこうお答えすべきなのかもしれません、「映画を語る時に、目を輝かせながら、くしゃくしゃと笑う監督の笑顔が好きになったから」と。
初めて監督と会った時、私は彼のことを「少し気難しくて、こだわりが強そうだなあ」と感じていました。緊張しているからか私とあまり目を合わせようとしないし、あまり話しかけてもくれない。印象はますます悪くなるばかりでした。けれど、ひょんなことからこの映画の話になった途端、彼のまなじりは下がり、目には光を孕みながら私を捉え、饒舌になったのです。まるで堅物・髙木佑透という殻を脱ぎ捨てたような感じ。そしてあのくしゃくしゃとした笑顔を覗かせたのです。
いやあ、あの笑顔で話しかけられたら、この人について行こうと思っちゃいますね笑 喜色満面という言葉はこの人のためにあるんじゃないかとさえ思うほどです。体中から喜びや人間への好奇心、人を愛する思いを溢れさせ、そして何よりこんなに魅力的な笑顔を見せるこの人が作った映画なら、きっと良い映画に違いない。この人の近くにいれば、きっときれいで、柔らかくて、温かくて、かけがえのない何かを一緒に見られるに違いない。何故だか分からないけれど、そう確信しました。
つまり、私が上映活動に参加した理由とは、監督のくしゃくしゃとした笑顔に一目ぼれしたからにほかなりません笑
とは言っても、上映活動は決して順調には進みません。時には上映委員同士でぶつかりあいますし、誰かが感情を爆発させ、また別の誰かが涙を流すことだってあります。私も修論を書きながらの上映活動で、余裕を失くしてしまいそうになったことも幾たびか。監督も次第にあの笑顔を見せることがなくなり、「詐欺じゃないか!」と密かに私は憤りながら、それでもどうにか活動を続けてきました。
「私はどうして活動に参加しているのか」、「この映画は私に何を与えてくれるのか」、元町映画館での上映が始まった頃に何度も自分に投げかけた問いです。もう私には分からなかったのです。大好きなあの笑顔を見せる髙木佑透が一気に遠ざかってしまったようで悲しかったし、上映委員たちがちょっとしたすれ違いからぶつかりあうのを見ているのは本当に辛かった。心のどこかにもやもやしたものを抱えながら、それでも監督も上映委員たちも劇場に向かいました。
私はこの映画と何を共に出来るのか
けれど、劇場に立っているうちに感じたことがあります。「この映画はもはや髙木佑透の、上映委員会だけの作品ではないんだな」ということ。たくさんの方が楽しみにしながら観に来てくださり、それぞれの日常を重ね合わせながら47分間向き合って下さり、シアターの外では本当に温かい笑顔で私たちに話しかけて下さる。気づけば、私の周りにもたくさんの笑顔が溢れていました。そして一つ一つの笑顔から、私は信じられないほど大きな力を頂いていました。
真ん中に写っておられるのはofuneさん。この映画でも印象的な、監督と壮真くんのファミレスでの食事風景を絵にかいてくださいました。後ろで額縁に入っている絵が見えますか? ofuneさんの絵です! 青を色調にしているのに、全然冷たい感じがなくて、むしろ温かさが伝わってくるのです。監督と壮真くんの後ろにはシロクマとウマも仲良く食事をしていて、この絵の続きがとても気になります。きっと監督のあの笑顔と壮真くんの手言葉で、シロクマたちとも仲良くなっちゃうんだろうなあ… ofuneさんの笑顔は本当に温かくて、上映委員みんな沢山元気をもらいました!
続いてのお写真は、11/4にトークゲストとして来てくださった稲原美苗さん。なんとこの日は私と美苗さんと監督とで登壇しました! 美苗さんの笑顔も本当に素敵なんです。体中から喜びや嬉しさを発散させていて、近くにいるだけで私も幸せな気持ちになります。登壇中は、隣に座っていた監督の怖い目線に怯えながら笑、美苗さんの笑顔に何度救われたことか。
トークの中で美苗さんは、「健常者ってよく言うけれど、本当の健常者になりたいなら、ロボットになるしかありません。身体のどこもかしこも完璧な人なんて、この世の中に果たして存在するのでしょうか。仮にそんな完璧な人を目指そうと思っても、行きつくのは過労死とか、精神的な不調とか、結局はそこから遠ざかってしまうのです。だから私は、障害者と健常者という二分された枠組み、そしてその枠組みに基づく規範を受け入れません」と仰っていました。
美苗さんは社会が押し当てようとする「規範」や「枠組み」に意識的であって、「個」というものを大切にされています。「個」の尊重がそのまま、彼女の優しい人柄に繋がっているのではないかと強く感じました。
こちらは、上映委員の池田さんと蓮本さん。このお二人の笑顔も本当に素敵なんです。私も色々と余裕を失ってしまいそうになった時、このお二人の笑顔に何度救われたことでしょう。本当に彼女たちに助けられています。
そしてこちらは、元町映画館支配人の林未来さん。連日のトークを、後ろからいつも温かく笑顔で見守って下さいました。身体全体を使って喜びを爆発させながら笑っておられるのを見ていると、林さんがこんなに笑ってくださるならきっと大丈夫、と励まされているようでいつも安心感を頂いていました。本当に明るくて、楽しくて、温かい方です。
そして最後はやっぱり、この方。このくしゃくしゃとした笑顔を見てると、どんなに大変だったことも忘れて、また頑張ろうって思っちゃうんですよね。この笑顔が今の私の居場所を照らし出し、心丈夫に生きる道標となっているように思います。
こんな風に、元町映画館で沢山の笑顔に出会い、一人一人から力を頂きながら、今までの自分を見つめ直していました。そして私の胸の内で、ある種の「コペルニクス的転回」が起ってもいました。それは、「この映画は私に何を与えてくれるのか」ではなく、「私はこの映画と何を共に出来るのか」ということ。
大変な時は大変だし、辛い時は辛い。それを無視することは出来ません。けれど、そんな現実を認めた先に、その現実なりに美しいものは見つけられるんじゃないかと思うのです。そこから自分にとって大切なものや幸せだって自分自身で決めて行けばいいんだと思う。そしてその幸せは、意外と日常のちょっとしたところ、あるいはすごく身近なところにあるのかもしれない。だから、私はこの映画のそばにありながら、日々触れる誰かの手のぬくもり、うきうきした声、美味しそうな匂い、そして誰かの笑顔の手触りを確かめ、一つずつ大切に愛でながら活動を続けられればと思います。
今日もまた、きっと劇場にはこの映画と、たくさんのお客様の温もりと、そしてあの人のくしゃくしゃとした笑顔が花を咲かせていればいいなあ。
(編集担当: LINDA)
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【劇場公開情報】2021年11月8日現在
大阪 @シネ・ヌーヴォ(本編48分、アフタートーク30分)
11/8(土)-11/12(金) 13:45~
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/bokutootouto.html
※各回上映後 、監督&日替わり特別ゲストによるアフタートークを行います!
詳細はこちら→ https://boku-to-otouto.com/infomation/
京都 @京都みなみ会館(本編48分)
11/8(日)-11/11(木) ①11:30~ ②14:00~ (1日2回上映になりました!)
11/12以降の上映も決定しています。詳しくは京都みなみ会館ホームページをご覧ください。
https://kyoto-minamikaikan.jp/movie/12338/
神戸 @元町映画館
終映しました。たくさんのご来場、誠にありがとうございました!
「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com