他者との関わりの道標ー映画『僕とオトウト』から考える ―清田倫太郎さん―
【感想を送って下さった方】清田倫太郎さん
京都大学ふんどし同好会会長、京都府立医科大学二回生。
一年の浪人期間を経て京都大学総合人間学部に入学。ふんどしの良さを伝えようと「京都大学ふんどし同好会」を立ち上げる。世界のふんどしを見てみたいと、ハワイにふんどし留学をしたことも。色々な世界に触れ、自らの将来を見つめていく中で、高校時代にふと頭を過ぎった医学部受験をすることを決意する。文系からのチャレンジではあったが、見事に入試をパス。現在医学部の学生として忙しい日々を送りながら、ふんどしへの並々ならぬ愛を温めている。
この度は素敵な機会をいただきありがとうございます。京都大学ふんどし同好会会長で、現在は京都府立医科大学に在学している清田倫太郎です。私自身映画鑑賞は好きなのですが、この縁がなければこの映画には出会えなかったのではないかと思い、大変感謝しております。壮真くんの姿、壮真くんを取り巻く環境や髙木監督を含む家族や周りの人の言葉は様々なことを考える契機となりました。その中から自身と他者との関わり方について記述したいと思います。(※以下よりネタバレも含みますのでご注意ください。また「ふんどし」とはあまり関係ない話になってしまっているということについてもご注意ください。)
『僕とオトウト』を観て、髙木監督と壮真くんの2人の関係だけでなく、きょうだい、兄弟姉妹、自身と他者など二者間のあり方を考えるきっかけとなりました。普段私は身近な人だけでなく、他者と本当に理解しあっているのであろうか。もちろん心から理解することは他者である以上、(自分自身の理解ですら難しいですし)限界はあると思いますが、お互いの共感や距離を近づけることは可能だとは思います。しかしその距離を近づけるということさえ、お互いに近づけようという意思がない限り実現はしませんし、探り合って失敗を重ね苦労しながら進めていくものですよね。また「障害」を持っていない人同士(何が「障害」かということはここでは議論をしませんが)であっても相互の理解は大変難しいのですから、「障害」を持っている人同士や一方が「障害」を持っている人との間であれば尚更でしょう。
映画の中で髙木監督は壮真くんと理解しあう道のりを歩み出すわけですが、私自身大変感動したのは髙木監督と壮真くんとが互いに苦悩しあいその関係を前進させることができていた点です。壮真くん自身はずっと髙木監督に対して距離を近づけようと考えていたのですが、これは髙木監督がたくさん悩み、悩み続けて、ようやくお互いが知ることができたことだと思います。また壮真くん自身もいろんな感情を抱き、苦悩していることが映画からもわかります。映画を見返してみると壮真くんの行動は、それが周りにとって一番の方法でない時はしばしばあったかもしれませんが、壮真くんなりに髙木監督や家族のことを考え行っていたのではないかと思っています。映画を通して髙木監督が自分自身や壮真くんと心から向き合った結果、壮真くんの考えを知ることができたことは2人の距離を近づける大きな一歩となったのではないのでしょうか。
もう一点面白いなと感じたのは、2人の関係が2人の間だけで完結しなかったことです。壮真くんが作業実習に参加した時の彼なりの気遣いを髙木監督やお母さんが驚いていたように、2人の間だけでは決して知ることができなかった壮真くんの一面をその関係の外の人によって知ることができたのです。2人の関係には2人以外の関わりも必要になるということです。2人の距離を近づける過程において、どうしても2人の間では解決できない問題や障壁があると思います。こういう時に外の人間だからこそ気が付けることも多く、その気付きや言葉が2人の関係を深めることができるのです。プロデューサーの池谷さんやお母さん、お父さん、施設の方々など周りの全ての方々が2人の関係をより深めてくれるのです。
髙木監督と壮真くんがそうであったように、他者との関わりは大変エネルギーのいることで、お互いに苦痛を伴うものだと思います。時間もかかります。諦めてしまうこともできてしまいます。その理解の先に何があるのか、自己満足で終わるかもしれません。それでも人間である以上、他者と関わりを持たざるをえない以上、必ず通らないといけない道だと思っています。この映画(小さな奇跡と言う方が良いでしょうか)はこの道の「道標」としての役割を果たすのではないのでしょうか。2人の関わりを赤裸々に描いたこの作品は私にとって他者との関係の道標となりました。
最後になりましたが、あまりまとまらず冗長な文となってしまい申し訳ございません。この映画が多くの人に届き道標となってくれることを切に願っております。
京都大学ふんどし同好会会長 清田 倫太郎
(編集担当:Linda)
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【上映委員 タレコミ】
なっかーさんのサックスの吐息を聞いた者はみな、忽ち忘我の境に彷徨してしまう
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「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com/
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