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映画公開初日を迎えて (LINDA)
今週の金曜日、映画「僕とオトウト」が京都みなみ会館で封切られました。平日の晩であったにも拘わらず、学生や会社員、シルバー世代の方々にいたるまで、文字通り老若男女、約50人もの方々を京都みなみ会館の大きなシアタールームにお迎えすることが出来ました。
お越しくださった皆様、本当にありがとうございました。
一上映委員としましても、これほど多くの方と共に初上映を終えることが出来、胸がいっぱいになりました。と申しますのは、この日のまさに前日まで、「明日はどれくらいの方が来てくださるんだろう、もしもゼロだったりしたら…」という不安にかき立てられ、監督と委員総出で色々な方に映画公開のご案内をしていたのです。また、上映日を迎えるにあたって、監督が多くの問題に一人で対処しておられるのを委員は間近で目にしていました。「自分の心配や不安を委員には悟られないようにしよう」と監督は気を張っておられる様子でしたが、されど上映活動の苦楽を共にしてきた委員たちにもおのずと伝わるのが道理なわけで… どのようにすれば監督や他の委員の力になれるか、それぞれに模索しながら迎えた当日だったのです。
さて、そんな感慨も一入の上映初日だったのですが、今回は大きなスクリーンでこの映画を観た時に感じた、二つの気づきについて共有できればと思います。
一つ目の気づき
まず、私がこの映画をスクリーンで観終えて最初に感じたのは、監督の顔がこんなにも観る者に印象づける映画だったんだという驚きでした。というのも、この作品には監督が自身の真正面にカメラを設置し、自らの顔を映し出すシーンが多々挟み込まれます。映画前半、監督はなかなかカメラの方に視線を向けず、斜め上を眺めてみたり、カメラの下を眺めてみたり、目を瞑ってみたりするばかり。監督の前にあるのは一台のカメラだけということは頭で理解しているのですが、まるでスクリーンの前にいる自分とも目を合わせようとしてくれないかのように思われて、やはりもどかしい気持ちになりました。
それが、映画後半になると、その真ん中に白い光を湛えた大きな黒目をじっとカメラに向けるようになり、ひと言ひと言にはっきりと力を込めながら話している監督の様子が非常に強く胸に焼き付きました。
思い返せば、私は上映委員として、オンラインでも対面でもよく監督と会話をします。しかし、意外にも向き合って話したことは数えるほどで、しかも私は相手の目を見て話すことが苦手ですので、監督の目に見つめられ、私も見つめ返した経験はなかったのでした。
そしてここでもう一つ重要なことは、クローズドなシアターの、目の前一杯に広がるスクリーンであったことではないかとも思います。これがもしスマホやパソコンで見ていたならば、私が感じたもどかしさ、気恥ずかしさのようなものを紛らせる娯楽や気休めに事欠かなかったことでしょう。しかし、あの時私の前にあったもの、それは大きなスクリーンだけだったのです。つまり観客の一人である「私」と監督との、面と面を突き合せた対話のような空気があの刹那には立ち現れていたのではないでしょうか。そして、監督と壮真くんが仲良くベッドに並んで座るところや歯磨きをするところだけでなく、監督が自らの心情を吐露するところや家族それぞれの思いが伝わりそうで伝わらないところなど、観ていてグッときたり、はたまたあれ?と思ったり、グサッと何かが刺さったように感じたところも含めて、自分なりに目と耳と手(と口と鼻と)で映画を受け止め、まっすぐに48分間向き合うことが出来たのではないかと感じています。
二つ目の気づき
もう一つの大きな気づきとしては、他のお客さんの反応を知ることが出来たということをあげたいと思います。自分一人が観ている時には意識しなかった劇中の誰かの言葉も、近くに坐っているお客さんの息遣いや鼻を啜る音、小さく漏らす笑いによって新たな一面が開けてくるものなのです。あるいは、自分が激しく心を動かされた場面で、後ろの人も大きく息をつくのを聞いていると、「ああ自分は今誰かと映画を通して心が繋がっているのだな」と深い安心感を得ることが出来ます。
私はお越しくださった方々の息遣いや笑い、時にむせび泣く声からこの映画の持つ奥深さや、観客同士をも繋いでくれる大きな力を見せてもらったように思いました。確かに自分は生きていて、この映画を観ていて、心をこれほどまでに動かされている。そして私の前や後、右、左にも同じく誰かの生が確かに鼓動していて、自分が今ここで映画を観ながら色々と考えていることは、自然で、大切で、誰かと「ともに」ある行為なのだ、と強く感じさせてもらいました。こんな温かな気持ちになって、明日も前を向いて頑張って行こうと思わせてくれる、これこそ映画館で他の方々と一緒に映画を観る醍醐味なのではないでしょうか。
こうして私は映画館でこの作品を観ることを通して、いくつもの大切で、細やかな気づきを掬い上げることが出来ました。それは映画の中だけにとどまらず、自らをも見つめ直す良い機会になりました。皆さんもぜひこの映画を劇場の大きなスクリーンでご覧になって、ご自身の身体でこの映画に向き合い、監督や壮真君たちの歯がゆくも確かに前進している温かなやりとりを受け止め、他の観客との心のふれあいの空間にしばし揺蕩ってみませんか。
(編集担当:Linda)
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【上映委員 タレコミ】
最近は全然上映委員とお会いできていません。私は文章でしか自分を上手く表現できないと分かっていて、どうしても文章でのやりとりには熱がこもってしまいます。そしてだからこそ、文章を書く時には、会って話す時よりも遥かに多くのリソースを割く必要があって、時に何かを削りながら向き合っている自分に気づきます。多くのリソースを割いて満足のいく文字でのコミュニケーションを取るか、不如意な意思疎通を自分に許容して気楽な言葉のコミュニケーションを選ぶか、とても悩ましい選択なのです…
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劇場公開情報
(2021年10月24日現在)
本編上映後は、監督&日替わりゲストによるトークセッションを行います!
(随時情報更新中!公式SNSで最新情報を発信しております)
京都 @京都みなみ会館(ゲスト情報を公開中!)
10/22(金) 19:00~
10/23(土) 15:30~
10/24(日) 15:10~
10/25(月)-10/28(木) 19:00~
※10/29以降も上映予定です!(終了日は未定)
https://kyoto-minamikaikan.jp/movie/12338/
神戸 @元町映画館
10/30(土)-11/5(金) 12:30~
https://www.motoei.com/post_schedule/
大阪 @シネ・ヌーヴォ
11/6(土)-11/12(金) 13:45~
http://www.cinenouveau.com/sakuhin/bokutootouto.html
「僕とオトウト」公式サイト https://boku-to-otouto.com/
上映情報専用ページ https://boku-to-otouto.com/infomation/
お問い合わせ bokutootouto@gmail.com