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頭の中の声と自分の話す声が初めて一致した話
武德です。
先日、Adobeから営業の電話が掛かってきたのですが、「茉莉さんいらっしゃいますか?」と何度も確認されました。
私ですと言ってもなかなか信じてもらえず、「本人です」と言ってやっと信じてもらえました。
思い返すと、3年前に男性ホルモン注射を打ち始めて、1年が経ったあたりから、電話口で「男性の方ですよね?」と言われることが多くなりました。
現在もずっと女性として生活しており、男性になろうと思って男性ホルモン注射を打っているわけではないので、自分の声が男性のように低くなることは好ましいことではありません。「茉莉」は、自分の声が低くなっていることを指摘されたびに落ち込んでいるような気がします。
頭の中で考えている声と、自分の出す声の高さはずっと一致していなかった
私は性別不合(性同一性障害)なので、本来の性別は男性ながら、生まれつき身体が女性です。
頭の中で考えているときの声はだいたい男性のような中~低音ですが、身体が女性のままだと、男性のような低い声は出せません。
そのため、「自分が頭で考えている声の高さ」と「実際に自分が出せる声の高さ」にズレが生じていました。
声の高さにズレがあるままだと、普段生活をしている男性の自分、誰かに話すときの女性の自分の一人二役になってしまい、自己同一性を保つのが難しくなることもあります。
そこでホルモン注射を投与し、身体も本来の性別に合わせていくことにより、自己同一性を保てるようになるのです。
自分の思ったことがそのまま声に出せる
「自分の思ったことがそのまま声に出せる」
これ、皆当たり前なのですが、性同一性障害の当事者の人はこれがありません。「女だけど、声が男だ」、「男だけど声が女だ」なのです。それで生活しないといけないなんて、想像を絶するやりづらさです。
自分としても、やっぱりこれはやりづらいです。
自己同一性を保つことの重要性
私自身、自分の見た目も男性にすることはそれほど意味はないと思っています。でも、声だけは、本来の男性の自分と一致していたほうがやりやすいと強く感じています。
性同一性障害の当事者が、身体の性別を変えるのは、けっして自分が望む身体の性別になりたいからではありません。「本来の性別と身体の性別の自己同一性を保つため」だと思っています。
声の高さはもとに戻さない
もう一人の自分である女性の「茉莉」のことを考えたら、声の高さをもとに戻す(高くする)手術を受けることも考えていました。
しかし、やっと手に入れた本来の自分の声を得たことは想像以上に嬉しいものです。
私は自分が性同一性障害だったと気づくのが遅れたこともあり、実に20年遅れで初めて獲得した自分の声だったのです。女性の名前なのに男性の声だから本人だと思われないということは度々起きますが、今のところは、このままでいることに決めました。
声域を広くするトレーニングをすれば地声は男性の声に声変わりしてしまっても、女性のような高い声も出すことができます。
茉莉は日頃から歌をたくさん歌って、高い声を保てるよう、前向きに過ごしています。
見た目は女性、声は男性、中に入っているのは二人
とってもおかしなことになっているのですが、これが私にとっての「普通」であり、普通に行きているのです。
でもやっぱり、性同一性障害の当事者の方は、自分と身体の性別がズレているのをほったらかしにしないことが重要です。ほったらかした結果、私にように「一人の人間の中に男女二人の自分がいる」のような、ややこしいことになるので、そこにエネルギーを使わないように、自分で対処法を考えるのがよいかなと思います。
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