カトリック信徒であり小説家の遠藤周作が、『キリスト教文学の世界』(主婦の友社、昭和52年)1巻で、ジュリアン・グリーンの小説「モイラ」についての17頁にわたる解説を書いている。
印象に残った箇所は、以下のとおりである。
イエス様が女性に対する淫らな肉欲で苦しまれたのか、という点については、確かに私もあまり考えたことがなかった。だが、遠藤周作がこの解説の最後であるカトリック神父の言葉を紹介しているように、イエス様もまた「肉欲」という方面での誘惑に――陥ることはなかったが、しかしその誘惑を受けて苦しまれただろうことは想像できることである。
イエス様は、誘惑に陥ることはなかったが、私たち人が感じるすべての誘惑をお受けになり、私たちと同様に苦しんでくださった。このイエス様の苦しみを心に思うのであれば、イエス様が私たちを追い立てるようなお方ではなく、私たちを優しく包み込み、ともに人生を歩んでくださるお方であることが分かるだろう。