夢の創造
未来の世界はどうなっていると思いますか?町中を空飛ぶ車が走っっていて、あちこちでホログラムが見える世界をイメージしたことはありますか?これはよくドラえもんが未来に帰った時に見られる22世紀の世界です。近年、科学の進歩が一段と早くなってきています。そんな未来も遠くないのかもしれません。
僕はここ最近、海外ドラマにハマっていて、30年以上前のドラマを見ているのですが、最も驚いたことは、30年前の世界ではまだスマホどころかガラケーもない事です。彼らは固定電話で連絡を取り、留守電を入れることでメッセージを伝えていました。かろうじて、ポケベルを使う人もいたくらいです。しかし、その後数年でガラケーが流行し、その後現在のスマホの形態まで変化していきます。当時の人々にとって、携帯というものは存在しないものなのです。存在しないものを創造した技術者に感謝と尊敬をするとともに、あることに気づきました。「今現在を生きている自分は、今"存在"していないもので、こんなものがあったらいいなというものが思いつかない」ということです。
皆さんはなにか思いつきますか?中にはテレポートや時間移動、空中散歩などが頭に浮かんだ人もいるかもしれません。ですが、それは今存在しているものです。実際にテレポートができる訳ではなく実在はしていません。しかし、テレポートというものを私たちは知っていてこの世界には"存在"しています。代表的なものを挙げると「どこでもドア」があります。今更どこでもドアの説明は省きますが、誰もが見た事があり、それを欲しいと思ったことがあると思います。つまり、テレポートが出来たら良いなと思ったのはどこでもドアを知っているからです。
最初にテレポートというものを考えた人は誰か分かりませんが、それは確かに既に存在していて、スターウォーズのハイパージャンプやドラゴンボールにでてくるヤードラット星人が用いる瞬間移動などがその例です。もしこれらがなかったらテレポートのようなものを想像出来たでしょうか。その人がその時に存在していなかったものを想像するということが最も凄いのかも知れません。私たちは既に存在を知っているので、空を飛びたいと思う事はなく、タケコプターがあったらな、舞空術が使えたらなと意識的に、もしくは無意識的に思うのです。
今"存在"していないもので、こんなものがあったらいいなというものが思いつきますか?
「こんなこといいな できたらいいな
あんな夢 こんな夢 いっぱいあるけど
みんなみんなみんな かなえてくれる
不思議なポッケで 叶えてくれる」
これは有名なあの歌の歌詞ですが、叶えてくれる夢は想像できたものだけです。 小中学生と話をしていると、今の自分には想像も出来ない突拍子もないアイデアを言うことがあります。現在実在しておらず、実現の見込みがないと最初から想定の外に起き、想像できなくしてしまっているため、僕には思いつきません。しかし、子供たちにとっては実在しているかは関係がないことなので簡単に思いつくのでしょう。思えば、のび太も「○○できる道具ないの?」とドラえもんに無理難題を要求したりします。この想像がなければドラえもんは夢のような道具を出すこともないのです。
この夢の想像について考えていると、一般的に学生に問われる夢についても思うことが出てきます。「夢はなんですか」「夢はありますか」これらのような問は学生の間に何度も聞かれます。その度に何かの職業を答えたり、まだ決まっていないと答えますが、この時に答える夢はほとんどの場合既に実在しているものだと思います。何かのきっかけでその職業を知り、それが持つ魅力からその職業を目指します。これが当たり前になったのはいつからなのでしょうか。この世界にはたくさんの職業がありますが、それらは最初からあったものではありません。何かのきっかけや需要から生まれたものです。私たちはいつの間にか自らの未来を想像せずに、既存の道の中から自分の要件を満たすものを探し選んでいます。
何年か前に「35億」でブレイクしたブルゾンちえみを覚えていますか?数年前に彼女は突然芸人を引退し、TVでは見れなくなりました。そんな彼女がいつだったか「行列のできる法律相談所」にゲストとして戻ってきたのをTVで見たのを覚えています。その時に現在の職業として「登場コーディネーター」をしていると語っていました。この時スタジオの芸人さんたちはぽかんとしていましたが、この登場コーディネーターは自分で作った職業らしく、イベントやライブなど様々な場面での登場をコーディネートするそうです。これこそ夢の創造なのだと思いました。既存の枠組みを無視し、自分がしたいこと得意なことから自分がするべき職業を見つけるのでなく、作っています。思えば、ブルゾンちえみは芸人時代からwithBのプロデュースのようなものをしており、キャラ設定や言葉、登場の仕方などはブレイクするために作り込まれたものでした。そんな彼女には登場コーディネーターはピッタリなのかもしれません。
人には人のやりたいことや得意なことがあります。そんな時に必ずしも既存の職業で自分に合っているものがあるとは限りません。夢を見つけるのではなく、夢を創造することは非常に難しいことであると同時に、その人にとって最良の選択になるのだと思います。