セイキン禁止

最近はもうすっかり飽きてしまったが2年ほど前子供がヒカキンにハマって最近YouTubeを見る時間が増えていたことがあった。古い人間なのでYouTuberというものに元々抵抗があったのは事実だが一応保護者としてそれが子供が見るのに適切かどうかを一緒に観て確認した結果、割と害のない内容だったので何でも禁じるのもよくないしYouTuberの中ではとりあえず一旦ヒカキンだけはOKということにしていた。
ならばヒカキンの兄セイキンもと言いたいところだが、セイキンは禁止とされた。うちの妻がセイキンの顔を長時間見続けることが出来ないためである。セイキンの顔をジッと見ているとバスタブやプールの栓を抜いたときに、その水が排水用の穴に吸い込まれてしまうの同じような感覚、何か自分がセイキンの顔の中に吸い込まれていくような妙な不安感を覚えるのだそうだ。セイキンさんには大変申し訳ないがそういう事なのだそうだ。俺も最近何となくその意味が分かるようにもなってきた。
俺も何度か見たので知っているがセイキンはとても良い人でYouTubeの内容も特にとりたてて面白くはないが極めて健全である。セイキンももはや一種の公人であるとはいえ他人の顔に関して苦手だとかそういうネガティブな話はあまりしたくないのだが、妻の気持ちを尊重する必要もあり安直な策だとは思いながらも子供たちに言って「すまんけど、セイキンは禁止」ということになってしまった。
当然子供たちには理由となったセイキンのルックスに関わる細かい背景は言わずとりあえず「面白すぎて観すぎると目が悪くなるから観て良いのは今はヒカキンだけにしよう、たとえ実兄のセイキンでもダメ」という大儀でもって伝えると理解してくれたらしく一応納得しそういうことになった。(その実、親のコントロール外でいろんなYoutubeチャンネルを際限なく見せたくない気持ちもあるので、半分は言葉通りである)
しかしながら先日フラッとリビングに行くと子供たちが俺が来たのをみるや何やら慌ただしくテレビに写っていたYoutubeの動画を止めようとしていた。
「おいおい、なんだなんだ」と隠れて何を見ていたのか確認していたらば案の定、禁止されているはずのあの”セイキン”であった!厳密にはサンタクロースの格好をした特殊なセイキンであった!!それはヒカキンが電気屋で視聴者プレゼントを買うという彼のYouTubeチャンネル、Hikakin TVの企画。セイキンはその回のゲストだったようだ。セイキンはサンタの格好こそしていたがやはり吸い込まれそうな顔をしていた。
「お前ら、これは禁止されているはずのあの”セイキン”じゃないか!?」
自分で言っておきながら極めておかしなセリフであった。相手はサンタの格好をしている色の異様に白いただのオッサンである。極めて無害なオッサンである。そんな事を子供に言ってプラスになる気がせず結局「ヒカキンがゲストで呼んだときに現れたセイキンのみ、見ていいよ」という複雑なルールで手を打つこととした。
もう子供も全くヒカキンを観なくなった今ふと思い出した話である。


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