小説後書き
こちらは『【小説】見知らぬ地』の後書きとなっています。先に本編を読むのがおすすめですが、ネタバレが気にならないようなら(いっそネタバレを見てから読みたいという方は)、こちらを先に読んでも良いのかもしれません。
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これはBLになりうる。そうなるように、書いた(気がついた方いるでしょうか)。読まない人に、読んだことのない人に、僕が勝手に思うBLの特徴を、その良さを、不思議を、仕組みを、知ってもらえたらと思って。僕にとっての理想的なBLの形はこういうもので、「恋愛に繋がるなんて(本人たちも読者も)これっぽっちも思っていないところから、信頼関係を由縁とする距離の近さが描かれる」というのが、僕の思うBL作品(あるいはNo.6という小説の)の魅力なのです。
冴島夏希は女の子でもよかった。百瀬蓮は女の子でもよかった。天才は少女でもよかった。Iターンで田舎に引っ越すのは女の子でもよかった。だけどそうはしなかった。
緑豊かなホテルのレストランで食事するシーン。そう思い浮かんだからそう書いたけれど、鋭い視線とふっと緩んだときのその柔らかさ、取り繕わない本心は、心が近く感じるから。だからあれは、蓮が夏希に惹かれるシーンでもあるわけです。そうならないように、(もっと中立的に)ただの"知り合い"になったのだというシーンに変えることだってできたけれど、なんだかもったいない気がしてそのままにした。あの夏希の可愛さを残しておきたかった。蓮の中で何故か消えなかった(忘れさせてくれなかった)あの瞳の記憶を、なかったことにはしたくなかった。
だから、これは「二次創作が捗る」ような(No.6みたいに、BLとしては描かれていないだけの)BL風の小説だと思ってもらってもいい。BLだなんて思いたくないというなら、この後書きのことは忘れてしまってくれていい。なんとなくそうも取れるように描いただけで、蓮も夏希もお互いに明確な、いわゆる恋愛感情を抱いているとは言い切れないように書いたつもりだから。
逆にこれが違和感だらけで意味不明だった、飲み込めなかったという人がいれば、BLに触れるのには抵抗がある人かもしれない。何も思わなかった人は、BLも読んでみたら案外面白いかもしれない。夏希や蓮に可愛さやなんかを見出してくれた人がいれば、すんなりBLが楽しめるかもしれない(それとももう"こちら側"ですか?)。
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そんな僕の「好み」のお話を除いて考えてみたとき、このお話は、"2つの正義"がテーマであるように思う。
社会を変え、大勢を巻き込み、変革を起こしていく世の中の正義(という世の流れ)に乗って自分の理想を実現させようとする天才少年と。
社会に取り残され、切り捨てられた個人の手を取るちっぽけな若者と(ちなみに僕は実際にほぼ限界集落出身だから世の中の年齢感覚に疎い、田舎では50過ぎてもまだ若者扱いなので、28なんてかなりのひよっこである、そういう前提で書いてしまったので、わかりづらかったなら単に僕の力量不足)。
ふたりは似たものを中心にもちながら、けれど全く別の道を歩んできたのだと思う、反対側から、同じところを目指しているのかもしれない(僕の見た夢もそんな感じだった、絶対に理解できないけど、何か信じるものがあってそこに身を置いたのだということを知っているみたいだった)。
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正義の裏はもうひとつの正義。
そんな風に僕は思っている。
それは、世の中が信じている間違った正しさと、(現在の学術分野で通説とされている程度に)科学的に証明された正しさ、なんていう二項対立でなくても起こり得る。
本当に、どちらも成り立ってしまう、どちらも同様に確からしい未来や理論、主張、理想というのはきっと存在する。自分の抱く理想や主張、守りたいものと相反する価値観の人に出会ってしまうこともあれば、実際に出会わなくても世の中の多くの人と意見が合わないこともあるだろうと思う。そういうとき、僕は「どうして誰もわかってくれないんだ」とはあまり思わなくて、「あなたの正義は僕とは異なるんだね」と(ちょっとした諦観が混じる感覚で)思うことが多い。でも本当は、このふたりのように、お互いの正義(理想)が違っていながらも、その根本は共通していると理解し合える相手がいるのなら、それはとても羨ましく、心強く、信頼できることだと思う。
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読んでくださった方の中には、もう少し描写を足して蓮と夏希の過去や、やりとりを見たかった、と感じた人もいるのでは、と思う(実際必要な描写が足りていないと思う)。ただ僕はこれほど長い小説を書いたことがなくて、ひとまずここで考えるのやめよう、一旦完結にしよう、と思ったのです。
そのうち、イメージが湧いたら「夏希が蓮を知っ(て興味をひかれ)た経緯」とか「蓮がIターンをするに至った経緯」とか「蓮が暮らしている山奥の限界集落での暮らし」「夏希の過去」「蓮と夏希のやりとり」とかちゃんと書きたい。何字くらいになるのかな、30,000字とかになればいいな、文庫本一冊分なんて夢があるから。
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これは僕の夢を元にした小説だから、影響を受けていそうな作品がいくつかある。それに文字にするにあたって、僕がとても疎いVR系の描写については、(夢が影響を受けていそうなその)2つの作品(の世界観)を参考にしているところがある。
・川原礫『ソードアートオンライン』(電撃文庫)
・(もうひとつはここで名を出すだけでネタバレになるのでやめておきます)
(あとあれですね、夢だけに限っていえば『マトリックス』感がかなりある気がします)
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最後に、僕の実際の夢日記を添付しておきます。近未来ホラーサスペンス(ほぼ悪夢)がこんな感じに優しい話になったよ、という余談です。
・茅場晶彦(かやばあきひこ)…SAOの登場人物。フルダイブ型ゲーム世界を開発した張本人。
・キリト…SAOの主人公。ゲーム世界を攻略していく。
・アスナ…SAOのヒロイン。キリトとともにゲーム世界を攻略していく。
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(僕の夢からアイデアを使用して何か作品を作る、創作をする場合は、先に僕にお声がけください。また、小説の二次創作をしてみたいという方がもしいたらとても嬉しいです、その場合コメントなどして僕に教えてください)
最後まで読んでくださりありがとうございます。
良い一日になりますように。
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昨日は『歌鳥風月』を聞きながら小説の手直しをしていました。聴いてくださった方、ありがとうございます(僕が4,5時間リピートしてたとして、今再生回数が4番目に多いから…うん、とても嬉しいです)。
(Aimerさんの声はとても素敵ですよね、並べたくないな…)。
↓久しぶりに思い出したので歌ってみました。