初めての煙草
我々若者は何かと初めてにこだわる。
初めてのキス、セックス。
初めてのバイトetc…
ぼくが初めて吸った煙草は15歳の冬。
桜木町の路地裏で吸ったラッキーストライク
である。
その日の二日ほど前に
悪友からメールがとどく。
「煙草吸いたくね?」
お互いロックやハリウッド映画に
魅了されていたので
煙草に憧れるのも無理はない。
実際にぼくはエリッククラプトンや
ジミヘンドリックスがうまそうに
煙草を咥える映像を見ては
煙草に果てしない憧れを抱いていたのである。
そして桜木町という大都会で落ち合ってコンビニで煙草を買おうという話になった。
ぼくは仏壇に置いてあった色褪せた緑のbicライターをもって家を出た。
悪友と落ちあうとお互いのライターを見せ合って
どきどきしながらコンビニに入った。
いつもホットスナックやジュースを買うコンビニが
麻薬カルテルの事務所のように感じた。
ここで取引が行われて
俺は生まれて初めての煙草を吸う。
今日俺は煙草を買って吸うんだ。。
吐息を飲んでいた。
じゃんけんをして負けたほうが買うこととなり
運よくぼくは勝った。
そして悪友がレジに向かう。
外で待っていると年確されたと
落ち込んだふりをしているが演技でバレバレの奴がポケットから煙草を取り出した。
ラッキーストライクだった。
走って路地まで行く。俺は生きてる!
なんて叫びながら笑いながら走った。
そして火を付けるも慣れてないもんで
なかなかつけられなかった。
そして二人で吸いながら、案外味も好きだなとぼくは思っていた。
肥満気味でダサかった当時のぼくと
変にファションにチャレンジしてこけている悪友。ガキ二人で煙草をふかす。
おそらく二人とも自分の方が煙草が似合っていると信じていた。
それから自分も同じコンビニでマルボロを買った。
痩せこけて疲弊していそうな店員から
赤い箱が渡されて興奮した。
そのあとは肺喫煙を覚えて
隠れて昼休みに煙草を吸ったりと
不良にも優等生にもなれず
世間やあらゆるものを憎んでいたぼくは
煙草が心に聳え立った煙突のように
ぼくの青春時代のモニュメントのような
存在だった。
だから今でも煙草を吸ったことがないけど
吸いたいと言っているやつを見かけると
ちゃんと初めての煙草はかっこいい銘柄を
吸ってほしいなと思う。
初めての煙草は人生で一度きりで
吸った後では
もう吸ったことのない人間には戻れないのだから。
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