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兆し

私の実家はほどよく田舎で両親は家庭菜園というには大きな畑で
野菜などを育てています。
老後だんだんと仕事から遠ざかっても、やることがあるのは大事です。

しかしその畑は無駄に広すぎやしませんか?
私としてはもっとこじんまりとした畑がいいのではと思いますが
(本当はプランターでいいじゃんと思っている)
うちの父はでかければでかいほどいいと思うタイプ。
お前も食べるだろう?って
いや食べるけど。

親のやる事に関しては何を言っても仕方なく、もう
親の亡き後どうにかするという覚悟しかできないワタクシです。

さて、そんな広い畑の一番の大仕事と言えば草むしりです。
畑は耕運機もありますしある程度機械に頼ることもできますが
木は植えてあるし、家の周りも本当にたくさん草が生える。草から木に育ちそうな勢いです。

そんなわけで時々草むしりに駆り出されるわけです。
祖父母としては、暇にしている孫を是非とも駆り出したい。

ある日また草むしりの約束をし、息子を誘ってみました。
すると、しばーーーーーらく考えた末に行くと言いました。

問題は暑いなかの草むしりは早朝だということです。息子は本当に朝起きられないのです。

案の定前日もよーく言い聞かせておいたにもかかわらず
起きない息子。
私はこの日気合を入れて息子を起こしにかかりました。

けっこうしっかり目に声をかけますが、グダグダしています。これは起きる気がないぞ。

たぶん息子は行くと言ってしまったけれど、本当は祖父母に顔を合わせるのが気まずいのです。

私が息子を起こす最終手段は介護作戦です。(実際に介護に役立つかは謎)
息子でかいんだもの。私が起こすのは本当に大変なんですよ。
頭の下に私の両足をつっこみ、少しずつ上体を体育座りした私の脚に乗せて起こしていきます。
上体が起きたところで息子の脚を引き寄せて、ふがっと立ち上がらせる…のは難しかった…

しかし上半身を起こしてしばらくするとさすがに目覚めたもよう。
でも私が手を離すとすぐに転がってしまう。

行くんでしょ。おじいちゃんとおばあちゃん待ってるよ!
しばらくするとやっと、「流されて行くと言ってしまったが行きたくない」とぬかしやがりました。

どうして行きたくないのか聞き取り調査です。
草むしりが面倒だから嫌なの?
顔を会わせるのが気まずいから?と聞くと、案の定後者だと言います。

どの顔で会うんだよ…って

その顔だよ!!!

お母さんだってお父さんだって立派な子供じゃなかったし、たくさん心配もかけたよ、どんな時でもどんな顔でもその顔で会いに行くしかないんだよ。

ジジババは、どんな顔しててもいいからとにかく孫に会いたいんだよ!
心配してるんだよ!
ここで一日行かなかった罪悪感を抱えて寝ているつもりか?
草むしりしろ!働け!


なんと私は息子を連れ出すことに成功。
草むしりは集中してやればいいので、黙々と作業する息子。
ほめられこそすれ特にジジババに学校のことなどもなにも言われず
息子は役に立った心地よい疲労と、誰にも責められたりしない安堵に
すごくいい顔をしています。
ついでに母はジジババと本人の前で学校に行っていないことに関するネタを
さらりと披露し、しっかり笑いを取ってやりました。

帰り道、「オレ、草むしりは嫌いじゃない。今日は来て良かった」
と言いました。


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