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生まれた場所が分からない【クリスマス祈祷会】
《はじめに》
華陽教会の聖書研究祈祷会のメッセージ部分のみをUPしています。購入しなくても全文読めます。
《聖 書》ルカによる福音書2:8〜20、マタイによる福音書2:1〜12
日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、聖書箇所のみ記載しています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。
《メッセージ》
メリー・クリスマス! 救い主イエス・キリストの誕生を記念する、クリスマス当日を迎えました。クリスマスと言えば、「イエス様の誕生日」……そのように聞いている人も、いるかもしれませんが、実際には、12月25日がイエス様の生まれた日というわけではありません。
もともと、12月25日は、ローマで信仰されていた太陽神ミトラの誕生祭であったと言われています。けれども、キリスト教が世界中に広まって、イエス様の誕生をいつお祝いするか、決めなければならなくなったとき、多くの地域で冬至の祭りが行われていた、ミトラ教の誕生祭に、救い主の誕生をお祝いしよう……ということになっていきました。
だから、クリスマスは、あくまでイエス様の誕生を記念する日で、誕生日そのものではありません。イエス様の生まれた日が、本当はいつか分からない……でも、年に一度、みんなで救い主がこの世に来られたことを思い出し、一緒にお祝いして、感謝と喜びを分かち合おう。そうやって、今もクリスマスを記念しています。
さて、現在の私たちは、イエス様が生まれた本当の日を知りませんが、イエス様が生まれた場所については、聖書にはっきり書かれています。マタイによる福音書では、救い主メシアは、ユダヤのベツレヘムという町で生まれることになっている、と言われていましたし、ルカによる福音書でも、ダビデ王が生まれたベツレヘムで、イエス様が誕生したと書かれていました。
生まれたばかりのイエス様を最初に礼拝した占星術の学者たちや、羊飼いたちも、ベツレヘムへ行って、その誕生をお祝いしました。けれども、よく見ると、彼らは特別な新しい王が、救い主が生まれることを知ったとき、その方がどこで生まれるのか、はっきり教えられたわけではありません。
羊飼いたちは、天使から「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである」と教えられますが、ダビデの町ベツレヘム、ということ以外は、何も聞いていませんでした。もし、皆さんが目的地について、町の名前だけしか知らされていなかったら、かなり途方に暮れますよね?
町についても、一軒、一軒、「ここに救い主の赤ちゃんはおられますか?」と尋ねていかなければなりません。羊飼いたちは、夜通し羊の群れの番をしていたときに、天使からお告げを受けたので、彼らがベツレヘムで赤ちゃんを探し回ったのは、深夜から朝方にかけてです。家を回って、玄関の戸を叩くのは、かなりハードルが高かったでしょう。
それでも、彼らは「主が知らせてくださった、その出来事を見ようではないか」と話し合って、みんなで聞いて回り、ついに、マリアとヨセフ、そして飼い葉桶に寝かせてある乳飲み子を探し当てます。最初から「ベツレヘムのこの場所へ行け」と天使に教えてもらったら、迷わずたどり着けたかもしれません。
でも、羊飼いがベツレヘムを探し回ったおかげで、救い主の赤ちゃんについて尋ねられた人たちも、この出来事を知ることになりました。彼らは、帰りがけに「天使が話してくれたとおりだった」という羊飼いの報告を聞くことになります。「そんな不思議なことが本当にあったのか」と、さらに赤ちゃんを見に行こうとする人が、続いていったでしょう。
一方、東の方からやってきた占星術の学者たちは、「ベツレヘムで生まれた」という情報さえ、最初は持っていませんでした。彼らは、星によって、特別な新しい王が生まれたことを知りましたが、「ユダヤ人の王として生まれた」ということ以外、詳しいことは何も分かりません。
どこへ行ったら会えるのか、何も知らない学者たちは、ユダヤ人の首都エルサレムへ向かいます。エルサレムに着くと、彼らは「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか?」「わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです」と尋ねて回ります。
そのうち、ヘロデ王のもとまで、外国から来た博士たちが、新しい王を探し回っているという噂が届くようになりました。自分以外の新しい王が生まれるという知らせを聞いて焦ったヘロデは、旧約聖書に記された預言に詳しい人たちへ、「メシアはどこに生まれることになっているのか」と問いただします。
祭司長や律法学者が「ユダヤのベツレヘムです」と答えると、ヘロデは自分に代わって王となる存在を殺すため、密かに学者たちを呼び寄せ、ベツレヘムへ行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら教えてくれ……と頼みます。そこで初めて、学者たちは、目的地がベツレヘムであることを知りました。
もちろん、ベツレヘムということ以外、どこの家へ行けばいいのか、詳しいことはまだ分かりません。町に着いたら、またみんなに聞いて回って、幼な子のいるところを探さなければなりませんでした。ところがその時、東方で見た星が先立って進み、どこへ行けばいいか、教えてくれるようになります。
だったら、エルサレムへ寄る前に、最初から目的地まで導いてくれたらよかったのに……と思いますよね。でも、学者たちが、新しい王の誕生を知らせたおかげで、エルサレムの住民も、神様が約束していた救い主が、ついに誕生したことを知ることになりました。外国から来た異邦人は、ユダヤ人にとって、良い知らせを告げる預言者となりました。
不思議ですよね? 救い主の生まれた場所が分からないのに、救い主の誕生を知らせる預言者として、羊飼いも、学者たちも用いられていきました。彼らはきっと、なぜ神様は赤ん坊がどこで生まれたか、はっきり教えてくれないんだろう? 早く辿り着かせてくれないんだろう? と道中で思ったんじゃないかと思います。
私たちも、どこに自分の救いがあるのか、解放される道があるのか、分からないまま進んでいます。どっちに行けばいいか、何を目指せばいいか、はっきりした答えを告げられないまま、歩んでいます。でもそれは、あなたが目的地へ着くことを妨げられているからではありません。
あなたが目指している場所を、一緒に目指す人が広がっていくように、あちこち尋ね回るあなたのことを、神様が用いているからです。クリスマスを迎え、一年の終わりに近づき、新たな年に向けて、私たちは出発しようとしています。おそらく、その道はこれまでのように、はっきりとゴールや目的地が見えるわけではありません。
でも、確かに、たどり着くことができるように、たどり着いたときの喜びを、分かち合う仲間が広がるように、星の光が、天使の言葉が、あなたを導いています。さあ、私たちも、主が知らせてくださった、その出来事を見に行きましょう。探し当てた喜びを、みんなで分かち合っていきましょう。
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柳本伸良@物書き牧師のアカウントです。聖書やキリスト教に興味のある人がサラッと読める記事を心掛けています。サポート以外にもフォローなどお気持ちのままによろしくお願いします。質問・お問い合わせはプロフィール記載のマシュマロ、質問箱、Twitter DM で受け付けています。