汚れた霊が戻ってくる【日曜礼拝】
《はじめに》
華陽教会の日曜礼拝のメッセージ部分のみをUPしています。購入しなくても全文読めます。
《聖 書》ルカによる福音書11:14〜26
日本聖書協会の「ホームページ等への聖書の引用について」に基づき、聖書の引用を適切な範囲内で行うため、聖書箇所のみ記載しています。該当する聖書箇所を「聖書本文検索」で「書名」と「章」まで入力し、「節」入力を省略すれば、章全体を参照できます。
《メッセージ》「汚れた霊が戻ってくる」
汚れた霊が戻ってくる……あまり聞きたくない話が、聖書の中に出てきました。神の子である救い主、イエス・キリストによって、多くの人が病を癒され、汚れた霊を追い出され、助けられた話がある一方、せっかく出て行った悪霊が、また戻ってくるかもよ……?と語られる。しかも、自分より悪い他の霊を引き連れて、前よりその人の状態を悪くする。
まあ、警告と言うか、忠告と言うか、はっきり言って、脅しに聞こえる言葉です。イエス様によって、悪霊を追い出してもらった人たちへの警告なのか、汚れた霊を追い出せたと喜んでいる祈祷師たちへの忠告なのか、それとも、悪霊を追い出してもなお、天からのしるしを求める群衆に対する皮肉なのか、いずれも、当てはまりそうなところです。
問題は、私たちの中に、こんな疑問が生まれることです。イエス様が悪霊を追い出す話はたくさんある。でも、追い出された悪霊が、また戻ってくるかもしれないよ……と語られるなら、イエス様は、それらの悪霊を完全に倒したわけじゃなくて、完全に消し去ったわけじゃなくて、一時的に、追い払ったにすぎないんだろうか?
完全に、勝利されたわけではないんだろうか? 「戻ってくる」と聞くと、何だかリベンジの可能性があるように聞こえます。イエス様に悪霊を追い出されても、安心することはできない、悪霊から逃げ回らないといけない、そういうふうにも聞こえてきます。実際、悪霊を追い出すイエス様を見て、安心できない人たちもいました。
「あの男は悪霊の頭ベルゼブルの力で悪霊を追い出している」言い換えれば、悪い者が悪い者を追い出しただけで、その人の脅威は消え去っていない、安心するな、という言葉です。他にも、イエス様を試そうとして、天からのしるしを求める人もいました。天からのしるしとは、神の国が到来し、新しい世界が完成するときに見られる、天変地異です。
それが起こされないなら、神の国はまだ来ていない、悪霊に対する勝利はもたらされていない、だから、安心するな、という態度です。どの人も共通しているのは、イエス様によって、悪霊が追い出されたところを見て、なお、安心できず、喜べず、恐れているということでした。
イエス様、あなたの追い出した悪霊は、再び帰ってこないでしょうか? もっと悪い霊を連れてきて、前よりも苦しめられたりしないでしょうか? あるいは、追い出した悪霊の代わりに、あなたが理不尽な支配を行い、苦しめてきたりしないでしょうか? 結局、私たちは苦しみ続けるんじゃないですか?
たぶん、こういう不安を持つのは自然な反応です。おそらく、彼らの間で、自分たちの仲間が、祈祷師や魔術師が、誰かの悪霊を追い出す出来事は、度々見られたんだと思います。けれども、一旦悪霊が追い出されたように見えても、再び苦しみ始める人や、前よりもっと悪くなる人たちがいて、安心できなかったんだと思います。
彼らはもう、変に喜びたくありません。下手に信じて、裏切られるのを恐れています。最初から、神の国なんて来ていない、神の子なんて来ていない、と思う方が、後から苦しまずに済むでしょう。イエス様についていって、余計に悪くなることを、恐れなくて済むでしょう。
ところが、ある女性が、イエス様の「汚れた霊が戻ってくる」話を聞いて、声高らかに賛美し始めます。今日読んだ聖書箇所の直後です。「なんと幸いなことでしょう。あなたを宿した胎、あなたが吸った乳房は」……そんな喜ぶシーンか? と疑問に思わないでしょうか? せっかく出て行った悪霊が、戻ってくる話をされて、嬉しくなることってあるんでしょうか?
このとき、イエス様の話を聞いて喜んだ、イエス様の存在を讃えた女性は、いったい誰だったんでしょう? 聖書には、名前も正体も書かれていないので分かりません。ただ、どうしてこのタイミングで、群衆の中から一人の女性が、イエス様を賛美し始めたのか、想像することはできるでしょう。
汚れた霊が戻ってくる話をされたイエス様は、一旦出て行った悪霊が、自分より悪い、他の七つの霊を連れて来て、再びその人へ入り込み、前よりも悪い状態にしたと話されました。普通、この話を聞くと、将来、自分たちもそのようにならないか不安を抱きます。しかし、ある人にとって、この話は将来のことではなく、過去のことでした。
同じ、ルカによる福音書8章2節には、イエス様から七つの悪霊を追い出してもらったマグダラのマリアと呼ばれる女性が出てきました。彼女は、他にも悪霊を追い出され、病気を癒してもらった女性たちと一緒に、持ち物を出し合って、町や村を巡るイエス様のそばに仕えていました。おそらく、この時も一緒についてきていただろうと思います。
彼女自身と、彼女を知っている女性たちにとって、イエス様の話は、将来起こるかもしれない恐ろしい話ではなく、既に、そこから助け出された人の過去の話でした。魔術師や祈祷師に悪霊を追い出された後も、七つの悪霊が入ってきて、苦しめられていた彼女は、神の国の到来を知らせるイエス様によって、完全に汚れた霊から解放されます。
悪霊を追い出されてなお、再び悪霊が戻ってくること、もっと悪い霊に苦しめられることを恐れている人たちに、イエス様は、既に自分が勝利した七つの霊の話をされました。彼らが恐れる、もっと悪い霊の話をされました。その霊から解放され、悪い状態から回復し、イエス様に仕えている人が見えるところで、この話をされました。
それは、将来への不安をもたらす話ではなく、既にもたらされた救いの話でした。あなたがたが恐れる、もっと悪い霊は、帰ってきて苦しめる霊は、もう追い出されたあとなんだ。頼みの武具をすべて奪い取られ、分捕り品を分配され、力を失ったあとなんだ。七つの霊を追い出され、神の言葉を聞いて、それを守る人になった、私と一緒に来るようになった、彼女たちがそのしるしである。
汚れた霊が戻ってくる……この話は、将来の話として、不安を覚えながら聞くものではなく、もう既に、神の指で追い出された、力を失った敵の話として、希望を持って聞くものです。イエス様は、恐れている人たちへ語ります。「わたしが神の指で悪霊を追い出しているのであれば、神の国はあなたたちのところに来ているのだ」
安心しなさい、私だ、恐れることはない……イエス様の復活を記念するイースターまであと5週間、私たちを苦しめる、全ての力に打ち勝った、私たちの救い主、神の独り子の言葉を味わい、信じる者、喜ぶ者、新しく生きる者となりましょう。あなたの手が、キリストの愛と平和で満たされますように。アーメン。
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