飛び跳ねる思考
一冊の本を手に取った。
表紙の言葉が気になったからだ。
『会話のできない自閉症の僕が考えていること/東田直樹(現25才)』
自閉症の人が会話ができないのは知っていたが
『考えていること』を本にしていることに驚いた。
偏見になるが、正直、本にできるほどまとめられる能力があると、その時点では思わなかった。
ページを開くとそれはさらに大きな驚きへと変わった。
しっかりとした文章の構成や豊富な語彙力
自分に対する冷静な分析。
1ページごとに『自閉症』のイメージが変わる。
彼は、会話ができないもどかしさ、意に沿わない行動をする身体を抱え生きているといい
「叫んでしまう」行動は「ひとりごと」だと書いている。
自己中心的に見える振る舞いは悲しみにあふれていて
一番悲しいのは通り過ぎる人の「尖った視線」と「心無い言葉」だという。
すべてが見えていて、すべてが聞こえているのだ。
もちろん、これらは著書ひとりの言葉にすぎない
「自閉症」とひとくくりにいっても症状には個人差があり
一概に『自閉症』の人がみんなそうとは言えない。
しかし一人の男性の言葉で僕が思っていた「自閉症」は一瞬にして変わった。
偏ってしまっていたものを変えてくれた。
松下電気(現パナソニック)を一代で築いた松下幸之助の言葉を思い出す。
「目の見えない人は、なかなかケガをしない。むしろ目の見える人のほうが、石につまずいたり、ものに突き当たったりしてよくケガをする。なまじっか目が見えるがために、油断をするのである。乱暴になるのである。
目の見えない人は手さぐりで歩む。一歩一歩が慎重である。謙虚である。そして一足歩むために全神経を集中する。これほど真剣な歩み方は、目の見える人にはちょっとあるまい。
人生で思わぬケガをしたくなければ、そして世の中でつまずきたくなければ、この歩み方を見習うがいい。「一寸先は闇の世の中」といいながら、おたがいにずいぶん乱暴な歩み方をしているのではなかろうか。
いくつになってもわからないのが人生というものである。世の中というものである。それなら手さぐりで歩むほか道はあるまい。わからない人生を、わかったようなつもりで歩むことほど危険なことはない。
わからない世の中を、みんなに教えられ、みんなに手を引かれつつ、一歩一歩踏みしめて行くことである。謙虚に、そして真剣に。おたがいに人生を手さぐりのつもりで歩んでゆきたいものである。」」
(著書「道を開く」より)
なにが真実かはわかりゃしないが
目で見えるものだけを信じてわかったふりをするのはやめたい。
固定概念をなくせ!
そして200円欲しがる私の心も見極めろ。