「イマーシブ・フォート東京」で世界の住人或いは観客になる
イマーシブ・フォート東京に行ってきました。
「私も行ったほうがいいかな」と聞かれたら、
・参加型イベント楽しいよ
・でも人を選ぶ空間だよ
・1度で全部見るのは諦めたほうがいいよ
あたりは添えながら答えるかなと思います。
そもそもイマーシブ・フォート東京とは。私にとってはかつてラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の聖地のひとつ、アニメ1期の近江彼方のライブステージのあるヴィーナスフォートだった場所です。ヴィーナスフォート閉鎖で私の中の物語は終わっていたので、こんな施設に生まれ変わっていたなんて全然知りませんでした。世間知らず私。
装飾こそ手直しされていますが、まるっと居抜きで再利用されているといっても差し支えないでしょう。「ザ・シャーロック」(別料金)に足を運べば近江彼方のステージも健在です。
「イマーシブ」とは「没入感のある」という意味で数々の体験型アトラクションを楽しむことができます。再びラブライブ!で恐縮ですが以前、SCRAPとのコラボで開催された「輝け!Aqoursぬまづフェスティバル in よみうりランド」に近しいです。モノに溢れたこの時代、体験を売るのはちょっとした流行りですよね。アトラクションは大きく1日を通して街中(という設定の施設全体)で起こるイベントと、街中から切り離された区画で楽しむイベントに分かれています。
このあたりはタイムテーブルを見てよく計画を立てないと、うまく立ち回ることが難しいです。そしてネタバレ配慮で、この計画を立てるための情報が不足しているのが実際で、私もこの身で体験するまでは公式ページを見てもよくわかりませんでしたし、体験したうえで「もっとこう動けばよかった」みたいな反省点が多々あります。それでもこの施設に向いている人はまだ「次に来たときはこう立ち回ろう!」とポジティブになれます。反面、向いていない人に次はないでしょうね。
どのような人に向いているかと言えば、観劇が好きな人や観るだけに留まらずキャストと共に役者としてロールすることに抵抗がない人で、特に後者は適性抜群です。逆にキャストが何かしている様を見ても「何かやってんなぁ」と冷めた目で静観してしまう人はチケ代の元が取れません。この空間では「同じアホなら踊らにゃ損々」の精神が求められます。チケ代そこそこするのでこのあたりの価値観の擦り合わせがないままデートに使うとよくないことが起こります、たぶん。
今回私が参加した「ザ・シャーロック」というシャーロックホームズをベースとしたアトラクションと街中で起こるイベントはどちらも「群像劇追体験型アトラクション」と言えそうです。ザ・シャーロックは90分くらい、街中イベントは開園から閉園間近の7時間くらいに及ぶキャストによる演劇。通常の演劇とは異なりひとつのステージで行われるのではなく、広い空間で行われており、あちこちで同時多発的にイベントが発生するので、どのイベントに立ち会うかはその場の判断で選択しなければなりません。
特に「ザ・シャーロック」はその点を大きなウリのひとつにしていて、今回は4人で遊びに行って4人がそれぞれ別行動して様々な視点で同じ物語を追いました。あとで「あのときあそこであの人とこの人がこんなことしてたよ」とそれぞれの情報を持ち寄ってみたところ、みんな目撃した場面が全然違う! みんなの情報を集約することで、事件の真相に近づけた気がします、が4人の初心者ムーブでは全然ピースが足りません。このあたりはリピートしてもらうための工夫でもあるのでしょう。
街中で巻き込まれるイベントでは、キャストに選ばれて観客が舞台に立つこともあります。マフィアに襲われて捕まってズタ袋を被せられたり、マフィア側に回ってレストランを襲撃したり。私もいろいろあって、とある男の頭にバケツで水を掛けるという大役を担いました。そんなの人生で初めての体験だよ。水を掛ける役は1日2人と激レアっぽいので光栄です。キャストも無理やり舞台に引っ張り上げることはないでしょうから(誰も幸せにならないからね……)そこは心配はしなくて大丈夫です。
役を担うと観客のシャッターの的になってしまうので、私もフリー素材としてどこかの誰かの写真や動画に写り込んでいるかもしれません。そうなることを考えると中途半端なロールをすると逆に恥ずかしいので、堂々と全力でロールしました。役を担わなくても誰かの媒体に映り込むことを回避するのは難しい空間なので、フリ素になることに抵抗がある人も向いていないです。お忍びデートには使わない方がいいでしょう。
お食事処はキャバレーがオススメ。街中イベントで使われることもありますし、定期的にショーが行われています。
このショーがなかなかご機嫌なので、「イマーシブ・フォート東京よくわからん!」という人でもショーの時間に合わせてランチなりおやつをここで食べることにしておけばとりあえずの面白い体験ができます。開演20分前あたりに並ぶのがよさそうです。人生で初めてシャンパンタワー見たよ……! 赤毛ボブ2人の艶やかで華やかなダンスがめちゃくちゃよかった。施設内での食事なので簡単に済ませようと思っても「これで2000円弱か……」と少々お高いのですが、ショーとセットと考えれば実質飲食タダなのでは?? と思えるくらいの素晴らしい内容でした。別料金でVIP席を予約すると最前かつファンサービス盛り盛りで楽しむことができます。
私は向いている側の人間だったのでもう一度来てみたいです。「ザ・シャーロック」で違う場面を見てみたいし、別のアトラクションも覗いてみたいし、見られなかった街中イベントも見てみたい。リピーターだろうなという人もかなり多く見受けられました。
行けば行くほど勝手がわかって細かいところまで見られて楽しみが倍増する空間です。このあたりはディズニーなどに通ずるところもありますが、ファンタジーな夢の国とは程遠い世界観なので、雑にディズニーランドやサンリオピューロランドが好きな人に是非! と勧めるのはちょっと違う気がします。年齢層も高めで子供向けではありません。
チケットは今のところ土日でも超絶争奪戦というわけでなく、遊ぶ側としては快適です。運営的にはどうなんでしょうね。私のように存在を知らない人や興味はあるけどよくわからんという人など、潜在的な未来の顧客はまだまだいる気がします。宣伝広告をうまくやればもう少し人を呼び込めるんじゃないかしら。〇〇したい人向けのモデルルートをいくつか公式に載せるだけでもだいぶ来場ハードルは下がると思うんだけどなぁ。
あ、初めていく人は動きやすい服と靴でカバンも小さめが良いです。選択ルートによっては翌日の筋肉痛を覚悟するくらい動くことになります。
余談
銃撃戦とかわりと物騒なことが起きているのに、みんなスマホでパシャパシャ写真や動画を撮りまくっていて、そこだけ没入感が損なわれました。事件現場で助けを呼ばずにスマホを向ける現代人のムーブだよ! ザ・シャーロックは撮影禁止なのでしっかり世界に入り込めます。