野中ここなさんの「わがまま on the センターステージ!!」
以下、2024年4月21日に開催された「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜」の千葉公演Day2の内容を含みますので、円盤発売まで楽しみにとっておきたい方は回れ右をしていただければと思います。
「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜」の千葉公演Day2を語るにあたり、どうしても避けて通れない話題のひとつは何といっても村野さやか役の野中ここなさんによる「Runway」でしょう。
生徒会長からの「なぜラブライブの大会に出たいのか」という問いに対して「誰かのため」と他人を介した答えしか出せなかった村野さやか。
誰かのためじゃなく、自分がやりたいこと。「みんなの期待」が誰かへの押し付けではないことを証明するために、自分のラブライブ出場に対する想いの重さを感じるために、ひとりステージへと向かっていく。「Runway」はそんな経緯で歌われた蓮ノ空で今のところ唯一のソロ曲です。
「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜」は基本的にストーリー展開を順になぞって進行するライブですが、ストーリー通りなら披露されるべき場所での「Runway」はありませんでした。ライブが楽しすぎて途中「Runway」の存在をすっかり忘れた頃合いのこと。彼女が所属するDOLLCHESTRAのパートが終わり、次のユニットに切り替わるかと思いきや、ざわめきと共に広がる氷上色のペンライトに包まれて、センターステージ傍にひとり立つ野中ここなさん。
これから何が起こるのかはあまりにも明白でした。「Runway」だ。膨らむみんなの期待を一身に背負った彼女は、その期待に堂々と応えてくれました。ところが一転、2日目はそうはいかなかったのです。1日目と同様にセンターステージ中央に向かって歩き出し、歌い出してはみるものの、すぐに手を挙げて「もう1回やらせてください」と言ってリテイク。2回目も思うようにいかずにストップ。一旦ステージから履けることになりました。
ライブ中断中の観客の反応は、キャストの名前を呼ぶ人、キャラクターの名前を呼ぶ人、頑張れと声を掛ける人、ただ見守る人など様々でしたが、「何とかこの局面を乗り切ってくれ」という想いはだいたい同じだったのではないでしょうか。
私は過去にもこの手のライブ中断を経験したことがあったので、1回目の中断は「お、なんかトラブルか? まぁ、滅多にないけどそういうこともあるだろう」くらいの気持ちで余裕を持って見ていられたのですが、2回目の中断は流石に「おいおい大丈夫か」と心がざわざわしました。
しばらくしてセンターステージに戻ってきた彼女。3回目の曲中、私はもうペンライトを振ることができず、胸の前で握りしめてひたすら祈っていました。今振り返っても、よくこの状況から持ち直してくれたなと思います。
過去に経験した中断は、Aqpusの1stライブの2日目に起こった逢田梨香子さんのピアノの失敗によるものです。詳細は以前書いたことがあります。このときと大きく異なる点は、大人が判断して進行を止めたのではなく、彼女自身が判断して止めていることです。1度ならず2度までも。
すごいなと思いました。止めたのは野中ここなさんの個人イベントではありません。他のキャストやそれぞれが背負うキャラクターと共に創る大きなステージです。失敗した場合の打ち合わせがバッチリできていたとかでなければ、あとでそれなりに怒られていてもおかしくない案件だと思われます。なんなら2回目の失敗のあとに既に裏で怒られていたかもしれません。流石にエンドレスリテイクさせるわけにはいかないですからね。
それでも彼女は、たとえ怒られることになったとしても、ここでやり直さなければ後悔すると思ったのでしょう。彼女の中で具体的に何がダメだったのかはよくわからないので、以下は完全なる妄想になります。
そもそもですが、野中ここなさんは蓮ノ空キャストの中でもバチバチに歌って踊れる側です。異次元フェスでは蓮ノ空の歌代表としても踊り代表としても(イメージカラーの都合もあったけど)混成ユニットに抜擢され、その力を見せつけてくれました。「いつでも1曲目の顔で歌う」とも言われており、その若くも力強いパフォーマンスにはいつも圧倒されています。私が彼女のパフォーマンスを見て気になっていたことを強いてあげるとすればそれは「アイススケートをやっていたにしたってスクールアイドルに初めて触れた新入生の村野さやかにしてはバチバチに歌って踊れすぎている」でした。DOLLCHESTRAのときはそれでよいのです。パフォーマンス面で若干の不安を抱える夕霧綴理役の佐々木琴子さんを支えて引っ張りあげるためにもそれくらいが丁度いいとさえ思っています。しかし「Runway」は違います。どの楽曲よりも村野さやかをその身に降さなければなりません。どの楽曲よりも解像度高く村野さやかの心情を表現しなければなりません。バラードで。ひとりで。そういった「Runway」ならではの部分がこの日はどうにもうまく噛み合わなかったんじゃないか。私はそう思っています。繰り返しになりますが、ただの私の妄想なので実際のところはわかりません。
この顛末に対する野中ここなさんのコメントは以下の通りです。本人がいちばん悔しかったことでしょう。
期待。村野さやかが感じたかった重さ。背負いきれなかったその重さを再び与えてしまってよいものかとも思いますが、野中ここなさん本人が「期待してください!」と望むのであれば、期待します。声をあげます。次の機会の、最高の「Runway」のために。
ところで次の機会の「Runway」はいつになるのか。順当に考えれば「ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 2nd Live Tour 〜Blooming with ○○○〜」の兵庫公演です。しかし、やらない可能性もあるなと思っています。根拠はふたつ。ひとつはライブ中のMCで「次の機会があれば」と濁されたこと。まぁこれは兵庫でやることの明示を避けただけかもしれません。もうひとつは兵庫では2024年4月のFes×LIVEで披露された3曲が追加されるだろうことからセトリ変更が行われるかもしれず、ストーリーの流れに沿って披露されたわけではない「Runway」は削られる対象になり得ること。
ただこの千葉公演2日目の一部始終を見てしまうと兵庫公演でも「Runway」見たいよねというのが人の性。「もう1回やらせてください」で始まってしまった野中ここなさんの「わがまま on the センターステージ!!」。このままわがままを貫き通して、期待に応える喜びに溢れる村野さやかを見せてくれることを楽しみにしています。期待しています。
余談
この件について「とことん拘るところにプロ意識を感じた」という旨のコメントを観測しましたが、プロならば一発で決めてほしいのでそこはちょっと違うかなと私は思っています。立て直してやりきったのはすごいけど。それよりもMCなどで安易に「なっすん頑張った、そういうこともあるよね」と労わなかったメンバーのほうにプロ意識を感じました。とはいえ、それはあくまで表舞台の話で、舞台裏ではいっぱい優しくされていてほしい。
頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。