06村娘に情報収集する冒険者さん
オレンジの髪のレッタさん、紫ぱっつんのルローンさん、緑髪のイファナさん、青髪のテテリアさん、青緑髪のステイナさん、黄色いほっかむりにブラウンヘアのナーサさん、さて準備はいい!?
「はーい!」
ここはローレンドックの町、あらゆる人が行き交い、
村娘達溢れる花の町、都じゃないけど、よいまちさ!
さて、不審者じゃないぞ、村娘に話を訊くという、
RPG、ロールプレイングゲームの基本をやるだけだ!
そうれ! レッツロールプレイ!
村娘に話しかけまくりんぐ!
さてオレンジの髪のレッタさんお元気? 僕は冒険者でこれから、
遠くの町まで冒険するところさ、君も冒険したいかい?
「いえ、遠慮しておくわ、というより、あなた本当に冒険者?
どうにも都会っ子って感じで、軟弱そうだわ、そんなので、
本当に色んな所を旅できるのかしら?
あなたが無事旅が出来たら、その時初めて冒険者って呼んであげる」
レッタはいい終ると足はやく去っていった。
たはは、そいつはどうも! ありがとう!
今に見てろよ!この町から大きくジャンプだ!さて、
紫ぱっつんのルローンさん、こんにちは! こんにちわ! こんにちわ!
冒険者としての心得をしってるかい? どんな人にも話しかける! さ!
「それはわかったけどあなた、レッタちゃんにも話しかけて、その次に、
私って、本当に中身ある話を訊けてるの? というかナンパじゃない、
でしょうね? あやしいわ、あなが冒険者である証拠を、
持ってきてから話しかけてね」
ルローンはこちらにちょっと一礼すると、
さっさと去っていってしまった。
あややー、駆け出し冒険者は辛いね、
なんて立って、人脈が無いから、人と話してても先が続かない、
まあいいさ、人脈は冒険でつけていくものだもんね!
僕の冒険は始まったばかり! さて!
緑髪のイファナさんこいつはどうも! この町の近くにモンスターの気配が無いかい? 冒険者である僕が倒して、君とお近づきになりたいななんて。
「あら、私イファナの名前を知っているってことは、
貴方は私の遠い親戚か誰かかしら? でもそれにしては、
なれなれしい、明らかに知らない顏ですわ、
そう考えたらあなたとあまり話したくはないわね、さようなら」
さんざんな言い分で通り過ぎて行ってしまった、なんたることか!
ま、まあ、僕が人の名前を先に覚えてしまうのはシステム的に、
仕方が無かったことなんだ! そういう設定なの! 僕、超能力者?
でもまあいい、気を取り直してさらに挑戦だ! 冒険だ!
青髪のテテリアさん、僕は貴方の名前を知っているけど、怪しいものではありませんよ、なんてたって、私は町の護り手、冒険者なんだから!
「あら、自信たっぷりに、じゃああの魔王軍を倒してきてよ、大魔王サタニズマグッジョブの下部組織の魔王軍をやっつけてきたなら、あなたが、
冒険者だって認めてあげるわ、でも無理そうね、だから貴方とは話さない」
だんまり決めこまれたら、もうだめだ、この冒険はお終いなのでは!?
これは手厳しい! さすがの冒険者も堪えるか?!
ま、まあ、こんなこともあるさ、だって僕は冒険者、
町の護り手だから、皆から頼られて困っちゃうなもう、
無理な事も可能にするのが冒険者の凄いところさ、だから頑張っていくぞ!
青緑髪のステイナさん! あなたの名前を知っているけど、怪しいものではありません! 魔王軍は倒せませんが、是非、僕の冒険に必要な情報を与えてくれませんか? 情報収集です!
「あらま? あなた頭は大丈夫? 冒険者だなんて、職業なくってよ、
みんな普通に官職について働いているものじゃなくて?
それなのにあなたと来たら、サボってるのも同然で全然頼りにならない、
情報収集? 誰が貴方に必要な情報を与えるものかしら?」
つーんとして! つーんとしてさようならですわよ! みんなつれない!
これは厳しい! せっかく冒険しようと思ったのに!
出だしからすっころんでるぞ冒険者!
いいですよ!いいですよ! 僕には、冒険が待ってるんだ、
そうあなたとの冒険が、僕の道先に光を照らしてくれるあなたとの、
冒険がまってるんだ!
黄色いほっかむりにブラウンヘアのナーサさん! あなたが運命の人です!
「なにが運命の人よ! 私ちゃんと見てたんだからね!
色んな女の子に話しかけてナンパのつもりかしら?
冒険者なんて不審人物に用がある人間は誰も居ないわ!
この町から出て行きなさい!」
憲兵を呼ばれて、街から追い出された冒険者さん、これは酷い出だし!
い、いいもんね! 色んな所を旅して、その先、
冒険しまくって知名度を上げて、また同じ冒険に挑戦だ!
村娘に話しかけるというイベント! 冒険は始まったばかりなのだから!
※町に住んでても村娘かよ!
1、リーガット村の村娘赤い髪のレンタリア
さーて気持ちを切り替えて! やってきましたリーガット村!
町並みは色とりどりの家があって、本当に素敵、近くに森があるのか!
って普通の村じゃないか! 町並みじゃねーよ! 村並みだよ!
「あら、なに一人で騒いでいるの?」
「あたし、レンタリア、あなた見たことない人ね?
おそらく、冒険者さんだと思うけど、こんな村に何の用?」
わお! さっそく冒険のチャンス来た! いくぞ! 冒険者!
「僕、冒険者! この村に冒険しに来たんだ!
君! 重大なことを知ってそうなキャラクターだね!
ぜひ、この村の秘密を教えてくれないかい!」
それでいいのか冒険者よ!?
「あなた? ちょっといきなり村の秘密なんか教えると思って?
というより、冒険しに来たって何? この村が離れた所にあるからって、
勝手な妄想をして未開地に来た開拓者気分ってわけ?
冗談じゃないわ! この村にも歴史があるの!
あなたみたいなのはビンパラス村にでも行ってしまえばいいわ!」
ひどい怒られようでレンタリアさんが烈火のごとく怒って、
去っていくのを見て、冒険者唖然、でもそこは冒険者、転んでも、
ただでは起きないメンタリティ! 精神面って意味だよ!精神性ってこと!
「わお! さっそくビンパラス村の情報を得てしまった!
これは行かなければなるまい! いっちゃえ! いっちゃおう!
俺! 冒険者だもんな!」
前向きに行きますかな? 果たして?
2、ビンパラス村の緑髪の村娘ソナエリ
ここは、ビンパラス村、舗装された道路が繋がっていて、
先ほどの村よりより開拓されていてちょっと木も並木道だから、
正直な所、ここを村と呼んでいいものか悩むくらいです、
と、第一村娘発見!
「こんにちは! 村娘さん! お名前教えてほしいな!」
「わたしソナエリ、冒険者さん、
先にそちらが名乗るのが、普通ではなくて?」
緑髪の村娘は、スカートをちょこんとつまんで一例すると、
とりあえず、こちらと話してくれるみたいだ、これは嬉しい!
「僕は冒険者さ! 実はリーガット村のレンタリアさんに、
紹介されてこの村のことを知ったのさ、そして、
この村に冒険が待っているって思ってね!」
ソナエリは若干、険悪な顔をしてでも笑顔で答えた。
「それはそれは、リーガット村だなんてところからやってきたって、
ことは、あなた相当冒険してここまで来たってことだけど、
まだ冒険する気なの? 一晩くらいここビンパラスで、
休んでいけば?」
おお! 宿を貸してくれるかもしれないぞ! これは嬉しいぞ!
「冒険者は冒険をするものだよ?
ビンパラス村の冒険教えてよ、ねえねえ、
意地悪しないで、教えてくださいな!」
村娘ソナエリはさすがに、引いた。
「悪いけどあなたに話すことは何もないわ、
ソンデイア村にでも行ってとっととお陀仏してちょうだい」
あーあ、言わんこっちゃない。
「やったね! ソンデイア村の情報をゲットだ!
あとはひたすら冒険するだけでソンデイア村での、
冒険が手に入るぞ!」
こいつ、もうだめかも分からんね。
3、ソンデイア村の青髪の村娘ベンチェタ
「わーい! ソンデイア村についたぞ!」
とかなんだかんだ言いながら、目的地についてしまうところ、
正直、冒険者としてはかなりの嗅覚と行動力があると思うよ、
ここはソンデイア村、山並みが見える一家に一本木を植える風習のある。
どこかのどかな村。
「さて第一村娘発見!」
お前が言うんかい!
「あら、あなた? 冒険者?
ここまでどうやってきたわけよ?」
「ええ、それは実を言えばビンパラス村からでして、
その前の村もあったりしたもんですから、
なかなか冒険とは遠い所にあったものですね」
「えっビンパラス村から?」
「私の名前はベンチェタ、よろしかったら、詳しくお話を聞かせてほしい、
のだけど良いかしら?」
お、願っても無いチャンスだ! 話しちゃえ! 話しちゃえよ!
「ええ、それはそれはそれぞれの村々で、色々と冒険したかったけれど、
その村で冒険を探そうにもなかなか良い情報が得られなくって、
結局、村から村へ転々としている始末でございます」
「いえ、そうでなくって、あなた村から村へ来る途中、
どうやって冒険してたのかしら?
そもそも村から村までかなりの距離があるけど、
全部歩いてきたっていうの? 信じられないわ」
おっと、冒険者がいかに凄いか教えてやれ!
そうさ、僕らの冒険者は大層な冒険をしてこのソンデイア村まで来たんだ!
「はあ?! 冒険とは村に入って村人から話を聞いて、
するものでしょう?! 私は道中の話なんかどうでもいいんだ!
冒険がしたいんだ! 冒険について教えて教えて!」
おいっ!
「あなた、頭は大丈夫? 自分を冒険者だと思い込む病気にでも、
かかってしまったんではなくって?
お医者さんならこの村にもいるから、紹介しますけど」
どんびきだよ! 村娘ベンチェタ! どんびきしてるよ!
「お医者なんて必要ないさ! 今ここから冒険が始まるんだ!
さあ、冒険について教えてください! 村娘ベンチェタ!
ここから僕の冒険が始まるんだ!」
「もう知らないわよ! 海をのぞむサタレイ村にいきなさいな!
そうすれば、遠くに行けるでしょうね、あなたなら、
世界の果てまで行くのか知らないけどね!」
ああ、村娘ベンチェタ、割とよく話して気を使ってくれたのに、
とうとう、こいつに別の村の情報を話してしまったね!
「サタレイ村! 頂きました! そこに冒険が待っているんだな!」
こいつの冒険というものの認識とは一体?
4、海をのぞむサタレイ村の金髪の村娘サーチエタ
わーい! 夏だ! 海だ! カモメだ!
サタレイ村を一望できる良いスポットから、
階段が居並ぶ山を背にして僕らの冒険者は歩いてきたんだ!
ここではどんな冒険が待っているの?
と?
「ああ、あなた! あなたは、一体?! あなた村娘じゃないかい?!」
「あなた! お名前は?!」
「サーチエタ」
おっと会話が成立した、のかな? 横顔が印象的だけど、
こっちに向かって話したりはしない感じ、不思議な村娘サーチエタ!
「あの、冒険!」
おっと! 会話になってない! 当然通じない!
サーチエタも応えない! これどんづまりだよ!
「冒険したいな冒険! 冒険冒険冒険! いっぱいぱいぱいぱい!」
ついに壊れた我らが冒険者、冒険道中で相当なことや、
目に合ってるが、カメラの焦点を合わされていないから、僕らは、
全くうかがい知らないし、彼の冒険者の心配など知ったことかー!
「なんだって?! 山城をのぞむアバ村に行けばいいって!?
すごいぞ! 君! 冒険を知ってるんだね! ありがとう!」
「……」
ついに、だまったまま、下唇むっとさせてる彼女のこと、
ちょっとは考えたことあるかな? 無いだろうな!
お前、勝手に感じ取って、勝手に冒険を探し始めるからな!
というか冒険ってなんだよ! お前の求める冒険って何だよ!
「いやあ、サーチエタからもらった情報を頼りに進むオレカッコいい!」
前向き! 後ろ向きには歩けないけど、前向き!
5、山城をのぞむアバ村のピンク髪の村娘リカスム
「あら? まさか冒険者がこんな辺鄙な山城の補給経路である、
アバ村にくるだなんて? 当然密書か何かを届けに来たのよね?
私はこの村の村娘、兼、見張りをしてるリカスムというものよ」
わお! さっそく名乗ってもらったけど、
今回村の中に入れてないじゃないか! 入れてないじゃないか!
ということは、かなりの確率で、お前部外者で怪しい人物と、
みなされてるからな! 冒険者!
「あはははは! 冒険を教えてもらいに来たのさ! リカスム!
では! 冒険を教えてもらいにいざアバ村に!」
「待ちなさい、通すわけにはいかないわ、
このアバ村のことを知っているという事は、
すなわちどこぞの軍に所属しているものということ、
すなわち死ぬ覚悟をもってここに来たということ、
にも関わらず、殺気を感じさせないのは何故?
あなた死にたいのかしら?」
わーい! 村娘リカスムが物騒だ! とっとと死んじまえ!
冒険者野郎!
「冒険には死はつきものさ、何があっても冒険すると、
決めている僕に最初の冒険を与えてくれるのは君かな?」
ちょっと何言ってんのか分かんないですね、
これは死んだな。
「なるほど、どうやら死ぬ気はあるらしいわね、
気に入ったわ、とりあえずヨーサイド村に行きなさい、
そしてこのアバ村のことは忘れるのよ、
と、いってもわたし達の仲間が、
生かして貴方を行かすとは思わないけど」
辺りを見回すと、茂みの影から、
数多くの敵の気配とか、感じれてる? 冒険者さん?
そういうところで生きるか死ぬかが分かれるんだからな!
「わかった! ヨーサイド村だね! レッツゴー!」
アバ村には寄らないんか! よかった!
というか、お前、村の名前聞いた瞬間、
違う村に行く奴だな! ほんと大丈夫!?
というか、なんか怖い影が後から駆け寄ってきた!
うわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!
6、ヨーサイド村の金髪短髪村娘ハゼッタ
ふと気づくとそこはヨーサイド村、
「あら? あなた、この上下水完備の発展しきった村、
ヨーサイドに来るなんて、なかなか見どころあるじゃない?
冒険者さんかしら? どこから来たの?」
「アバ村だよ! 君は、お名前なんてーの?」
「アバ村? そんな村あったかしら? 私の名前はハゼッタよ!」
おっと、なかなか、良い村じゃないか、
上下水道完備で風呂に入れるし、トイレも水洗式なら、
もう、困ることないじゃないか、この上ないじゃないか!
「僕は冒険者! 冒険が得意さ!」
「うふふ、元気な冒険者さんね」
自己紹介になってない自己紹介を繰り返すところ、
こいつ話のバリエーション、ほんとない奴だな?
よく生きてここまでこれたな!
というかアバ村大丈夫だったの!? 一体どうやったの!?
「冒険者さん、ここヨーサイドではゆっくりしていけるの?
うふふ」
「冒険! 冒険がしたいな! 冒険! 冒険教えて!」
冒険者君、条件反射で言ってないか?
「あら、冒険だなんて、私、困っちゃうわ、
そんなに冒険してきたこともないし、
ひょっとしたら初体験かも?」
これは? 冒険してくれるのかな?
「君の体験談や経験はどうでもいいんだ!
冒険が大事なんだ! 冒険したかどうかが、
冒険者の全てなんだ! 自慢できないんだ!
だから冒険を教えろよぉ!!!!!!!!!!」
こら! 狂犬か貴様は!
「わお! 冒険者さん意気込みたっぷりなんだから!
私のカラダじゃとても持ちそうにもないわ!
行くならホンデア村がおすすめよ、
あなたの冒険がとっても盛り上がっちゃうことを期待してるわ!」
なんだかんだやさしい村娘ハゼッタちゃんだったな、
普通だったら殺されてるからな! 冒険者よお!
「ホンデア村! ホンデア村! 冒険!」
もうだめかもしれんね、これは。
7、ホンデア村の水色髪村娘シャパリラ
相変わらず冒険者の嗅覚はタダものじゃない、
ホンデア村は平地にある村だから、見晴しがいいのは確かだね、
そんなのどかな村で、お前、冒険者がやることといったら、もう!
「冒険! 冒険! 冒険したいな! ねえ! 冒険ってばあ!」
「なるほどなるほど、おぬし、冒険がしたいのじゃな? あいわかった!」
「この村娘シャパリラが冒険とやらをしかと教えてしんぜよう!」
良かったな! この村娘とは気が合いそうだな! お前、ゴールだよ!
「村娘に冒険の何が分かる! 分かるというんだ!」
!?
「!?」
「冒険とは、厳しいことだ、辛いことだ!
村でぬくぬく村娘やってる貴様ら下賤の民に、
冒険者の心が分かるというのか!? 分からんだろうが!
分かってみせるというのか!? 分かれよー!!!!!!」
こいつはやく死なないかな? 馬鹿とかじゃなくて、
もう自分を見失って久しい感じになって来てるよ。
「なるほど! だがこのシャパリラ! ヘビット村のことは、
決して口外しない堅い堅い口を持つのじゃ!
そう! おぬしがいかな冒険者であろうとも!
決して、冒険などさせぬ! この私をつれていけ!!!!!」
わーい、話が通じないなりに告白されてやんの!
とっととお受けしろ! って、
「ヘビット村! ヘビット村! ヘビット村!」
冒険者は去っていった、一体お前のその、
村を村の名前聞いただけで探知する機能どうなってるんだ?
GPSとかグーグルマップとかになってるのか? 頭ん中?
「一体、なんじゃったんだろうな?
あの冒険者?」
ほんとに、なんなんでしょうね?
8、ベビット村の紫髪村娘イーライール
さて、ここは、ヘビットむら、特徴的なものは特にないですが、
しいていうなら、遠かった、ここまでの道のりは語って聞かせるには、
普通なら冒険したって誇れることなのだけど、それをしない、
それをする気のない冒険者がここにおりまして、はい。
「ヘビット村! 村娘! 冒険!」
それしかいう事が無いのかお前は? 頭は大丈夫か?
正気を失ってはいないか? 人間として大事なものを見失ってないか?
生きていて、思う所は無いのか? 思い当るところは無いのか?
「冒険者ね、ヘビット村の村娘イーライールに何か御用?」
あら、イーライールさんだよ!
あらっておれも詳しくは知らないんだい!
「冒険、冒険したいな! 冒険!」
「ちょっと待って? この村まで来れたってことは、
それだけでかなりの冒険者だと思うけど、
冒険したいなって何?
あなた、冒険してこなかったとでも言うの?」
イーライールは若干怯えているようだ。
それはそうである、大の大人が冒険、冒険したいな! 冒険!
とか、言っているのである、そんなの目撃したら、
誰でも怖いのである、正常な反応有難うございました!
「きみぃ! 冒険をぉ! 知っているかいぃぃぃ!!!???」
「ひっ!」
イーライールは冒険者の形相がただならぬものであることを知った、
そう、そもそも冒険者の格好や容姿に関しては語ることが無かったが、
かれもこの村まで数々の難所を潜り抜けたことで歴戦の冒険者の風格、
それを知らず知らずに手に入れてしまったのか要するにうっとうしい。
「冒険をぉ! 冒険をぉ! 僕に冒険をぉ! 教えてくれるのかいぃ!?」
「わ、わたし、何も知らないわ!
何も知らない!
何も知らないのよー!」
走り去る彼女を追い掛けて冒険者はひたすら追っかけはじめた!
もう完全に事案が発生した、この物語も最後かな、お終いだ、
そうとも弱者を一方的に食い物にするような主人公は最悪だ。
ましてや自分の冒険の為に見境なく人を追いまわすようになるなんて、
最低だ。やってらんない。
「つ、ついてこないでー!!!」
ただ、この村娘イーライールの脚力もすごいものである。
冒険する事に関して超高速である、冒険者を追いつかせない、
凄みがある!
「冒険! 冒険! 冒険! レッツ冒険!」
もう、冒険者という名の変態である。
9、ケベット村の教会、緑髪村娘サシャラン
「はあ、はあ、ケベット村まで来れば、さすがに、
あの冒険者は追ってはこないはず!
ひっ!」
「冒険! 冒険! 冒険! 冒険!」
うわー冒険の為に隣町まで村娘を追いかけるムーブ、
完全に悪党ですわ、これはー、もうついてらんないわー、
で、どうなる!
「ここです、隠れてください!」
「あ、あなたは?」 「私の事は放っておいて、あとの事は任せなさい」
ケベット村の教会まで来た村娘イーライールは、
緑髪の彼女に助けられ、教会に匿われた。
「ぼーうけーんー、ぼーうけーんー、ぼーうけーんー!」
「あなたの求めるものはここにはありません、
私は教会に務める村娘サシャランというものです、
そう、貴方がどれだけ求めてもそれは手に入らないでしょう、
天の神がそれを許さないからです」
「ぼ、う、け、ん?」
もうだめだ、こいつ。
「あなたは……そうですか、もともと、冒険者だったのですね、
ですが、その姿、もう、ただの人間であることを脱して、
死霊になってしまったようですね」
あ、そうだったんですね、
やっぱり死んでたんだー、
いつか死ぬと思ってたんだー、
って死霊!? こやつゾンビですか?!
「ぼーうーけーんー」
「こうなってしまっては、もはや私は貴方にして上げれることは、
ひとつしかありません、天の神に誓って、貴方の魂を浄化し、
無事墓に眠れるように、神が約束された日に復活を遂げれるように、
清浄の光りよ! かのものを癒やしたまえ!」
光輝く、十字架を片手に、冒険者ににじりよるサシャラン、
その勇気は認めるが、相手はゾンビだぞ! 噛まれるぞ!
大変なことになっちゃうんだからー!
「ぼーぼーうけーけーんー?」
「怖くない、怖くない、そう、ソフトタッチィ!!!!!!!!」
十字架でぶん殴ったー!!!!!
「は、冒険? 僕は冒険しなきゃいけないんだ!」
「よかった正気に戻ったようですね、
あなたはもう死霊ではありません、
ですが死霊になったらいつでも、
私の下に訪れてください、
何度でもあなたを導きましょう、
私はサシャラン、天の神に身を捧げるもの」
あ、はい、別に墓に埋めてくれて良かったんですけどねー、
こいつ何しでかすか分からないし、治してもやってること、
変わらないし、そもそもここまでの村巡りで、
地獄めいてきてるんで、はやく終わらせてくれれば良かったのになー。
「教えてくれ! サシャラン! この俺に冒険の在処を!」
「何でしょう? もしかしてハプラ村に行きたいのですか?
あなたの冒険というものが少しずつわかりかけてきた、
ような気がします、あなたが、村を巡るうちに、
記憶してきた旅の経路こそが、冒険そのものに違いないですよ、
そう、何も迷うことは無いのです、あなたはもう立派な冒険者、
あら?」
「ハプラ村! ハプラ村に冒険があるんだー!」
冒険ってあるものなんでしょうかね?
もう分かりません。
10、ハプラ村学校のこげ茶色髪村娘ロレンヌ
さて、ハプラ村にやってきたぞい!
そこは学校がある色んな村から生徒が集まる、
ちょっと変わった不思議村なんだけど、
ひょっとして教会のサシャランさんはこの冒険者に、
学校で学んでほしくって、ここを紹介したのかな?
だとしたらすっごく親切ー! こいつに教育し直すことが、
どれだけ重要かおれにはよく分かるー!
「ぼ、う、け、ん」
駄目だこいつ死霊化してやがる。
「えっとー、そのですねー、もしかしてー、あなたってー、ねー?」
現れたのは学生服姿の緑のくりんくりんお目目の謎の村娘、君の名前は?
「冒険! 冒険だよ! きみ! きみ! 名前はなんだい!」
「不審者には教えられません! 衛兵! 衛兵ー!!!!」
おっと、その通り、偉いぞ、ここの生徒は、でも、
できれば、もっと早く、こいつが近づく前にそれを言えてればよかった!
「冒険者! 冒険者だよ君! 冒険を知っているかい!? 教えて!」
「はあ!? 知らないわ! それに君じゃなくて、
私にはロレンヌっていうれっきとした名前が!
って、いっけなーい!!」
うっかり名乗ってしまったな、こいつは冒険者だ、
ただでは済まないぞ、冒険的に。
「ロレンヌ! ロレンヌ! 俺に冒険を教えてくれ!冒険って何なんだ!」
あ、はい、お前が冒険を知らないことは薄々感づいていました。
しかしここにきて、学生にそれを訪ねるのかとお母さん、心配です。
(私、村娘ロレンヌってば! 知らない人に名前を名乗っちゃった!
こりゃあ、校長先生にどやされるぞー!!!!!!!!!!!!!)
あ、はい、ロレンヌの内心はよく分かりました!
でも少し、身の危険を先に考えて! 逃げるんだよー!!!!!!!!!
「というか、次の村教えて、そっちで冒険するから」
「あ、はい、ヘンピ村まで行ったらその、いいんじゃないですか?
あそこまで行ったら冒険したとかそういうレベルじゃなく、
すごいレベルですから、というかとっとと行ってください、
わたし、あなたに興味ないんで」
村娘ロレンヌ、次は、興味ないムーブで乗り切るつもりだ!
しかもきちんと村案内までして、名前からして辺鄙にありそうな村、
これは勝ったぞ! 冒険者に勝ったぞ! 村娘ロレンヌ!
「ヘンピ村! そこに冒険があるんだー!」
村娘ロレンヌは小さくガッツポーズをして、
かくこうして、冒険を求める冒険が始まったって、
おかしくない? 俺、かなり冒険って言ってる気がするけど、
全然、冒険してる感じしないし、冒険始まったって何回言った?
そんなにいってないって? おっかしいな?
おっかしいの俺なのかな?
11、ヘンピ村の港、オレンジ髪村娘テッファナイ
「おい! そこの冒険者!
あんたかい!?
あの小舟を漕いできたっていう冒険者は!」
ははは、そんなまさか、さすがに、
そんな冒険みたいなことこの冒険者が出来るわけないじゃないですか、
ってヘンピ村って海にある島なの!? だったら船漕ぐしかないじゃない!
「ぼうけん?」
「はあー!? なんだい!? この村娘テッファナイに聞こえるように、
しゃべりなよ! あんたも冒険者なんだろ?! このこのー!!」
やりました、遂にこいつ海の冒険を経て、ヘンピ村までやってきたのだ、
それだけの行動力があること、まさに人間を辞めた証拠じゃないか、
嬉しいやら嬉しくないやら。
「君、テッファナイといったね? 冒険? 知ってるかい?」
「冒険? 当たり前だろ! 冒険者!
この島には一攫千金を狙った冒険者か、
それともクルーズ目的のクルーズ船とか、
そうだね豪華客船とかが横切るくらいのもんだよ、
こんなヘンピ村によく来たね! あたしゃ嬉しいよ!」
おお、喜ばれてる、冒険者が喜ばれるなんて、珍しいことも、
あったもんだね、でもさ、こんな島でどんな冒険があるんだろう?
「この島には海賊が残したお宝が、
沢山、海岸の洞窟にあるって話で、
多くの冒険者が洞くつ探検で命を落としてる、
アンタもその骸骨の仲間入りとはいかないだろうが、
この最果ての地に来たんだ、覚悟は出来てるね?」
あ、はい、テッファナイさんやっさしー、
こいつに始めて、冒険らしい冒険を教えてくれたよ!
長い冒険であなたが初めてだよ、うっれしー!
「違う、違うんだ!」
「違う? 何が違うんだ!?」
「俺がしたい冒険は!
海賊野郎の残した残りかすなんかじゃねえ!
冒険者が冒険を楽しむための王道冒険!
これ以外、認めねえ!
非合法的に冒険を作り出す! 海賊死すべし!」
おまえ、おまえな、こういうとこで、そういうこというからだぞ、
そうやって冒険をえり好みするからいつまでたっても冒険童貞、
なんだぞ、永遠にやってろ、永遠にな!
「よく言った! 確かにそうだよ!
海賊野郎の血塗れた宝に興味があるなんて糞野郎さ!
それを生業としてるこの村の野郎共も、
それを訊きつけてやってくる冒険者もまとめて糞野郎さ!
だったらあんたが教えてくれよ! 冒険の素晴らしさと、
やらを! もうそれしかこの村には残されていないんだ!」
「冒険、それは」
なんだよ、お前の知識なんて大したことないだろ、
知ってんだぞ、経験則的に、
「旅だ、それこそが冒険に相応しい」
「お、おお、旅か、確かにそうだな、
旅行客はお金落としていってくれるから大事だよな、
こんな島でも贔屓にしてくれるから、お姉さん助かっちゃうな、
そういやヌベンテン村の方から旅行客がよく来るんだ、
あんたも旅をするってなら、ヌベンテンが、
一番、情報に恵まれてるんじゃないかい?」
「そ、それだー!! 俺はヌベンテンで冒険をする!」
なんか、うまくまとめたみたいになってるけど、
おれ、一切、お前のこと信用してないからな!
お前の言ってることの大半、いきあたりばったりだからな!
テッファナイがたまたまいい子だっただけだからな!
「船漕いでいっちまった、
冒険者にしては珍しい奴だったな、
そう、骸骨みたいなやつだった」
12、ヌベンテン村の金髪村娘ヤータラムチャ
ヌベンテン村、そこは村というより高層建築立ち並ぶ都会、
見よ、街路樹に舗装された道、道路はアスファルトが敷かれて、
上下水完備はもちろん、各地からの特産品が、
マーケットで取引されてる、季節の花々も、
すべて、外来種を品種改良してこの地に合されたものだ。
かくいうそこの花も、そして村娘も、ヌベンテンの発展に伴い、
ここに越してきたというから凄いってばないよね、
ヌベンテン、村と呼ぶには発展し過ぎでしょう問題。
「わたし、ヤータラムチャよ、あなた冒険者でしょ?
ねえどこから来たの? 教えてよ、教えてくれたら、
変わりにいい、情報あげるよ」
こ、これはー!!!!
情報交換タイムきたー!!!!
願っても無いチャンスじゃないか!
僕たちわたし達の冒険が、って、この冒険いつ終わるの?
というより冒険者として冒険したって胸張って言える?
村につく、村娘に話す、次の村に行く、
それだけのルーチン、果たして冒険者だって言える?
「俺が全てだ、教えてくれ、冒険を」
あ、はい、お前に期待した俺が馬鹿だった。
「確かにそうね、この発展するばかりの村に、
歩いてやってこれるということは、
あえて舗装された道じゃない道から、
やってきたってことやたら無茶するのね」
ヤータラムチャさん、こいつに感心する事何もないですよ、
ただの冒険者くずれですから、はい。
「冒険を、教えてくれるのか?」
「いいわ、あなたに教えてあげる、
ローレンドック、ローレンドックの村に行きなさい、
そこで、冒険者ギルドに訊ねるの、
そこなら、今のあなたに必要な手続きをしてくれて、
冒険者手帳を発行してくれると思うわ、
緑色の冒険者手帳三級があれば、
あなたも立派な冒険者になれるから」
「ふっそれでおれも立派な冒険者というわけか」
ちょっと待って? 君、冒険して来たと言う誇りとか、
少しは持とう? だって、お前に付き合ったおれどうなんの?
お前の冒険を探し求める様、散々付き合ってきて、
結局、おめえ、冒険者ギルドで冒険者にさえなってなかった、
ってことだよ? この旅なんだよ!?
とんだ一苦労通り越して骨折り損だったよ!
というかローレンドック! 町なの? 村なの!?
まあどうでもいいことだけど!
ローレンドック! 始まりの村! 戻るの!?
戻れるのかよてめえ! なんとかいえよ! おら!
「冒険者手帳三級を使えば、
公的な機関が運営するプールが無料で使えるのよ」
「それは、ナイスだ」
あ、うん、もういいや、
おまえ、冒険者失格な!
おわりに
さてローレンドックの村に戻ってきて冒険者ギルドについた、
我らが冒険者、とっても元気で頑張ったよね?
俺たちも誇らしくってたまらない、ワクワクした冒険だったね、
ここまで色々あった、でも念願かなってやっと冒険者手帳三級を、
発行してもらえるわけだよ! これほどの幸福は無いよね!
「もし、もしな、ギルドの受付嬢、
俺に冒険者手帳三級を手配してくれないか?」
「はい、冒険者手帳三級ですね、
あなたほどの冒険者なら簡単に発行できますよ、
はい、ほら出てきた、冒険者さん、これから、
一杯、公的に認められた冒険が出来ますね」
「ふっありがとう、だがオレは張り紙とか見ない派なんでな」
「はあ? でも依頼とかって、
あの掲示板に張り紙して出されるものなんですよ、
あの掲示板の中に冒険を見出さなかったら、
一体、どうやって冒険をするっていうんですか?
あなたがギルドを新しくつくるとでもいうんですか?」
「違うな! 俺には村娘がいる! 村娘達が!」
オレンジの髪のレッタさん、紫ぱっつんのルローンさん、緑髪のイファナさん、青髪のテテリアさん、青緑髪のステイナさん、黄色いほっかむりにブラウンヘアのナーサさん、さて準備はいい!?
「はーい!」
オレンジの髪のレッタさんお元気ですか?
さっそくですが、成長したこいつを見てやってくださいよ、
こいつ冒険者手帳三級を苦労の末手に入れたんですよ!
「オレは、冒険者だ」
そうそう冒険者手帳三級を前に出せば、
皆、納得してくれるさ!
「あら、それはお可哀そうに、
冒険者なんかにならなければ、
まともな職につけたのにね、ではレッタこれから、
彼氏とデートだから、さよならね」
あ、はい、なんとなく分かってました、
その虫を見る様な目、気付いておりました、
有難うございます、ごほうびでございますね。
さて紫ぱっつんのルローンさん!
こいつ、こいつを見てやってくださいよ!
冒険者になれたんですよ! とっても立派な冒険者に!
おれ、こいつが立派に冒険者じゃないとか言われたら、
正直生きてられませんよ! へいへい!
「オレは、冒険者さ、これを見てくれ、
そして俺に冒険を教えてくれ」
「はあ?! あんた馬鹿じゃないの?
冒険者手帳3級を手に入れるのに、
一体どんだけ掛かってんのよ!?
ルローン、あきれてものも言えないわ!
今日までたったそれだけの事の為に生きてきたわけ!?
どんだけ暇なのよ! 暇人は相手にしてないわ!
しっし! あっちにいきなさい!」
あ、はい、虫を見る様な態度よりも、
子犬を追い払うような態度ですね! お優しい!
私、子犬のように扱われるなんて幸福幸いだと思うんです、
ほら、こいつもこんなに喜んでるんですよ! ほらほら!
さて緑髪のイファナさん? あなたならわかってくれるよね?
この世界がいったいどのように出来ているか、こいつがどれだけの、
冒険を潜り抜けてきたか! この男をここまで成長させたのは、
あなたたち、村娘さんなんですよ!
「オレは、冒険者だ! 冒険しようぜ!」
「はあ?! 遂に頭いかれて、冒険者手帳まで取って、
何様なの?! 普通に官職についていれば、
職業安定所に行けば、それなりの仕事にありつけるってのに、
何になったかって安定もしない、お金ももらえない冒険者ですって?!
しかもそれに村娘を誘う!? あんたはRPGわかってないのね、
村人にどれだけ負担を掛けずに冒険するか、それがRPGよ!
村人を巻き込んで、しかも税金を浪費するだけの冒険者に、
なった時点で、アンタ主人公失格! もう誰もアンタのことなんて、
相手にしないわ! これから散々いわれるからね!
あえてあたしが言ってあげたわ! 感謝しなさい、 じゃあね!
二度と話しかけないで!」
おう、大体、分かってたろ、相棒、
お前の冒険ってのはそういうもんなんだぜ?
村娘がいつも冒険ひっさげて持ってきてくれるわけじゃない、
そんな環境下でアンタが冒険をしたいって、
RPGみたいに村娘に話しかけて冒険を依頼されたいって気持ち、
分からなくもないぜ、でもいくら村人に話しかけても、
報われないことってあるんだよ、それでも行くのかい?
話すってのかい? 冒険者だね、あんたはもう立派な冒険者だ!
青髪のテテリアさんにチャレンジチャレンジ!
そう、村娘、その言葉だけで、チャレンジを与えてくれる!
そう信じてるから生きていける!
冒険者手帳三級でも大丈夫だって信じてる!
そうなんだ! 浪漫なんだ! やめられない!
「オレは冒険者だ、アンタは村娘だ、なら話は分かるな?」
「まさかとは思うけど、このテテリアに何か、
いかがわしいことしようとか考えてない?
というより、アンタ、かなり前に話しかけてから、
随分と印象変わったね、荒んだっていうか、
もう後先考えてないっていうか、
一回死んで来たっていうか、
あ、近づくんじゃないわよ、
近づいたら、警察呼ぶからね、アンタみたいなの、
いくら冒険者だって言い張ったって、
だあれも相手になんかしないんだから、
わかってる? 自分の立ち位置?
それ理解出来てないなら、終わってるよ、
アンタは」
じりじりと歩み去っていく彼女を見て、
なにも感じなかったわけはないだろう? 相棒、
そろそろ気づいてるんだろ?
アドベンチャーなんて虚構だってこと、
空虚な世界にゃ冒険なんてない、あるのは、
書類とにらめっこして作り出される、わずかな、
心の余裕だってさ、そうさ、俺たちはもう書類に、
目を通して、生きるしかないんだよ、そう決まってんだよ、
大体書類に書いてあるんだ、やるべきことはよ、
そうだよ、役所仕事が手続きしてくれるんだ、
村人に話しかけなくてもいいってわかったろ?
まだあきらめない気かい?
さあて!青緑髪のステイナさん! 準備は出来たかな!?
「オッケー!」
ではいってみようか!冒険者トーク!
「オレは冒険者だ、全てを冒険に捧げるつもりだ、
あんたも俺に冒険を捧げてくれ」
「すーーーーーーーーーー!
はあ?! ばっかじゃないの!!
冒険なんて一人でやってなさいよ!
誰も知らない山奥で1人で暮らして見なさいよ!?
ほら出来ないでしょ! 怖いんでしょ!?
人に依存して、自分から冒険なんかしやしない、
アンタが冒険者?! 馬鹿にしないで、
アンタはただの落ちこぼれよ!
この地球上で神が全てを決めた中で唯一生まれた欠陥よ!
欠陥品が、わたし達の世界で生きれるなんて思わないで!
いつまでも主人公面してないで、いい加減現実をみなさい!」
すごい、ぼうけんでしたね!
わかりましたか? これも冒険! 冒険なんです!
わたしたちは知らず知らずと冒険をする!
その冒険とは何か! 分かりますか!?
君も知ってるでしょう、誰も成し遂げてないことをやること、
それが冒険なんです、前人未到に挑戦する事、
それが冒険なんです、彼はまさに冒険の真っ最中にあります。
どれだけの村娘に嫌われるかという冒険の!
そう、彼はナンバーワンになるでしょう! ええきっとそうです!
黄色いほっかむりにブラウンヘアのナーサさん、さて準備はいい!?
「オレは冒険者だ、ナーサ、俺に冒険を与えてくれ」
「私は貴方の運命の人ではありません、
貴方は運命を手放して、さようならをする時が来たんです」
「冒険もまだしてないのにか?」
「いいえ、ここが終着地点です、
長い長い旅でしたね、
私、ナーサがこの町を出て行けといってから、
あなた結局帰って来てしまった、
悪いわね、あなたのこと捕まえたくは無かったのだけど、
あなたはもう立派なストーカーだわ、
警察の人、来てるわよ」
「冒険もまだしてないのにか?」
「悪いわね、これであなたの冒険はお終い、
これからは自分と向き合う時間の始まりよ、
刑務所で働いてみたらわかるはずよ?
規則正しい生活がいかに大切かが、
そうよ、冒険には規律が無いもの、
あなたのお終いにあって、
祝ってあげる。
やっと冒険を終えることが出来たわね」
「おれは」
おれは
「おれは、まだ冒険をしてもいないのにか?」
牢屋の中、ただ冒険をしたい男の話だけが残った、
彼は冒険に執着していた、それは歪んだ妄想だった。
村娘に話しかければ冒険のイベントが始まる、
すべてがそういうシステムで出来ていると、
思い込んだ彼は、間違っていた、彼は間違っていた。
そう、冒険とはもっとシステマチックなものなのだ。
最後に、牢屋にいる彼には関係ないが、
僕らに残された冒険について話をしようか、
僕たち人間は識字率を引き上げて、
いつしか文字分かる人間になってしまって、
全てを文字で判別するようになった、
だから、僕たち人間に残された冒険とは、
文字列の中に在ったんだ。
だけど多くの人達はまだ、
人との出会い、口述の中で冒険が得れると、
どこかで思い込んでいるね、それは間違いだ。
すべての決定は、文書で行われてる、
すべての行動は口頭だけでなく文書で裏付けられる。
君は、もう君の話を文字でしなければならない時代に来たんだよ、
だから、昔みたいな冒険なんて、そうさ、
昔だって冒険なんて無かったんだ、
あったのは、厄介者たちを無理矢理働かせてきた歴史だけさ、
僕もきみも、いやきみはちがうのかもしれないな、
厄介者たちが働かないから世の中が回らないのかもしれない、
けれど厄介者たちはいつもここではないどこかをめざしていた。
最後に、牢屋の彼が行った冒険がなんだったか考えてみようか、
僕たちは人の言葉の中に冒険を見出した時嬉しくなる、
でも全ての人が言葉の中に冒険をはらんでるわけじゃない、
本当に限られた所にしか冒険は無くって、決まっている。
あとは、牢屋の彼の行ったように、
みんなから呆れられる冒険と言えない何かしか残らない、
無謀だ、無茶だ、なんとでも言えるだろう、
でも分かってるさ、
よく分かってる、
冒険者がそれでも冒険がしたいってことを。
一足とびに行こうとしたのが間違いだった、
もし村娘以外に冒険を見出すことが出来たのなら?
結果は変わってたかもしれないよ、
そう需要と供給さ、
皆が冒険して欲しいと思う所に冒険があるんだ。
だから、みんな、今日から気をつけるんだ、
冒険は、計画的にね!
おしまい