簿記の問題(11) 売上の計上
(問題)
(1)~(3)の仕訳を示しなさい。すべて三分法によること。
(1)商品300,000円分を掛けで売り上げた。当社は品質の劣化などによる販売後の値引きを随時受け付けており、販売額の5%相当の値引きを販売時に見込んでいる。また発送費6,000円を現金で支払った。
(2)受託者は委託者から指定された売価300,000円の商品を現金で販売した。委託販売契約で受託者への手数料は売価の5%であり、販売時に発生する売価の2%相当の費用は受託者が現金で立替払いしている。両者の債権債務は後日清算する。委託者、受託者双方の仕訳を示すこと。
(3)商品300,000円をクレジット販売した。信販会社への手数料は売価の2%である。
(解答)
(1)販売額は300,000円ですが、顧客との契約により、将来の値引き等で最終的に受け取れる金額が減少する場合は、収益認識基準により最終的に顧客から受け取れる(と見込む)金額を売上として計上します。また販売時の費用は顧客との取引とは別の取引で、これで顧客との契約額300,000円が変動することはないので、売上から差し引いたりせず販売費及び一般管理費として処理します。
(売掛金)300,000 / (売上)285,000
(返金負債)15,000
(販売費及び一般管理費)6,000 / (現金)6,000
(2)受託者の販売額は300,000円で、これは委託者が手数料や販売費も考慮して設定し、受託者に指示した売価です。委託者が最終的に受け取るのは手数料5%(15,000円)と立替金2%(6,000円)を差し引いた279,000円ですが、顧客は受託者ではなく最終的に委託者の商品を購入した人であり、顧客は300,000円を支払っているわけです。委託者は自分が設定した売価300,000円を売上とし、受託者への手数料や販売費は積送諸掛費(販売費及び一般管理費)として売上と同時に計上します。
・委託者の仕訳
(積送売掛金)279,000 / (売上)300,000
(積送諸掛費)21,000
受託者は、販売した商品は自分のものではないので、売上と原価を計上しません。販売というサービスをしたことによる対価の収益だけを計上します。顧客との債権債務は受託販売勘定で処理します。
・受託者の仕訳
(現金)294,000*1 / (受託販売)279,000*2
(受取手数料)15,000
*1 顧客の代金300,000ー販売費立替6,000
*2 顧客の代金300,000ー販売費立替6,000ー受取手数料15,000
(3)クレジット販売では、販売相手は顧客ですが、対価は信販会社から受け取るのが通常の販売と異なる特徴です。あくまで顧客が支払うのは現金販売でもクレジット販売でも300,000円ですから、この売価を売上とします(クレジットカードの決済手数料は、原則として顧客に負担させることはできないので、売価を手数料込の金額に修正するような問題は出ないと思います)。信販会社からは手数料を差し引いた金額を受け取ることになるので、この金額を営業債権として計上します。
(クレジット売掛金)294,000 / (売上)300,000
(支払手数料)6,000
クレジット売掛金の決済時に手数料を計上する場合は以下のようになりますが、どちらでも売上は300,000円になることが重要です。
(クレジット売掛金)300,000 / (売上)300,000
(現金)294,000 / (クレジット売掛金)300,000
(支払手数料)6,000