『あの日、知恵熱が出たんだ。』殺人事件
プロローグ
テレビのゴールデンタイムからラジオのゴールデンタイムに移ろうとしていた深夜の手前、コンビニの駐車場に停めた車内で、
藤井和也は黙ってスマホとにらめっこをしていた。
ダウンロードしたアプリはnote。
煩わしさにも慣れて、それを感じさせないようスムーズな手つきでアカウントの設定を終えた。
手馴れているのは藤井が今時の若者だからではない。四十をとうに超えてる中年である。
noteは以前使っていたのだ。noteだけでなく、Twitter、Instagram、アメブロ、ツイキャス。YouTubeやラジオトークにもアカウントを持っていた。
突然すべてのアプリを退会したが、、
藤井和也には、もうひとつの名前がある。
ラジオネーム『あの日、知恵熱が出たんだ。』
ラジオにネタやお便りを送る時に本名の隠すためのニックネーム
当たり前だが、知ってる人は知ってるし、知らない人は知らない。まあ本名だって同じだし。。
連投になるであろうこの記事が終わると
もうこのラジオネームが藤井のスマホから打たれる事はなくなる。年内には終わるだろうか。
『さて』
藤井は心の中で呟いて、noteのテキストに始めの文字を打った。
暗い社内の中、スマホのライトに照らされた藤井の顔は不気味であった。
らしいとも言えた。
なぜなら、藤井がしたため始めたのは、昔から書いてみたいと思っていた小説でなく
遺書
だからである。
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