なぜ同じことをしていても、すぐに上達する人とそうでない人がいるのか?
曲がりなりにもアスリートとして生計を立てている私が常に考え続けてきた事の1つとして、「ほぼ同じ練習量でも人によって上達度合いがまったく違う」と言う事がありました。
騎手として同じ時期にデビューした者同士でも、次々に技術を吸収してうまくなっていける者と、かつての私の様にそうでない者がいます。
その違いは一体なんなのでしょうか?
小手先の努力では立ち打ちできない、根本的な違いを解決する為に考え、勉強し、たどり着いたひとつの結論をシェアさせていただきます。
スポーツの話に留まらず、自分を変えていきたいと思っている多くの方に読んでいただけたら嬉しいです。
ジョッキーほくとのバックグラウンド
まず最初に私の話を簡単にさせていただきます。
私のアスリート人生は「運動音痴」の4文字から始りました。
中学の頃の体育の成績はいつも2か3。とにかく体育の授業が大嫌いな子供でした。
そんな私が騎手を志した大きな理由の1つは、「周りを見返したかったから」です。
普通アスリートと言うと、昔から運動神経の良い人がなるイメージだと思います。
そして、多くの場合は実際にそうだと思うのですが、騎手という職業は少し特殊です。
なぜなら、プロ野球などと違って、子供の頃から全国の精鋭と戦って勝ち残らずとも、競馬学校にさえ入学できれば誰でもなれるからです。
おかげで挽回のチャンスを得た私ですが、本当の戦いはそこからでした。
プロのアスリートとして戦っていくために、もともと劣っている自分の運動能力を根本から見つめ続ける必要があったからです。
そして、ひとつの疑問にたどり着きます。
同じことをしても、すぐに出来てしまう人とそう出ない人がいる。その違いは何なのか?
確実に経験を物にしていく為には?
これからお話しする事は、私が、生まれつき恵まれた才能を持っていた訳ではなかったからこそ気づけた事です。
15年以上考え、勉強し続けてきた事が、応用脳神経学を学んだ事で、線としてつながりました。
なぜ同じ事をしていても上達する人とそうでない人がいるのか?
上達の早い人は、同じ練習をしていてもそこから得る経験値の量が桁違いです。
そして、その違いを作り出しているのが、自分が行った行動から得ているフィードバックの質と量なのです。
フィードバックとは何か?
例えば、あなたが小学生だったとして、算数の授業で簡単な計算問題を解いてみたとします。3×5のような。
しかし、その答えが正解か間違えか、教えてもらえなかったとしたらどうでしょうか?(フィードバックの有無)
若しくは間違った答えを教えられてしまったらどうですか?(フィードバックの質)
算数を学ぶために解いた問題は、学び(経験値)として蓄積されませんよね?
ものすごく当たり前の話ですが、自分がした行動に対して、何が結果として起こったのかが不明瞭な時、私達の脳は何も学ぶ事ができないのです。
スポーツにおけるフィードバックとは?
フィードバックが何かを学ぶ為にすごく重要なことは、お分かり頂けたかと思います。
では、スポーツの局面で、自分のアクションに対してフィードバックを充分に得る事ができない状況とは一体何でしょうか?
それは、感覚情報のインプットが充分でない事や、正しくない事です。
感覚情報のインプット
私たちの脳は、感覚情報のインプットを基に体を動かし、動かした結果起こる感覚情報を基に学び、動きや行動を修正する事を繰り返しています。
【例えばボールを投げる時】
1・目でどこに投げるか確認し(感覚のインプット)
2・関節の神経で、体のポジションを感じ(感覚のインプット)
3・三半規管でバランスを感じとります。(感覚のインプット)
4・様々な感覚情報、過去の経験から、どうすれば自分の思ったようにボールを投げれるか?予測をたてて運動計画を作ります。(情報の解釈)
5・予測を基にボールを投げます。(アクション=アウトプット)
6・ボールがどこに行ったのか?体は実際思った通りに動いたのか?動きの結果で起こる更なる「感覚」を、フィードバックとして蓄積し、学びます。(インプット)
インプット→解釈→アウトプット→インプット
こういった一連の作業が無意識にもちゃんと行われる事で、私達は様々なスキルを学習していきます。
感覚情報のフィードバックが不足する
しかし、感覚情報のインプットが不足している時、そして正しくない時、学習はうまくいきません。
・鎧を踏む足の感覚がちゃんと働いていなかったら?
・目が悪い為に、視覚情報が不十分だったら?
・自分のバランスがどこにあるのか、三半規管がちゃんと働いていなかったら?
こういった状態ではどんなに練習を重ねても、感覚情報のフィードバックが十分でないために学習速度は遅くなります。
若しくは、いつまで経っても上達できないといった事が起こるのです。
そして、ちょっとしたケガや病気、充分に使われないことで、感覚器官の働きは悪くなります。
これがいわゆる運動神経が悪い状態です。
そしてそれを表す最も良い例が、私の幼少期です。
今考えると、私の運動音痴は、完全に三半規管の不具合に起因する物でした。
「バランスのフィードバックが常に正しくない事」
ぞれが、私のあらゆる運動能力の発達を著しく妨げてきたのです。
そして、なぜそういった事が起こったのか?
三半規管は非常に傷つきやすい器官であるが為に、出生時にダメージを負って産まれてくる事は珍しくないそうです......
結論
「なぜ同じ事をしていても、すぐに上達する人とそうでない人がいるのか?」
その理由は、感覚情報のフィードバックの差です。
それは必ずしも意識的な努力の話ではありません。
スポーツにおいては特に、感覚器官そのもの働きが感覚情報の質に影響します。
『垂直跳びの上達率を計測したひとつの研究では、毎回どれくらい高く跳べたかを計測しフィードバックを得るだけで、テクニックを学ばずとも、上達していける事が証明されました。』
私自身、自分の体の働きが悪い感覚器官をみつけて、リハビリをしていった結果、今までにないくらいの上達を感じるようになりました。
無意識にも自然と体が学習していける感覚です。
そして今回紹介した考え方というのは、完全に脳神経学です。
その応用範囲は、もちろんスポーツに限った話ではありません。
皆さんは、どれだけ常日ごろから目的意識を持って行動しているでしょうか?自分が行った行動に対してどれだけのフィードバックを得ているでしょうか?
現在何かに取り組み、伸び悩んでいる方。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
最後にひとつ、勇気をくれる豆知識として、バイオフィードバックという物を紹介したいと思います。
バイオフィードバックとは
本来自由にコントロールできない体の機能を、機械などを使う事でフィードバックを得て、トレーニングしていく事です。
例えば心拍数など。
常日頃からその値を確認していく事で、意思の力で心拍数や自律神経の働きすらコントロールできるようになるのです。
この豆知識から分かることは、人生を生きていく上で、あらゆるスキルはトレーニング可能であるという事です。
得意や苦手。そんな言葉にとらわれず、多くの人が自らの可能性を伸ばしていけることを願っています。
最後になりましたが、お話ししたような感覚器官の働きを良くしていく方法は、徐々にシェアしていきたいと思います。
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ではでは。