「名前」の意味とは【サウナセンター@鶯谷駅】(2/2)
「東京で最も古いサウナ」と呼ばれる店舗は、鶯谷駅の近くにあるらしい。このエリアは僕の生活圏から離れているので滅多に訪れることはないのだけれど、この日はたまたま知人に誘われて、一緒にその店舗に行くことになったのだった。
僕はこの日、記憶にある限りでは人生で初めて鶯谷駅の改札を通った。時刻は午前10時半ごろ。もちろん土地勘は全く無い。
知人は急用のために少し遅れて到着するらしく、僕は先に現地に向かうことになったのだけれど、目的地に向けて歩き始めると、駅前にはラブホ街が広がっていた。なるほど、これが鶯谷か。
複雑な気持ちを抱きつつ歩を進めていると、事前に調べていた通り、駅から5分ほどで今回の目的地に到着した。
「これが噂のサウナセンターか!!」
そう、「東京で最も古いサウナ」とは、すなわちカプセルホテルの「サウナセンター」のことである。
僕はさっそく館内に入って受付を済ませようとしたところ、フロントの女性スタッフから「11時までは清掃のために入浴ができないんですけど……」と申し訳なさそうに言われてしまった。僕としたことが、どうして営業スケジュールを調べておかなかったのか。とりあえず、僕はそのスタッフに相談して、エントランスでしばらく待機させてもらうことになった。その時に収めた一枚がコレである。
(どのような経緯でガンダムが設置されることになったのだろうか……)
目の前には不思議な光景が広がっていたものの、わざわざその理由を調べようとも思えない程度の絶妙に薄い興味を抱いてしまった。
その場で15分ほど待っていると、先ほどのスタッフから「5分前になったので、着替えの時間を考えたらそろそろ大丈夫だと思いますよ」と声をかけてもらえた。
僕は気を取り直して「37(サウナ)」の下駄箱に靴をしまい、あらためて受付を済ませることに。3時間コースの1,200円(税込)を支払うと、ロッカーキーを渡された。そのまま奥に進むとロッカースペースがあり、指定されたロッカーを開けると、その中には館内着とタオルセットがあらかじめ用意されていた。さっそくそれに着替えてみる。
「えっ、なにこれ、気持ち良すぎるんだけど(笑)」
サウナセンターの館内着は、僕のサウナ史上最高クラスに着心地が良かったのである。サラサラしていて柔らかく、しっとりしていてなめらかなワッフル生地。しかもゆったりとしたサイズ感。これは部屋着として普段使いできるぞ。
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
僕はそのまま浮かれた気分で浴場へと向かった。エレベーターで6階に降りると、すぐ目の前に脱衣所があり、左側には外気浴スペースもあった。と言っても、外気浴スペースの存在感は薄く、誰かに教えてもらわない限り気づけない可能性がある。僕はたまたま今回誘ってくれた知人から事前に教えてもらっていたからすぐにわかったものの、事前情報なく一人で来ていたら素通りしていたに違いない。マルシンスパやコスモプラザ赤羽もそうだったけれど、店舗によっては脱衣所を経由しなければ辿り着かない外気浴スペースが存在するので注意が必要である。
脱衣所には鍵無しの棚と、貴重品用の小さな鍵つきロッカーがあった。僕は館内着をその棚に預けて、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。
「おぉ〜、シンプルな造りだ」
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
浴室にはお風呂と水風呂が一つずつ並んでいて、サウナ室の存在も確認できたが、その隣にはもう1つ部屋があるようだった。どうやら、そちらは「ペンギンルーム」と名付けられた冷却室らしい。これはなかなか珍しい。そしてありがたいことに、サウナ室の前には飲料用の冷水と麦茶のタンク、さらに塩分補給用の塩まで用意されていた。
僕はまず身を清めてから、温かいお風呂でコンディションを整えて、さっそく蒸されることにした。サウナ室の前に置かれていたサウナマットのビート板を手に取りつつ、いよいよ扉を開けたのであった。
「そこそこ広いな〜!」
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
サウナ室の中は3段構成で、15人程度が座れるほどの広さがある。この時間帯はまだ混雑もしておらず、先客はゼロ。僕は迷わず最上段に腰をかけた。
温度計は2つあり、片方は88℃を指しているがもう一方は98℃を指している。本当の温度がどちらなのかはわからないが、しっかりとした熱を感じることができた。
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
それから徐々にお客さんが入ってきたものの、最大でも3人程度が入れ替わりながら出入りするくらいで、非常に空いていた。これはなかなか快適である。そのままテレビの音に耳を傾けながら蒸されること約7分、気づけば僕の全身からは滝汗が流れ出していた。
「そろそろ出ようか……」
僕は立ち上がり、サウナ室を出て汗を流してから水風呂に沈み込んだ。
「うおおおぉぉぉおおお! 気持ちいい!!」
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
やや広めの水風呂は14℃の設定。バイブラは無し。ここには他にお客さんがいなかったので、僕は足を伸ばして贅沢に冷水を堪能させていただくことにした。そこで30秒ほど冷やされると、火照った僕の体は徐々に落ち着きを取り戻し、先ほどまで激しく動いていた心臓の鼓動もゆるやかになっていった。
水風呂の目の前には休憩用のベンチがあったけれど、それを横目に僕が向かったのは「ペンギンルーム」である。ドアを開けると、その中には先ほどのサウナ室とはうってかわって凍えるほど寒気を感じる空間が広がっていた。
(サウナセンター公式サイト: https://sauna-center.jp/floorguide.html )
ペンギンルームの中には椅子が3脚並んでいて、それぞれの椅子の上には風力が異なる扇風機が設置されていた。なお、各扇風機の電源は個別に操作できるようになっているので、風が欲しい時だけスイッチを押せば良い仕様になっている。
ペンギンルーム内には僕以外に誰もいなかったので、中間の風力が設定されている椅子に腰をかけて、貸切状態で冷風をいただくことにした。そして、期待を込めて頭上にある扇風機のスイッチを入れたのであった。
「うおおおぉぉぉおおお! これは寒い!! でも気持ちいい!!!」
カプセルイン蒲田でも浴場内の休憩スペースで扇風機によって風を受けたことがあったが、ペンギンルームの場合は室温も風力も全く違う。これは外気浴に似て非なる ”ととのいスポット” かもしれない。周りに誰もいない個室で、周りの視線や音を気にすることなく静かに自分自身と向き合うことができる特別感。僕は目を閉じ、全身を脱力させて、その悦びを噛み締めていた。
「最高だ……」
とはいえ、水風呂で冷やされた直後の体には、この冷風はなかなか刺激が強すぎた。僕の体は瞬く間に冷え切ってしまったため、お風呂で体を温め直し、再びサウナと水風呂をいただいてから、今度はペンギンルームではなく脱衣所を通り抜けたところにある外気浴スペースへと移動した。
「この場所もなかなか良いじゃないですか!」
簡易的に設けられた小さな外気浴スペースには、椅子が3脚用意されていた。そのうちの1つに腰をかけて、目を閉じて深呼吸をすると、冬の冷たい空気が僕の体を鎮めていったのだった。実に気持ちがいい。
僕はそのあとにもう1セットをいただくことにしたのだけれど、ここで知人も浴場に現れて、3セット目についてはタイミングが被ったために一緒に蒸されることになった。気づけば、11時半くらいまではガラガラだった浴場には、徐々に人が増えてきていたようだった。といっても、おそらく夜の時間帯や休日に比べると空いているほうなのだろう。特に混雑する様子もなく、快適に過ごすことができた。
僕はそれから知人と一緒に、すぐ下の階にある食事処へと移動した。噂には聞いていたが、メニューが豊富である。しかも全て美味しそうだ。
5分ほど悩んでから「豚生姜焼き(税込500円)」と「定食セット(税込250円)」を注文すると、それから数分で本日のランチが運ばれてきた。まずはメインである豚生姜焼きを一口いただいてみる。
「うまっ!」
個性的な味付けがされているわけでもないし、特別な食材が使われているわけでもない。しかし、だからこそ安心感を覚えられる良さがある。王道を真っ直ぐ突き進んだシンプルな一品が、ここにはあった。ボリュームのある白メシとの相性も抜群だ。僕はあっという間に豚生姜焼き定食をたいらげてしまった。
それから知人とともにしばし休憩をしてから、僕たちは再び浴場へと戻り、2セットをいただいてからサウナセンターを後にした。
サウナセンターは「東京で最も古いサウナ」として知られているが、そもそもの名前が「サウナセンター」である。サウナに自信がなければこの名前はつけられないとは思うけれど、実際のところ、その名に恥じることのない魅力溢れる店舗であった。
名前だけが一人歩きしても、そこに中身が伴っていないのであれば淘汰されてしまうのが自然の摂理だ。僕は、サウナセンターが長きにわたって愛され続けている理由を知ったのであった。
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
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