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そこに物語はあるか【ひたちなか温泉 喜楽里別邸@茨城県ひたちなか市】(2/2)

 水戸駅に到着したのは、6月3日(金)の昼過ぎごろだった。僕はこの日、翌日の仕事に向けて前乗りをしていたのである。ホテルには15時からチェックインできるのだけれど、僕はあえて夜の時間帯で予約をしていた。その理由はもちろんサウナである。

「高級感あるなぁ」

 そう、今回訪れたのは「ひたちなか温泉 喜楽里別邸」だ。その名の通り、以前に伺った神奈川県川崎市にある「溝口温泉 喜楽里」の姉妹店である。水戸駅からバスで最寄りの「筑波台」まで約10分、そこから歩いて5分ほどの場所にあり、和モダンな雰囲気が特徴のスーパー銭湯だ。

 僕はさっそく館内に入り、靴を預けてフロントで受付を済ませた。平日の入館料は950円でキーバンドによる後払い制。スタッフから渡されたバッグにはタオルセットが入っていた。
 奥に進むとレストランやリクライニングシートが並んだ休憩スペースなどがあり、突き当たりに脱衣所がある。平日の昼過ぎということもあり、かなり空いているようだ。そこで準備を済ませると、いよいよ浴室へと足を踏み入れた。

「やっぱりきれいだなぁ」

(公式サイト: https://www.yurakirari.com/kirari/hitachinaka/indoor_bath.html )

 そこには炭酸泉やジェットバスなどのさまざまな種類の内風呂と、そしてガラス越しには露天スペースを確認することができた。まず身を清めて、お風呂で体を温めると、さっそくサウナ室へと向かうことにした。ビート板と消毒スプレーが用意されているあたりは、川崎の店舗と統一されているようだ。僕はゆっくりと扉を開けた。

ーーほぉ、想像より広いな。

(公式サイト: https://www.yurakirari.com/kirari/hitachinaka/indoor_bath.html )

 ベンチは3段構造で、10人以上が余裕を持って座れる広さがある。テレビが設置されているけれど、小窓からは見える露天スペースを眺めながら蒸されるのも良さそうだ。
 僕は空いている最上段に腰をかけ、テレビを見ながら静かに蒸され始めたのだけれど、少し気になることがあった。不自然に湿度が高いのだ。その時に僕の目に留まったのは、「熱氣流アトラクション」という看板である。なんでも、9時から23時まで、1時間お気にオートロウリュが行われるそうで、僕がサウナ室に入ったのは14時03分頃だったため、まさについ先ほど湿度が急上昇していたタイミングだったのである。
 湿度が高いということは、それだけ体感温度も高くなるということだ。室温は95℃だが、確実に100℃以上の熱を感じる。そこでじっとしていると、ものの数分で全身から汗が流れ出し、心臓の鼓動が激しくなった。そしてサウナ室に入ってから8分程度が経過したところで僕は立ち上がり、外に出てすぐ脇にある掛け湯を頭からかぶり、水風呂に肩まで浸かった。

「めちゃめちゃいいじゃないですか」

 水深は肩までどっぷり浸かれる90cm、そして水温は15℃でバイブラは無し。そのキンキンに冷えた水は、先ほどまで火照っていた僕の身体をじんわりと鎮めていってくれたのだった。
 そこで30秒ほど呼吸を整えた僕は、露天スペースへと移動した。

「おお! これは絶景!」

(公式サイト: https://www.yurakirari.com/kirari/hitachinaka/spa.html )

 この眺めが、ひたちなか温泉喜楽里別邸のウリの一つだ。ここは丘の上にあるため、田園風景や水戸の街並を遠くまで見渡すことができるのである。それだけでも気持ちよかったのだけれど、この景色を眺めながら入る天然温泉かけ流しの露天風呂の素晴らしさは説明するまでもないだろう。つい先ほど冷水を浴びたばかりの状態で温泉に浸かれば、収縮していた血管がいっきに開き、心身ともに独特な開放感を得ることができたのだった。
 そこで一呼吸おいてから、すぐ隣にある「寝ころび湯」に横たわれば、心が奪われないわけがなかった。

ーー最高だろ……。

(公式サイト: https://www.yurakirari.com/kirari/hitachinaka/spa.html )

 すっかり時間を忘れてその場で放心状態になってしまった僕は、ようやく意識を取り戻すと、軽めにもう1セットをいただいてから露天で休憩をしながら時計を確認した。そして時刻が14時55分になったところで、僕は再び浴場へと向かい、サウナ室の中へと足を踏み入れると、それから数分でその時がやってきた。

「ジャー!」

 サウナストーブの上に設置されている2つのパイプから大量の水が吹き出し、それと共に熱を帯びた高温の蒸気がサウナ室内にいっきに充満した。熱い。熱すぎる。これが熱氣流アトラクションか。全身が焦げるように熱い。
 それからすぐに限界を迎えた僕は、再び水風呂を経由して露天スペースへと移動し、リクライニングチェアに全体重を委ねて、大きく深呼吸をした。

ーー最高だ。素晴らしいよ……。

 それから身体が落ち着いたところで浴場を出た僕は、翌日の仕事に備えてホテルに向かった。これが、僕の物語だ。

(written by ナオト:@bocci_naoto)

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#連続サウナ小説 『ボッチトーキョー』byナオト
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