「人に紹介される人になれ」【サウナリゾート オリエンタル赤坂@赤坂見附駅/赤坂駅】(1/2)
「開始5秒で出ました」
僕が友人から連絡を受けたのは昨年9月のことだった。いったい何のことかと思ったら、どうやら港区にある「サウナリゾート オリエンタル赤坂」でアウフグースを受けたらしく、その熱波があまりにも強烈ですぐにサウナ室を飛び出したそうだ。
なぜ突然そんなことを思い出したのかというと、まさにそのオリエンタル赤坂に伺う予定ができたためである。というのも、たまたま虎ノ門にある取引先のオフィスまで顔を出すことになった僕は、真っ先にGoogleマップで周辺エリアの情報を調べたところ、徒歩で移動できるほど赤坂が近くにあることを知ったのだった。
そんな今日、5月18日(火)は傘がぎりぎり要らない程度の小雨が降っていた。先日アジュール竹芝に伺った時から感じてはいたが、正式に発表されたわけではないものの、明らかに梅雨の気配がそこまで迫ってきている。
予定通り15時ごろに取引先との予定を終えた僕は、見慣れない街並みを眺めながら20分ほど歩き、今日の目的地に到着した。
「これがオリエンタル赤坂、通称『赤オリ』か〜」
建物の入口には「CENTURION HOTEL GRAND」と表記があるけれど、オリエンタル赤坂は、このセンチュリオンホテル・グランド赤坂の中に併設されているスパ施設なのだ。
さっそく中に入り、1階のフロントでスタッフに声をかけると、日帰り入浴の場合は浴場がある2階で受付を済ませるよう案内をされたため、エレベーターで上の階へと移動をした。
エレベーターを降りるとすぐ目の前に下駄箱があった。経験上、この時間帯のサウナは空いていることが多いのだが、今日は僕の予想以上に下駄箱が埋まっている。少し混雑しているのではないかと一抹の不安を覚えたものの、ここまで来て引き返すわけにはいかない。
僕は下駄箱に靴を預けて奥に進み、すぐ正面にあった受付でスマホの画面を提示した。オリエンタル赤坂の通常利用料金は60分コースで1,300円、90分コースで1,600円、そして延長する場合は30分ごとに500円とのことだが、事前に情報収集をしている時にたまたま見つけたアソビューのオンラインチケットを使用すれば90分利用が1,300円になることがわかり事前決済していたのである。
そこでタオルセットとロッカーキーを受け取り、その流れで受付に向かって左手を見ると、通路が二手に分かれていた。それぞれ中を覗き込むと、左側の部屋はリクライニングチェアが並んでいる休憩スペースで、右側はロッカースペースになっていた。
(※オリエンタル赤坂:
https://www.centurion-hotel.com/sauna-oriental/facilities/)
時間が限られていたのですぐにロッカースペース側に進むと、そこは今までに伺った温浴施設の中で一番かもしれないほど、必要最小限の面積で設計された個室になっていた。運動部に所属していた中学生の頃の部室を思い出し、少し懐かしい気分になってしまった。
(※アソビュー: https://www.asoview.com/base/151157/ )
手前にある「作務衣」と書かれた棚には館内着が積まれていたので、僕はそこから上下セットを手に取り、指定されたロッカーまで進んで周囲のお客さんと気を使い合いながら準備を済ませた。だが、ここで一つ疑問が浮かんだのである。
ーー浴場はどこだ?
何も考えずにここまで来てしまったけれど、ロッカースペースを突き当たりまで進んでも行き止まりだ。
その時、ちょうど全裸でロッカースペースに入ってくる男性が目に留まった。もしやと思い、タオルを片手に外に出ると、先ほどの受付の前を全裸の男性たちが何人も行き交っているではないか。
ーーみんなこの廊下を全裸で通ってるのか……!
そう、浴場は受付に向かって右側の通路を進んだずっと先にあったのだ。
(※アソビュー: https://www.asoview.com/base/151157/ )
もちろん僕のように作務衣を着て浴場まで移動している人もいたが、お客さんの半分ほどは全裸で浴場とロッカースペースを繋ぐ長い廊下を行き来して、受付の前を通過していたのである。男性専用施設とはいえ、その珍しい光景はあまりにも衝撃的で、僕の価値観は少しだけアップデートされたのであった。
僕は気持ちを切り替えて廊下を突き当たりまで移動し、1〜2畳ほどの簡易的な脱衣所の棚に着ていた作務衣を置いて、いよいよ浴場へと足を踏み入れた。
「お〜、まさにオリエンタルだな」
(※オリエンタル赤坂:
https://www.centurion-hotel.com/sauna-oriental/special/ )
浴場内には東洋風の模様やイラストがあしらわれており、大きなお風呂が一つと、そして水風呂が二つ設置されていた。
シャワーはドアがついている半個室のスタンディングスタイルで、隣同士の水しぶきがかかることはなく、そして周囲からの視線が気にならないのは個人的に嬉しい仕様である。僕はまず身を清め、お風呂で体を温めた後に、さっそくサウナへと向かった。
「めちゃめちゃ混んでる!」
サウナ室のドアを開けると、設備がどうだとかセッティングがどうだとか、そういうことよりもまず混雑具合に驚いてしまった。
(※アソビュー: https://www.asoview.com/base/151157/ )
やや明るいサウナ室の中は二段構成で、隙間なく詰めて座れば最大10人が利用できるほどの広さがあったが、この時はそのキャパシティに対して9人がすでに蒸されていた。ここまで人口密度の高いサウナ室は久々だ。平日の昼過ぎにも関わらずこれだけ混雑しているだなんて、その人気の高さがうかがえる。
僕は奇跡的に空いていたスペースに腰を掛け、いったん落ち着いて周囲を観察することにした。温度は94℃で、湿度もある程度の高さが維持されている。テレビからは音が流れていたので、それに耳を傾けながら蒸されていると、数分で全身からじっとりと汗が流れ始めた。
「そろそろ出よう」
もともと1セット目は軽めに済ませようと考えていたので、身体的にはまだ余裕があったものの、僕はサウナ室を出て全身の汗を流してから、すぐ脇にあった水風呂に肩まで沈み込んだ。
「お〜、けっこう冷たい!」
(※オリエンタル赤坂:
https://www.centurion-hotel.com/sauna-oriental/facilities/)
水温は14℃。大人が2人ほど入れる広さと深さがあり、そこで30秒ほど身体を鎮めてから浴場内にある ”ととのい椅子” に腰を掛けた。
「あー、すげー気持ちいい……」
そのままぼーっとしながら呼吸を落ち着かせて休憩をしていると、時刻は15時50分を少し過ぎたところだった。
「さて、では準備をしますか」
僕は立ち上がり、周囲のお客さんの様子を窺いながら、再びサウナ室へと入ったのだった。相変わらずサウナ室の中は混んでいたものの、運良く満員ではない。僕は空いている上段に腰を掛けて、再び静かに蒸され始めた。
それからもお客さんは続々とサウナ室の中に入ってきて、なんと床にも3人が座るほど密集した。その中には中身の入ったペットボトルを持ち込んでいる人もいて、いろんな意味でオリエンタルだった。
その直後、突然ドアが開かれてスタッフがサウナ室の中に入ってきた。そう、今からアウフグースが始まろうとしているのだ。
オリエンタル赤坂では16~19時の間、1時間おきに計4回のアウフグースを行っているのである。これこそ僕が今回ここに訪れた理由だ。友人から送られてきた「開始5秒で出ました」という言葉の意味を確かめなければならない。
アウフグース自体、記憶にある限りでは2ヶ月ほど前に「朝日湯源泉 ゆいる」で受けてからご無沙汰だ。それだけでも僕の興奮状態は高まっていたのだけれど、オリエンタルといえば上野にある系列店「上野ステーションホステル オリエンタル1」には伺ったことがあって、そこで全身が火傷したかのような地獄の時間(※褒めている)を経験したために、より一層の期待を抱いていたのである。
「アッッッッッッッッッツ!!!!!」
なんだこれは、熱すぎる。皮膚が火傷したかと思った。必死に耐えようと、歯を食いしばって全ての表情筋に力が入る。目は開けられず、呼吸は一瞬で荒れて口は酸素を求めて全開になり、全身が震えた。そこからさらに団扇で送られてくる熱波の嵐。
「ウオオォォォオオッォオオォオォオオオ!!!!!」
このあたりから、僕の記憶は曖昧になっていった。”苦悶の表情”とは今の僕のような顔のことを指すのだろう。過去最高レベル……いや間違いなく過去最高温度の熱風に、これまでとは比にならないほどの命の危険を感じた。まさに極限状態そのもの。眼球を守るために僕の目は限界まで閉じられ、折れそうになるほど歯を食いしばった。
ーー常識と常識【上野ステーションホステル オリエンタル1@上野駅】
https://note.com/bocci_tokyo/n/n04a8cd89d0cb
そして、いよいよその時はやってきた。スタッフがサウナストーブに水をかけると、たちまち熱蒸気がサウナ室に充満し、僕を襲ってきた。
「あっっっっっっっっつ!!!!!」
この時点で顔を晒すことができなくなり、身の危険を感じた僕は、反射的にタオルで頭部全体を覆った。そんな僕に追い討ちをかけるように、巨大な団扇によって生み出される強烈な熱波が僕の体を焼き尽くす。想像を絶する熱地獄だった。
「苦しい……熱すぎて息ができない……目を開けることもできない……全身が痛い……もうこれ以上は耐えられない……」
アウフグースが始まって1分ほどが経過した頃だろうか。いよいよ身体が限界を迎えようとした時、僕は父が僕に贈ってくれた言葉を思い出していた。
ーー後編に続く
(written by ナオト:@bocci_naoto)
YouTube「ボッチトーキョー」
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