HappyBirthday??
誕生日の次の日に食べるホールケーキはいつもパサついていて、少しだけ悲しい味がする。夢のような誕生日から目覚めた朝、残ったホールケーキを食べ終わることで初めて誕生日を終えられるようなそんな気がしていた。
私の誕生日や母の誕生日、誰の誕生日であっても最後にロウソクの火を消すのは弟だった。だから23歳の誕生日、最後のロウソクを吹き消した時少しだけ泣きそうになったのを覚えている。最後のロウソクを消せたのが嬉しかったのか、ロウソクを吹き消す弟がいなかったからかわからないが、電気をつけに行ってくれている間に小さい涙を袖口で隠した。いい意味でも、悪い意味でも素直すぎる弟が嫌いだ。何歳をとっても子どものまま変わらない弟が嫌いだ。悪意がないからといって許される弟が嫌いだ。結局、最後に愛を勝ち取るのは弟だった。甘えたい時に、甘える子どもが結局愛されるのだった。
小さい頃はよく母親が夜中に消えた。普段、愛を勝ち取る弟もこの時ばりは泣きじゃくる。ある日そんな弟を私が抱きしめると突き飛ばされ、その時初めて私は母親にも姉にもなれないことを悟り全てどうでもよくなった私は弟に平手打ちをお見舞いしてやった。姉にも母親にもなれないのなら何でもなれた。ぎゃんぎゃん泣く弟をほったらかして私はせっせとベランダに布団を持って行きいつものようにそこで母を待っていた。それはまるで赤子が泣き出すとあやしにくる母親のように、エンジン音が聞こえたらいつでも迎えに行けるようにする幼い私は一生母にも姉にもなれないと今思うと少し悲しい。布団に入って星を眺めていると頬を赤くした弟が、さっきの大泣きが嘘みたいにヘラヘラ笑って私の布団へ入り込んでくる。ぎゅうぎゅうの布団の中で「キャンプみたいやろ?」と言ってみるものの弟はその言葉の意味も分からない。この星の美しさも、なぜ私がここで寝ているかも分からない。わたしたちは同じ血が流れているはずなのに、なにひとつ分かり合えることはなかった。それは何年月日が経とうとそうだった。私たちは同じ血が流れた他人同士、顔以外何も似ていなかった。弟の残酷なほど真っ直ぐな素直さは美しく時に苦しい。君がアニーなら、私がギルバート。太陽のような強い光でみんなを笑顔にするのなら、月のような優しい光でみんなを包み込むよ。分かり合えることはなくとも、今は寂しくない。半年ぶりの再会に開口一番「いつ帰るの?」と言ってくる18歳になった弟。なんて真っ直ぐなんだろう。そんな弟に私は「帰らない」と意地悪で1番嫌がる言葉を言ってみる。そんな意地悪ばかりする姉はなんだかんだ1番好かれていない。それでも、誰よりも君のことを想っているよ。年老いて、私たちの親が死んだ時はベッキーと3人で旅に出よう。今まで過ごせなかった日々を分かり合えなかった日々を取り戻そう。君がアニーで、私がギルバード。飛び出せ、アニー!3人でなにかでっかいことしてやろうぜ!今はなんだかそんな気分だよ。
HappyBirthday Dear Brother