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まだ言う、アンメット
※お前まだそこにいんのか感は予めご了承ください。
いや~!最高のドラマでしたね、アンメット。めちゃくちゃドラマウォッチャーという訳ではないですが、間違いなく歴代一位で夢中になりました。
リアタイして、次回が来るまでにおかわりして、最終回まで行ってから全部通してもう一回。3周してもまだなお心が震えっぱなし。
1周目はストーリーを追って感動して、
2周目は細かな伏線や俳優の演技に感動して、
3周目はカメラワークや演出に感動する。
見るほどに完成度の高さに惚れ惚れするし、そこから俳優含むチーム全員の「今までにないドラマを作る」という意気込み、気概、ここにかける想いが透けて見えてくる。
それが私にとってアンメットが特別な理由なんだけど、ギャラクシー賞の受賞理由にも同じようなことが書いてましたね。選考者、分かってるゥ~!!
杉咲花が素晴らしいよ
アンメットを見ようと思ったきっかけは、主演の2人。
杉咲花は「夜行観覧車」で、若葉竜也は「愛がなんだ」でそれぞれにすげ~と思ってて、
杉咲花は「夜行観覧車」以降見たい作品と縁がなく、再び興味をもったのは今年の2月に放送された対談番組「SWITCHインタビュー 杉咲花×角銅真実」で。
角銅真実が喋ってる!と思って見始めたら、どうやら角銅真実を対談相手に指名したのが杉咲花だったそう。
その回は杉咲花がインタビュアーで(インタビュアーとインタビュイーを交代する2回完結形式の番組)、丁寧に慎重に人の話を聞き出す所作と真摯な声、メモとっていいですか?と断って、書き書きうんうんしながら話を聞く姿に、めちゃくちゃ好きになってしまって。
この感じ、アンメット見てた人なら分かると思うんですがもうミヤビのまんま。ミヤビがそのまま杉咲花の地に近いのか、この時には撮影が始まってて杉咲花がミヤビに同化してたのか。
次週の角銅真実から杉咲花にインタビューする回も録画消せないぐらいめちゃくちゃ良かったので(質問内容がとんでもなく角銅真実節)、奇跡的に再放送を見つけた人はご覧ください。
ここで文字起こしちょっと読めた
https://www.nhk.jp/p/switch-int/ts/K7Y4X59JG7/blog/bl/peZjvLyGze/bp/p3Yw1RBjRe/
アンメットにハマってから杉咲花の色々なインタビューを読んだけど、脚本はもちろん、宣伝の表現、スタッフの労働環境なども気にかけてて、視野が広くて全方向に真摯で、この人に救われる人はたくさんいるだろうな。周りの人も、この人のためなら何でもしたくなるだろうなと思った。
書いてて思ったけど、この感じもミヤビそのままですね。
若葉竜也を信じてるよ
若葉竜也は「愛がなんだ」以降長らく見てなかったけど、Twitterで「若葉竜也が地上波ドラマに初降臨」ってのを見かけたのと、杉咲花がもう既にめちゃくちゃ気になってたので、これは「アンメット」見るっきゃない!と。
医療ドラマは苦手だったけど、若葉竜也と井浦新が出るならきっと良い作品だよねとも。
後にインタビューを色々読んで分かったけど、若葉竜也が「やりたい作品以外は受けない」「当たり前に完璧を目指す」って感じなので、勝手に寄せていた信頼は間違ってなかったみたいす。今後も若葉竜也が出てたらきっと間違いないね。
若葉竜也のインタビュー
https://realsound.jp/movie/2024/05/post-1673575.html
ちなみにこのインタビュー、若葉竜也と杉咲花カップル全力応援団にとっては手を叩いて涙する内容になってます。関係が良すぎる。
1話目からハマった訳ではなく(丁寧って難しい)
アンメットを見てる人と話して大体共通するのが「一話目は普通」。そこで見るのやめた友達もいたぐらい(後に説得して続きを見てもらう)。
私も1話目は「丁寧に作られてるな〜」とは思ったけど、特別とは思わなかったし、ミヤビがノートの記憶を辿る時の白い世界も「かっこいいけど狙いすぎ?」と思ったり。
回を重ねるうちに「これはこの表現しか無いですよね!はい!」ってなりましたけれども。白飛びしそうなぐらい明るいのも、終盤の記憶がもたなくなって暗闇になるまでの伏線だったんだなって、3周回って賢くなった私には分かります。え、そうですよね?
1話目からハマらなかったの何でだろ?と思いつつ見返してみると、ミヤビの特殊な状況を、なるべく説明的じゃなく説明するのに時間が必要だったんだなと。
さらに登場人物紹介、1話で完結させなきゃいけない患者のドラマ、ミヤビの「私はまだ医者なのだろうか」の葛藤と、1話で語らないといけないことが多く、主人公軸のドラマがあまり進まない。
1話目だけではアンメットの超醍醐味である丘陵セントラルや関東医大の人間関係、ミヤビの記憶障害の理由をめぐるサスペンスがまだ見えないから、はよ!次!とはならない。
三瓶先生のヴィジュアルショック(後に三瓶沼と語られる)が無かったら、私もここで離脱してたかも。
丁寧だからこそスタートダッシュが遅くて、でも1話目の丁寧さが後半に向けて響いてくる。超大事。ドラマの人気作品作るのどんだけ大変やねん。
でもまあこれだけ話題になってたから途中からでも見たかな。見逃し配信のある世界、有難う。
2話目からもう特別(ガッツを感じる長回し)
「あ、これは特別、見続けた方がいい」と思ったのは、2話目の左半身無視の障害になったサッカー男子高校生の回で、夜の高架下で男の子とミヤビがサッカーの練習をするシーン。
会話はなくひたすらボールを蹴り合ってるだけだけど、言語化できない感情を交換してるのが見えてきて、これはすごかった。忘れないと思う。
顔に付いた泥が乾いていく様が生々しくて、長回しでしか伝えられないことがあるな!と思ってたら、放送後に演出のYuki Saitoさんがこんなことを。
杉咲花座長の提言もあり、高架下でのパス交換〜亮介の涙まで、2カメ30分長回しの1本勝負で撮りました。まるでドキュメンタリーのように、その息遣いや泥の汚れ、2人の心情をリアルに伝えたかったからです。そこに向かってチームが一つとなり、撮れた時のクルーの顔々、一生忘れません。#アンメット pic.twitter.com/dKQwSBZ21b
— Yuki Saito (@Yuki_Saito) April 23, 2024
座長…!!
サッカー少年役の2人の役者は若葉竜也の「若い役者にチャンスを」の提言でオーディションで決まったそう。制作にめちゃくちゃ口出す主演2人、最高でおま。
9話、11話も長回しがあったけど、長回しこそ三脚使わずカメラ手持ちでやってはりますね…これ長回し界では普通なんですか…。
微妙な揺れからカメラマンの呼吸と緊張と「瞬間を撮り逃さない」気持ちの強さが伝わってきて、リアタイ時はもちろん、2周目でも3周目でも息を呑んで見てしまう。
ちなみに最終話終盤でXでトレンド入りした例のグミですが、2話目で伏線ありましたね。三平先生とグミの話をして、ミヤビが何かを思い出しそうな感じで静止してる時間がありました。
登場人物みんな好きになっちゃった(最高のチームって最高)
クランクアップのコメントで杉咲花が「すべての役にファンが付いてほしい」てあったけど、まんまと全ての役のファンになった…なっちまったな…
今まで吉瀬美智子で心が動くことがなかったけど、津幡師長、素晴らしかったです…。
トラウマを抱えて鬼の安全室長=監視役になってしまった津幡師長が、ミヤビとの会話から心がほぐれはじめて、ミヤビとともに壁を突破する3話目。素晴らしかった。
オペ室の壁も物理の体当たりで突破してて「どういう理屈で!?」とはなったけど。
信頼することから信頼されることが始まるし、信頼関係があれば一人では越えられなかった壁も越えられる。なんかも〜、明日も仕事がんばろ!って思った。
最終回が終わってから改めて見ると、1~2話の津幡師長がミヤビを見る目が「監視」から「心配」に見え方が変わってきて。4話目以降は「支え」に。
つばちゃん、あなた安全室長にぴったりよ!みんなを信頼できるようになって良かったね!
あとね、綾野先生ですわ。みんなで一緒に沼にはまって楽しかったよね。
丘陵セントラルでカテーテル手術をした後にミヤビに缶コーヒーをもらうシーン。
見た人みんな集合〜!あの岡山天音の演技、マジで…マジで!あれすごくない?終わった後感情が爆発して頭とお腹痛くならなかった?
ここは若葉竜也も印象的なシーンの一つに上げてましたね。わかる。
岡山天音は幅の広い俳優さんとしか思ってなかったけど、3枚目のイメージがあったからあんな天才ヘラヘラクソイケメン外科医役が似合うなんてよ〜聞いてないよ〜
千葉雄大も、この作品で見る目がガラッと変わった俳優の一人。
実年齢は35歳らしいけど、CMで見るバーチー「35に見えな〜い♡」から、アンメット千葉雄大「(頼り甲斐ありすぎて)35に見えない」に。
印象が違いすぎて1話目は「千葉雄大に似た遅咲き叩き上げ俳優」かと思った。
星前先生の過去の話でちょっと噛んでて、それがめちゃくちゃ心に残ってる。
ドラマでは特に、ノイズは有無を言わさず除かれることも多いと思うんですが、ノイズにも良し悪しがあって、このシーンはノイズ(噛み)があるから完璧を超えたんだと思う。リアリティじゃなくリアルが混じった瞬間。
思考停止せず、作り手が受け手を信じて作り続けてるのがよく分かるし、アンメットは役者の魅力を取りこぼさず伝えてる感じもいいんだよな。
成増先生の野呂佳代も良かった〜!
ブラッシュアップライフといい、野呂佳代には野呂佳代にしか座れない席がありますね。
成増先生がガトーショコラを一つだけ買って帰るシーンがめちゃくちゃ好きで、アンメットの好きなシーンBEST5に間違いなく入るし、今後野呂佳代の出る作品を見ても永遠に「野呂佳代マイベスト」であり続けるであろう…。
何も考えなくても普通に良い日常の切り取りなんだけど、ちょっとだけ「?」が残って、のちにTwitterの考察民のおかげで理由が分かってぶわわ〜と鳥肌が立った。
前後のシーンを繋げれば意味が出てくる、まさに縫い目…まさに上野大樹…。
「見る力」を信じて作る
アンメットは主演2人も台本の打ち合わせから入って、説明的ゆえに不自然になる台詞を極力排除しているとのこと。
成増先生のシーン一つをとっても、テレビの向こうにいる人の「見る力」を信じて説明してないのが分かるし、説明がなくてもシーンの前後を知っていれば自分で補える。この「自分で補う」感じこそが、ドラマの中に入っていく感覚なんだと思う。
放送後15分ぐらい待つとTwitterに #アンメット で感想や考察がいっぱい上がってきて、知らない誰かのつぶやきを見てるだけで一緒に盛り上がってるみたいで楽しいし、気付かなかった布石をみんなで補い合って、作品を多面的に見れるようになっていく感じも良かった。
説明しすぎると余地が無くなって、見てる時は楽しめても心には残らない。
説明を減らして余地が増えると、自分で記憶を遡ったり、あっちのエピソードとこっちのエピソードを繋ぐ作業が自然と発生するし、「?」が残るとTwitterで他の人の感想覗いたり、お風呂入ったり洗い物してる時も考えたりする。
その作品と過ごす時間が単純に長くなって、自分の生活と紐づいて、記憶に残る作品になる。私は太極拳教室から「帰ってご飯食べたらアンメット!」と思いながらチャリを漕いでたので、10年後に「縫い目」を聞いたら自動的に太極拳を思い出すと思います。
なんだかボロクソに言われることも多い日本のドラマ界だけど、キラッと輝く作品も確かにあって、これぐらいの熱量と丁寧さがある作品が増えれば絶対業界ごと盛り上がるのに。
好きなドラマがあるとそのクールの人生が煌めくし、いろんな人との共通言語が増えるし、面白いドラマが増えると社会全体が活気づくと思うんだな。言う割に人気作品を悉く見逃してますが…。
いや〜いいドラマだったよな〜と思ってインタビューを見漁ってたら、私が書いたことの答え合わせみたいな記事がありました。
https://realsound.jp/movie/2024/06/post-1699340.html
若葉竜也のクランクアップで、車で2時間かかるロケ地にサプライズで岡山天音が駆けつけて花を渡した後に若葉竜也が言った「この景色は忘れないと思います」
と、
5話目のミヤビが術者として手術を終えた後に、チームのみんなを見て言った「忘れたくないなあ」
この2つ、同じじゃねえの…。
大勢の人が時間をかけて心血注いで作った作品は、やっぱり何かが宿らざるをえなくて、作品と現実の垣根が曖昧になっていくんだろうなと思います。
そういう、作品が煌めく瞬間に触れられたのは、終わって2カ月経ってもまだ新鮮に嬉しいし、素敵な体験をありがとうとも思う。
2カ月経ってこのテンションでこれ書けてんの…?って自分でもびっくりですけど。
記憶障害について、本人や周りの苦労や寂しさは想像を絶するんだけど、「記憶だけじゃない。残るものはある。」を感覚的でなく医学的にも教えてくれて、今後何かあった時に支えになりそうです。ありがとう。アンメット。
迷ってたけどBlu-ray買おっと。何で迷ってたかっていうと、Blu-rayの再生機器が無いからなんですけど…え、買ってどうする気…?
さあ、ドラマのアンメットとは一旦お別れができた。漫画の「アンメット」読みます。
追記:ラストシーンのこと
あの至高のラストシーンに触れてないことに気付いたので慌てて追記。
6月に終わってもう3ヶ月近く経つのにしょっちゅう思い出すアンメット。
そのシーンは色々だけど、ラストシーンは思い出す度に、何というかもう果てしない気分になる。こんなラスト今後生まれるの。
「はい」
だけで全部分かるし、描かれてない未来も見えるような。
受け手の想像力と一緒に作ってきたドラマの、これまでの結晶のような小さくて美しくて鮮やかなラストシーンでした。
大団円ではなく、シュッて消えてしまう寂しさもあって、別れを惜しむ間がなく終わった瞬間「えっ」って小さな声出た。
Yuki Saito監督がTwitterで続編を作りたいと呟いてて、
頼む!見せてくれ〜!!!
という強い気持ちと、
無粋だ!やめてくれ〜!!!
という強い気持ちがタックルし合ってる。あったら絶対見るけどな。
のめり込む頭の片隅で、終わりに近付くうちに愛せる結末かどうかを心配してましたが、笑止!
漫画、小説、映画、全作品に於いて個人的ベストラストかもしれないですわこれ。
いや、「それでも町は廻っている」と張るな〜!あれもいんだよな。
何年か後のある程度忘れた頃に、また見返すのがとんでもなく楽しみです。
おかげさまで生きるの楽しいや!ありがとう、アンメット。