良かった新譜たち(2021.05)
良かったとおもった新譜をまとめてみました。
女性のSSWに絞ってます。
軽く感想も交えて紹介してみようと思うので、気になったらぜひ聞いてみてください。
・Adrianne Lenker/Songs
グラミーにもノミネートされたバンドBig Thiefの紅一点フロントマン、Adrianne Lenkerの2020年10月発表のソロ作。
ギターとシェイカーと歌という構成のシンプルな弾き語り作品です。
スロウコアの一面が強かったバンドでは聞けなかったような、シンプルにメロディアスで、繊細ながら伸びやかな歌声がとてもグッときます。
音響は正に宅録といった、生々しく煌めいているようなこもっているような音で、今の梅雨の時期にぴったりな1枚だと思います。
あらためて、バンドでできない表現をするというソロ作品というものの面白さ、豊かさを感じた1枚です。
同時発表の「Instrumental」も素晴らしかった。
・Gia Margaret / Mia Gargaret
シカゴ出身、Gia Margaretの2020年7月発表のセカンドアルバム。
シンガーソングライターとして紹介していますが、今作で歌っているのは最後の曲のみで、他10曲は(スポークンワードのサンプリングは入りますが、)インストゥルメンタルトラック。
声が出せなくなる病気にかかってしまい、その時期に作られた曲たちとのことです。
ローファイな質感のあるアンビエントライクな作品で、シンセの一音一音が陽の光を見るような眩さを感じさせてくれます。
音に救いを求めているような感傷的な響きが、その思いが伝わってくるような気がして、不謹慎ながら耽るような気持ちになります(Prefab SproutのPaddy Mcaloonのソロ作も同じ様な感覚を受けます)。
・Karima Walker / Waking the Dreaming Body
アリゾナ出身のKarima Walkerの2021年2月発表のセカンドアルバム。
こちらもアンビエントな音作りの1枚で、持続音と沈み込むようなギターと歌声も合わさり包み込まれるような感触です。
アンビエントとしても、フォークとしても完全に振りきれた曲が並んでいて、その現実性と非現実性の狭間に落とされるような気持ちになり、そういった白昼夢的な世界観が大好きな自分にはドンピシャでした。
・Lael Neale / Acquainted with Night
LAを拠点に活動するLael Nealeの2021年2月リリース2作目。
4トラックの録音が無茶苦茶ローファイで、60年代のカントリーシンガーの作品をアナログで聞いた時の感覚と全く遜色が無いレベルです。
ソングライティングもその年代のアシッドな空気が漂いつつ、神々しさを感じるメロディラインで、時代錯誤的な事を勘定しなくともとても素晴らしいと感じさせてくれます。
レーベルがかつてグランジの名門だったSub popというのがとても驚きで、そういう点でもまた新しい流れを感じさせてくれる1枚です。
・Madeline Kenney / Sucker's Lunch
オークランド出身のMadeline Kenneyの2020年7月リリースの3作目。
4、5年程前から隆盛しているUSのインディ系シンガーソングライター(Julien Baker、Snail Mail、Jay Somなどなど)、その数多いる渦中の1人だと思います。
グニャっとした空間系を多用したギターが、80年代後半の4ADを彷彿として凄く好みでした。
ハッとするような展開が多く、「Sucker」のキラーチューン然した立ち位置も凄く良くて、アルバム1枚通して引き込まれた1枚でした。
・Renee Reed / Renee Reed
ルイジアナ州を拠点に活動するRenee Reedの2021年3月リリース、デビュー作。
一聴して好きな人ならガッツポーズが出るだろうアシッドなギターの調べと歌を中心に、60年代のプリミティブなフォークの音を現代に蘇らせています。
ちょっとロリータチックな気だるく甘い歌声の色気と、楽器の醸し出す酒場の角のような情景がマッチしていて凄く良かったです。
前述のKarima Walkerと同じくレーベルはKeeled Scales。他のアーティストも掘ってみたいと思います。
以上、6作品を紹介しました。
ご時世的にやはり宅録的な、1人で作り上げられる内省的な作品というのが多いのかなと思い、そういった音楽が好きな自分のような人間には、また不謹慎なのですが、現代は豊作の時代なのかもしれないと感じました。
また素晴らしい作品に出会えることが待ち遠しいです。