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チェロとの出会いから現在まで

チェロとの出会い

僕はアマチュアチェリストだ。
仕事の傍ら趣味でチェロを演奏している。
チェロをはじめたのは18歳。
大学のサークルで管弦楽団に所属していた。
大学は1年留年したので5年間弾いた。
3年の時には代表もやった。

でも大学卒業後は朝から晩まで仕事に明け暮れ、気づけばチェロを全くさわらなくない日々が続いた。
ホコリをかぶったチェロを見て、何度も「売ってしまおうかな。」と考えたが、なぜか売れずにいた。

チェロをやめようと思った日

弾かなくなってから10年くらいたったある日、久しぶりにチェロを弾きたくなって、ホコリをかぶったケースから楽器を出し、弓を張った。
そして、椅子に座って楽器を構え、深呼吸をしてG線に弓をあてた。
右手の重みをゆっくりと弦に乗せていった。久しぶりのチェロの音に感動した。
音階でもはじめてみようかと思った刹那、「ガタン!」という音がして、弓が弦から滑り落ちた。
何が起こったのかと思って弓を見ると、毛がだらりと垂れ下がっていた。
「劣化して切れてしまったのかな。毛替えしなきゃな。」と思ってよく見ると、弓先が折れていた。
「もう弾くなということかな。」と落ち込んだ。
それでも楽器屋さんに持っていってみてもらうことにした。楽器屋さんは地元にはなく、遠路はるばる車で3時間かけて持って行った。
楽器屋さんには「なおすのは難しいですね。これなら新しいのを買った方がよいですよ」
と言われた。
そのとき、チェロを弾く予定はなかったし、楽器を手放すタイミングかとも思ったけど、「一番安い弓でお願いします。」と伝え、弓を購入した。
ついでに楽器の調整もお願いし、弦もすべて張り替えてもらった。総額6万円。弾く予定もないのに。

仕事を休職することになった

それからも楽器をさわることはなく、月日が流れていった。
途中、魂柱が落ちてしまったことがあったが、また修理をお願いしてなおしてもらった。

それからまた何年か経ったある年。
僕は職場の上司と折り合いがつかなくなり、会社を休職することになった。
休職したことで、時間は有り余るほどできた。
でも、なぜかチェロを弾く気にはならず、休職中一度も触ることはなかった。
仕事が忙しく、時間ができたら弾きたいな、と思っていたのに、いざ時間ができても、自分でも不思議なくらい、弾きたいとは思えなかった。
将来に対する不安が大きく、心の余裕がまったくなかったからかも知れない。

15年後、再びチェロを弾くことを決めた

長い間悩んだ末、僕は退職を決め、新たな職場へと転職することにした。
新しい職場では、今までよりプライベートに割ける時間が圧倒的に多くなった。最初は覚えることも多く、転職のストレスもあったが、徐々に落ち着いてきた。
すると自然に「もう一回チェロを弾こう。」と思えた。
そして、地元のアマチュアサークルを探し出し、見学に行くことにした。
見学を終えた僕は、迷うことなく参加を決めた。自分でも驚くくらいの行動力だった。

かれこれ15年くらいチェロを触ってなかったので弾けるかどうか不安だったが、何回か弾いてみると、感覚はすぐに戻った。
体は覚えているものだと我ながら感心した。
そして、久しぶりにチェロを弾いたとき「ああ、この楽器は僕を待っててくれたんだな。」とロマンチックなことを思ってしまった。
15年もの間弾くこともなく、僕の生活からはチェロが消え去っていた。
それでも売ることなく、弾くあてもないのに僕は修理を重ねてきた。
それは、この時のためだったのかと、壊れずにいてくれたチェロと、楽器を売らなかった過去の僕に心から感謝した。
だから、今の楽器にはとてつもない愛情が芽生えてしまった。
これから先、新しい楽器を買うこともあるだろうが、この楽器は絶対に手放さない。壊れてもとことん修理する。

そして現在

今僕は、いくつかアマチュアサークルに所属していて、たまに地元で演奏会に出たりしている。
他にも個人的にいろいろな人に演奏を聴いてもらったりしている。
演奏会に出るようになったことで、それなりに技術を磨かなければという気にもなり、大学時代に使っていたボロボロの教本「ウェルナー」を引っ張り出し、練習をはじめた。
練習をはじめてみると、大学時代の僕が「ここは音程はずしやすい」と書いてあるところで音程を外す。「15年前から進歩していないな。」なんて思いながら、大学時代の自分との対話もおもしろい。

大学時代と今で大きく違っているのが、インターネットでたくさんの知識を得られることだ。大学時代は一つだけチェロの奏法のサイトがあったくらいだった。今では溢れるほど情報が入手できる。
特にYouTubeには演奏動画や、レッスン動画がたくさんある。それらを片っ端から見た。チェロの関連書籍も買いまくった。
そうやって自分なりに試行錯誤する中で、僕は、アマチュアにはアマチュアに適した、レイトスターターにはレイトスターターに適した考え方や練習方法があると気づいた。

大学時代は「どうせアマチュアだから」と中途半端な姿勢だった練習も、今では確信を持って取り組めている。
どんどん本気になった僕は、いつかソロコンサートを開けるくらいになりたいと意気込み、毎日練習するようになった。
仕事が遅くなって弾けないときのためにサイレントチェロも買い、それも弾けない時は楽譜を読み込む。
朝から晩までチェロ。
かつて生活からチェロが消えていた日がウソのようだ。

出演した演奏会では「チェロの音よかったです」など感想をいただくことも増え、演奏依頼もいくつかいただけた。

年齢的に後何年チェロが弾けるかわからないし、子供の頃からの経験者には到底かなわないけど、僕なりに弾ける限りは続けたいし、身近な人に、一人でも多くチェロのよさを伝えられたらいいなと思っている。

とりあえず思いつくままに書いてみた。
noteって最初はみんなこんな感じなのかな。
うまくは書けないけど、書かないとはじまらないし。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。良かったら次回の記事も読んでいただけたら嬉しいです。

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