なぜ予想屋に乗っても稼げないのか?
賢明なる元ホテフォロワーの皆様におかれましては、表題のような疑問を抱く場面が多いことと存じます。私も同感です。
予想屋のほとんどは負けている。これは真理でしょう。勝っているならわざわざ予想を売る必要がないからです。中には「思考を開示すること」そのものに意義を見出している予想屋もいて、やや金儲けを度外視して活動している側面もありますが、それは極少数だと推測されます。
これで終わらせてしまってはつまらないので、ここではそんな当たり前の断罪から一歩引いて、予想屋は「予想屋であるがゆえに」下手なのである、そんな考察をしたいと思います。
この考察のきっかけとなったのは、投資界隈のとあるツイートです。本人は心を病んでしまい近々アカウントを消すそうなので、プライバシー保護の観点からも概要だけ記します。
胸が苦しくなる告白です。家庭を持っている人はより身につまされることでしょう。
見放されることへの恐怖心や、見下されることへの羞恥心。誰かが自分を見ているという状況は、こうしたネガティブな感情を生み出しやすいと言えます。家庭を持っている人と、一人で暮らしている人なら、後者の方が損切りに踏み出しやすいのではないでしょうか。
投資と比べて、ギャンブルは気楽なものです。ギャンブルの収支で愛する人を養うことはないでしょう(ほんのひと握りの例外はいます)。自分の財布は自分で責任をとればいいので、損をしたからといって「恐怖」や「羞恥」を感じる必要はありません。
しかし、予想屋は違います。見られているからです。
一般的なベッターの場合、ギャンブルに向かう動機の大半は「金銭欲」です。的中すればお金が増えて、外せばお金が減る。それが刺激的だからクセになります。
一方で予想屋は、売上というインセンティブはあるものの、それとは別にもうひとつ厄介な欲求に支配されています。
マズローが提唱した欲求5段階説では、低次の欲求から高次の欲求へと昇っていく人間の姿が描かれています。食欲や性欲などの基本的な欲求は1段階目、次に経済的安定などの欲求があり、誰かに愛されたいという欲求が3段階目に、他者から尊敬されたいという欲求が4段階目に位置付けられています。最上段は「自己実現」です。
ギャンブルで金を得たいという欲求は2段目以内におさまります。基本的で、我々にとってはお馴染みの欲求です。しかし、予想屋はどうでしょうか。それだけではなさそうです。結論から言えば、彼らは承認欲求の奴隷なのです。
承認欲求そのものは、生きていく上でとても大切です。ただ、意思決定の邪魔になることも多いと言われています。上で見た例のように、家族のことさえ考えなければ損切りできたかもしれない人もいます。高次の欲求を適切に扱うには、洗練されたマインドセットが求められます。
フォロワーに凄いと思われたいから無理やり穴を狙ったり、けれど外して見下されたくないからいたずらに点数を広げたり、取り返さないと見放されるから手あたり次第予想を出す。
こんな予想屋が、正しい意思決定(=稼げる予想)をしていると言えるでしょうか。
彼らはすぐに謝ります。すぐに懸賞をばら撒くし、すぐに「明日こそは」と息を巻きます。すべては承認欲求から来る言動です。
収支とそれに至る思考にだけ気を配っていればいいのに、そうでないところに振り回されすぎている。これが予想屋という生き物の正体なのです。言うなれば、予想ファクターに「オーディエンス」を加えてしまっているようなものです。誰かに認められるかどうかなんて、収支との因果関係はありません。ボート2連率やオカルトデータにこだわって予想している人と大差ないのです。余計なファクターが予想を歪めるのは自明です。
収支だけを追い求めていても難しいのだから、予想のたびに他のことに気を取られていては勝てるはずがありません。よって、彼らは予想屋という立場であるがゆえに、必然的に負けていきます。
ここで、予想屋選別の一次予選通過基準を設けることができます。もしどうしても事情があって「いい予想屋」を探しているのであれば、このあたりをポイントにしてみたらいかがでしょうか。アウト基準をあげておきます。
ヒントはそこらじゅうに転がっています。
しかし、それよりもあなた自身が、彼ら予想屋よりも「シンプルな動機でギャンブルと向き合っている」という自信を持つべきです。
彼らからは知識だけ吸い取ればいいのです。予想屋なんて、およそギャンブルには向いていないのだから。
健闘を祈っております。
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■Reference
※意思決定理論についての平易な参考書。
※予想屋とは関係ありませんが、ここ最近投資界隈を賑わせたダブルスコープ株の事案は「仕手株」なんじゃないかと言われています。界隈が騒いでいる流れを追うのであれば、この良記事に目を通してみてください。
※よくまとまっています。