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第76回フランクフルト・ブックフェア参加レポ
こんにちは、編集部の須鼻です。2024年10月16日から3日間、ドイツのフランクフルトで開催されたフランクフルト・ブックフェアに参加してきましたので、そのレポートをお届けします!
フランクフルト・ブックフェアとは
ドイツのフランクフルトで毎年10月半ばに5日間に渡って開催される、世界最大の書籍の見本市。世界中から出展者と来場者が集まり、版権の販売交渉や書籍にまつわる商談が行われる。2024年10月16日〜20日に開催された第76回フランクフルト・ブックフェアには、4,300以上が出展し、153カ国から23 万人以上もの来場者が訪れた。
10年ぶりのフランクフルト・ブックフェア
私がはじめてフランクフルト・ブックフェアに行ったのは、新卒でBNNに入社して間もない2005年のこと。当時の社長に「30件のアポが取れたら連れて行ってあげる」といわれ、必死にメールを送りまくってアポを取り、無事社長に同行できることになりました。
30分刻みのスケジュールの中、各出版社のブースは東京ドーム約8個分もの敷地内にある各ホールに点在しています。出張が終わる頃には頭も体もヘロヘロでしたが、「世界には、こんなにもたくさんの人が本に関わる仕事をしている! 私もその一員になれたんだ!」と興奮して、ブックフェアが大好きになったことを覚えています。
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早いものでそれから20年近い月日が流れ、今回10年ぶりにフランクフルト・ブックフェアに行けることになりました。
久しぶりの参加で変わったことといえば、以前に比べると会場に使用されるホール数が少なくなり、参加者や出展者も減ったということ。しかし体感としては、どこもたくさんの人でにぎわっており、ホール数が少なくなったことで、むしろ以前よりも歩く距離が減って、体力の消耗を抑えることができてよかったと感じました。
変わらないことといえば、その場にいるほとんどの人が「本好き」なこと。会場は、世界中から集まった人たちの本への想いで熱気に包まれており、そこににいるだけで、同志たちに再会したような、自分の中の本への情熱を再確認できたような、うれしい気持ちが湧いてきます。そして、コミックやオーディオブックなど、以前よりも明らかに活気にあふれているジャンルも。
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コミックは日本だけでなく、韓国、台湾、フィンランド、フランスなどのブースでも、質の高い作品を多く見かけました。特に韓国はウェブトゥーン(縦スクロールのデジタルコミック)が盛んなこともあり、政府がしっかりとコンテンツ産業をバックアップしている感じが、韓国ブースの豪華なつくりからも感じられました。
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久々にお会いしたスウェーデン在住の翻訳者の方からは、「スウェーデンでは、オーディオブックの売上が紙の本の売上を抜いたんですよ」というびっくりするようなお話も伺い、日本でのオーディオブックの未来に思いを巡らせたりもしました。
「BNN知ってるよ!」といわれることが多くなった
これまでと違ったよい変化もありました。はじめて会う担当者にも「BNN知ってるよ」といわれることが多くなったんです! BNNが海外のブックフェアに行きはじめて約20年。一時は自社ブースを持って、積極的に版権販売をおこなっていたこともあり、BNNが海外との交流を持ち続けてきた成果が、じわじわとあらわれてきているのを感じます。
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今回は、かつてのようなハードスケジュールはやめて1日6件程度のアポに。普段はメールのやりとりのみの担当者とじっくり近況報告をしたり、これから出る本を説明してもらったりと、大変有意義な時を過ごしました。
コロナ禍でなかなか海外のブックフェアに行けなかった数年を経たからこそ、実際に顔を突き合わせて話ができることのありがたさや、作り手の熱量含めて、その場の空気感から伝わってくることの多さを、しみじみと感じる3日間でした。
今回BNNがアポをとった相手は、主にアメリカ、イギリス、スペイン、ドイツ、スイスなどのデザイン書を専門に扱う出版社です。ここ数年、特にアメリカやイギリスの出版社の買収や統合が加速し、人の異動も多くなり、その結果、以前よりもデザイン書の刊行点数が減ったように感じることが多くなっていました。年間を通じて多くの翻訳書を出しているBNNとしては、非常に危機的な状況です。
しかし、そんな中でも「デザイン×ビジネス」「デザイン×文化人類学」「デザイン×社会」といった、以前よりもより広い視野と深い思考力を培うことができるデザイン書が増えているのを感じました。BNNとしては、キラリと光る海外の良書を見つけて、いち早く日本語にして、読者のみなさまにお届けできるよう、 引き続き目利き力を高めていきたいと思います。
ブックフェアのランチ事情
最後に、きっとみなさんも気になるであろう、ブックフェアのランチ事情をご報告します! ブックフェアの会場には、各ホールの入り口やホール内にカフェやレストランが点在していて、好きな時に飲食ができるようになっています。ドイツ名物のプレッツェル(結び目の形のパン)やケーキ、アイスクリームなんかも充実しています。
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ランチ時に一番混雑するのが、なんといっても中庭に出店される数々のフードトラック。ドイツはもちろんフランス、ベトナムなど、アジア各国の食べ物の屋台が出て、あちこちからおいしそうなにおいが! 中東料理の屋台では、ファラフェル(ひよこ豆のコロッケ)が入ったピタパン・ロールを求めて、長蛇の列ができていました。
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そんな中、私が最初のランチに決めたのは、ドイツ名物「カリーヴルスト」。おいしそうにビールを飲む人たちをうらやましく思いつつ、肌寒い空の下、あったかいソーセージとポテトを堪能して、午後へのエネルギーをチャージしたのでした。
まとめ
10年ぶりに訪問したフランクフルト・ブックフェアでしたが、出展者、参加者ともに以前と変わらず本への熱量は高く、とても活気がありました。BNNが専門とするデザイン書のジャンルでは、社会や歴史、文化人類学などとも接続するような、より広い視野が開かれ、思考が刺激される良書との出会いが多くありました。今後、今回のブックフェアで出会った本の日本語版を、どしどし出版してまいりますので、どうぞ楽しみにお待ちくださいね!