【ショートショート】話に花が咲く

その町では、住民同士が道端で挨拶や会話を交わすたびに、
色とりどりの花が足元に咲いた。

花の種類は会話の内容によって変わる。
楽しい笑い声が響けば鮮やかな黄色の花が、
深い共感が生まれれば、柔らかな青い花が咲く。

ウィットにとんだ話をすると、
すこし変わった形の花が咲いた。

季節ごとに町の道端は異なる花々や
見たこともないような変わった形の花で彩られ、
その美しさで訪れた者を魅了した。

明るい話題だけでなく、陰口にも花が咲く。

陰口が長くなればなるほど、
咲いた花からは鼻をつくようなにおいが漂い始め、
灰色へと変化していく。

物静かな人が少し話すと、
ぽつりぽつりと花が咲く。

数は少ないが、
その場をほんのりと照らすようなかわいらしい花だ。

町は今日も花であふれている。
楽しい話、励まし合う声、そして新たな出会い。

それぞれが織りなす会話が、次々と新しい花を咲かせている。

（おわり）

ショートショート④

読んでくださりありがとうございました！