
ある絵本の話
12月25日、神田の古本街をぶらぶらしました。たまたま立ち寄った書店である絵本を見つけました。『サンタクロースっているんでしょうか?/フランシス・チャーチ著、東逸子イラスト、中村妙子翻訳(偕成社)』。クリスマスだったこともあり、店頭に関連する本が無造作に置かれていました。興味を惹かれページをめくってみました。1897年、8歳の女の子、バージニアが父親に「サンタクロースって本当にいるの?」と尋ねます。友達に「サンタなんていない」と言われたのです。この質問に父親は困り、NYの「サン新聞に問い合わせてみたら?」と答えを濁します。そして質問に答えたのが当新聞の解説委員フランシス・チャーチでした。チャーチは社説に掲載するカタチで女の子の質問に答えたのです。
「サンタクロースがいないですって?とんでもない。目に見えないからと言っていないことの証明にはならなないのです。人間のまごころや気遣いも目に見えないけれど、それらは確かに存在するのです」「バージニア、そう、サンタクロースはいますよ。この世の中に愛や、おもいやりや、いたわりがあるのと同じように、サンタクロースはたしかにいるのです。愛や、おもいやりや、いたわりがたくさんあるおかげで、わたしたちの毎日がうつくしく、たのしくなっていることを、あなたも知っているでしょ」。
子供向けの絵本ですが、大人向けとしてもなかなか良い本だと思いませんか。特にいまのような世の中に生きる僕たちには、こころに響くものがあると思います。それをシェアしたくて僕もここに書いています。ニュースを見れば、暗い話や悲惨な事件で滅入ることも多い一年だったけれど、この本のおかげで元気が出てきました。おそらくチャーチさんは難解な真実を誰にでもわかりやすく語る才能と人間社会の本質に迫る「洞察力」に優れた解説委員だったのではないかと思います。忘れかけていた普遍的な価値観を思い出させてくれるようです。