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マスク氏のツイッター買収

先週、唐突にイーロン・マスク氏によるツイッター買収騒ぎがありました。「マスク氏は4日に約9%のツイッター株を取得したと表明し、13日には残る90%超を1株あたり54ドル20セントで購入すると提案した(日経新聞4月16日)」。なぜ突然にツイッター買収なのか。マスク氏はツイッターの非公開化によってSNS上の投稿管理の透明性を高めるなどネット上の「言論の自由」を守るのが狙いだと言っているようですが、彼くらい言論の自由を奔放にやっている人が「それを守る」と言うのだから「ツイッターの私物化」を考えているのだろうと推察します。

ふとトランプ氏が2022年2月に立ち上げた「トゥルース・ソーシャル」を彷彿させました。2021年1月に起きた米連邦議事堂襲撃事件。「暴力賛美に関する規制」に触れるとしてツイッターはトランプ氏を排除。トゥルース・ソーシャルはその対抗策として彼が立ち上げたSNSです。トランプ氏もマスク氏も要するに検閲が鬱陶しいのだろう。それを「言論の自由」というもっともらしい大義名分で包んで打ち出している。以前、アート展で問題になった「表現の不自由」というのも同様。これらの「自由(不自由)」は個々人の解釈や許容範囲によって様々です。様々ゆえに公共性やガバナンスが要る。だからこそ「言論の自由」など社会的に善・正義とみなされる価値観を持ち出して敵対的買収を行うとなると、単純に危険な印象を抱きます。

ツイッターはポイズン・ピルを導入して買収を阻止するようですね。簡単に言うと新株を発行してマスク氏の持ち株比率を下げるわけです。その時、マスク氏の株価は下落する上に、もし更に多くの株を取得しようとすればコストが大幅に増えるので敵対的買収が停滞するわけです。もしツイッターの買収が失敗した場合、マスク氏のBプランというのは自前でSNSを立ち上げることかもしれませんね。しかしいまやSNSも乱立していますし、マスク氏は既に強力な社会的発信力を持っているわけで、一体目的はなんなのかと思います。