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SIMVはなぜ使われなくなってきているのか解説する

こんにちはムロです。
本noteは数年前に開催したウェビナースというイベントで配布した資料を一部改訂したものになっています。
暇な方は読んで「ほえ~~~~~」って思ってくれれば僕も「ほえ~!!」します。

では改めまして本noteは人工呼吸器のモードの一つであるSIMVがなぜ昨今使用されなくなってきているのか?を解説したものになります。
本noteを通して誰かの学びの糸口となれれば幸いです。


SIMVとはなんぞや?という解説はこちらの記事をどうぞ


※注意※
本noteは医療情報を含みますが、特定の治療及び手技を推進するものではありません。これらのnoteを参考にして起こった事象に対して一切の責任は取りかねます。また、十分に注意を払って論文の読解を行っていますが、誤訳や誤表現等ございましたらTwitterアカウント、もしくはこちらのメールアドレスに連絡をお願いします。

今現在SIMVでわかっていること

ウェビナース

今現在集まってきた文献からわかる内容としてSIMVには以下の3点が明らかになっています。(あるいはその可能性がある)
①人工呼吸器からの離脱期間を延長する可能性がある。
②(人工呼吸器の)設定呼吸回数が多いほど人工呼吸器の非同調率が上がり、少ないほど呼吸仕事量が増大する。
③諸外国と比べて日本はSIMVの使用率が高い可能性がある。

SIMVについて比較した研究は数多くありますが、今回は上記の代表的な研究を紹介していきます。あくまでざっくりと主旨を説明しているだけですので、必ず原著を確認していただくようお願いします。ほとんどはリンク先をたどれば全文読めます。

①人工呼吸器からの離脱期間を延長する可能性がある

ウェビナース (1)


 Estebanら⁽¹は人工呼吸器離脱モードとしてSIMV群(PSなし)、SBT1回/日、SBT複数回/日、PSVの4種類を比較しました。
結果はSBT1回/日群が最も早く離脱できる結果となり、その期間はSIMVの3倍、PSVの2倍早いという衝撃的な結果となりました。
 Estebanらは離脱までの期間は選択した手技(モード)による影響が大きいことについて言及しており、SIMVは人工呼吸器離脱モードとしては適さないのでは?という可能性が浮上してきたんですね。

②-1 設定呼吸回数が増えると非同調と関連する

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 Robinson⁽²らは成人の外傷例に対して人工呼吸器開始48時間以内の非同調出現について調査し、傷害、鎮静/錯乱スコア、臨床および退院後の転帰についても調査しました。
 結果として非同調が多くみられた症例はSIMVを使用していることが多く、設定換気回数が10回/min以上の症例は非同調と関連していたことを報告しています。調査対象にたまたまSIMVが多かった可能性は否定できず、この調査では非同調の有無が臨床転帰(人工呼吸器使用日数、ICUまたは入院期間、在宅退院率、死亡率)の悪化には必ずしも関連していなかったことも考慮する必要があるため、この調査結果だけではSIMV=非同調が増える!と考えるのは危険かもしれません。
しかし近年、非同調の存在は死亡率を上昇させる⁽³という報告もあるため、やはり非同調は出来る限り起こさないよう管理するというのは重要になってきます。
※死亡率が高い症例に非同調が起きやすいのか、非同調が起きるから死亡率が上がるのかはわかっていない点には注意。

②-2 設定呼吸回数が減ると調節(強制)換気下でも呼吸仕事量が増大する

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 Imsandら⁽⁴はCOPD急性増悪に対してSIMVモードを使用している患者への離脱過程において設定換気回数を減らしていく際の呼吸筋(横隔膜、胸鎖乳突筋)の筋電図、食道内圧波形、気道内圧波形を調査しました。
 結果として、調節換気(強制換気)が総分時換気量の60%以上の場合は筋電図変化上Outputの減少、つまり筋肉の運動が減っていることがわかりました。しかし設定換気回数を減らしていくとサポートされていない自発呼吸との間に差はなかったことを報告しています。
(原文の波形図を見るとちょ~わかりやすい。)
つまり、SIMVでは設定換気回数を減らしていくと調節換気の状態でも呼吸仕事量は減っていない可能性があることを示唆したのです。

③日本は諸外国と比べてSIMVの使用率が高い可能性がある

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 ここからは少し主旨を変えて世界でのSIMVの使用率を調査した結果を見てみましょう。
 Estebanら⁽⁵は北米、南米、スペイン、ポルトガルの107の集中治療室で使用された人工呼吸器離脱時のモードについて1998年と2004年の観察研究を比較して調査しました。
 結果はSIMVの使用頻度が1998年では11%に対して2004年にはなんと1.6%まで減少しています。また、我々がよくSIMVと呼称するSIMV+PSVモードに至っても26%→15%と明らかに減少しています。今回は調査の対象が上記の国だけでしたが、SIMVの使用率は年々減少していることがわかります。

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 では日本ではどうでしょうか。残念ながら日本国内では人工呼吸器離脱時のモードに関する大規模な調査研究は見当たりませんでした。
しかしJSEPTIC⁽⁶(日本集中治療教育研究会)のアンケート上でのサブグループ解析結果によると、ARDS患者に対する初期人工呼吸器モードではSIMV(VC,PC,PRVCすべて含めると)が全体の4割程度肺に問題のない患者に対しては全体の6割程度という結果になりました。
 もちろん回答者の主観が入るアンケート調査のため、前述した観察研究とは信頼度が違いますが、それでも上記に挙げた国々と比較すると日本はSIMVの使用率が高い可能性があります。なぜでしょうね?

SIMVについて本気出して考えてみた

SIMV 配布資料用のコピー

話をまとめましょう。
SIMVがA/Cやその他の換気モードに比べて臨床転帰を悪化させたりすることを直接示したデータは僕の調べた範囲ではありませんでした。
しかし、だからといって急性期の人工呼吸器モードとして離脱時のモードとしても劣り、非同調や呼吸仕事量を増加させてしまう可能性が指摘されているモードをあえて選ぶメリットはあるのでしょうか?

人工呼吸器は患者に多大なストレスと侵襲を与えます。
外せるのであれば一刻も早く外すべきです。
人工呼吸器管理は何が一番大切か、それを考えることが重要ではないかなと思っています。

さいごに

SIMV 配布資料用のコピー (1)

さんざんSIMVについての悪口(客観的なデータに基づく)を書きましたが、要は患者さんにとって一番良い選択肢とはなんだろう?ってことを言いたかったのでした。
モード選択について看護師に言われても…と考える方ももしかしたらいるかもしれません。しかし、モードを深く知ることで離脱への経過や患者の状態をより正確に把握、予想することができます。
前述しましたが、特に非同調の発見は看護師にとって非常に重要な視点であるように思います。
人工呼吸器非同調は非常に多くの不利益を患者にもたらします。その非同調を一番近くで看ている我々が早期発見、対処することでまわりまわって患者さんのアウトカムを改善させるきっかけになるかもしれません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

…以上を説明しました。
「じゃあ具体的にどうやって非同調って観察するねん!」って声が聞こえそうだったので、書きました

出来る限りわかりやすく書きました。
もしわからないことがあればTwitterでもメールでも対応します。
一緒に考えます。
それではまた。

参考文献

1.A Esteban 1, F Frutos, M J Tobin, I Alía, J F Solsona, I Valverdú, R Fernández, M A de la Cal, S Benito, R Tomás, et al.A comparison of four methods of weaning patients from mechanical ventilation. Spanish Lung Failure Collaborative Group.N Engl J Med. 1995 Feb 9;332(6):345-50. PMID:7823995
2.Bryce Rh Robinson , Thomas C Blakeman, Peter Toth, Dennis J Hanseman, Eric Mueller, Richard D Branson. Patient-ventilator asynchrony in a traumatically injured population.Respir Care
. 2013 Nov;58(11):1847-55. PMID:23513248
3.Blanch L, Villagra A, Sales B, et al. Asynchronies during mechanical ventilation are associated with mortality. Intensive Care Med. 2015 Apr;41(4):633-41. doi: 10.1007/s00134-015-3692-6. Epub 2015 Feb 19. PMID: 25693449
4.C Imsand , F Feihl, C Perret, J W Fitting.Regulation of inspiratory neuromuscular output during synchronized intermittent mechanical ventilation.Anesthesiology
. 1994 Jan;80(1):13-22.PMID:8291702
5.Esteban A, Ferguson ND, Meade MO, et al.Evolution of mechanical ventilation in response to clinical research.Am J Respir Crit Care Med 2008 Jan 15;177(2):170-7. PMID:17962636
6.JSEPTIC臨床研究委員会.簡単アンケート第20弾:人工呼吸器の設定と離脱 サブグループ解析.2012年10月実施.<http://www.jseptic.com/rinsho/pdf/questionnaire_1210.pdf> Accessed June 20, 2018.


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