世界は3つの層に分かれつつある #1-1
世界の変化
3つの世界
ウクライナとロシアの抗争、例年深刻化する気候変動など、世界は大きな変革の時を迎えている。世界では今、何が起きているのだろうか?
ウクライナとロシアの抗争の本質は、共産主義の最後の砦(とりで)の消失であり、「資本主義の終わりの始まり」を意味している。
それでは、今現れようとしている世界はどのようなものなのか。私たちは、共産主義と資本主義が対抗するのではなく、同じ1つの土地に層になって存在し両立する形になってゆくと考えている。
ある地域において、3つの層で世界線が分かれていると考えている。地下200kmから地上20mには人や自然とのつながりを大切にする「シェアリズム」の世界線があり、地上20mから200mまでは、Wi-fiが飛び交うエリアでは資本を集約・加工し再分配する「キャピタリズム」が、そこから上については、メタバースなどにより国境が存在せず世界同時多発的に事業が展開する「ヴァーチャリズム」の世界が広がっている。
これまでの500年において、人々の関心の中心はキャピタリズム(資本主義)だった。資源を集めて加工し、分配してきたが、それによって地表のあらゆる資源は使い尽くされ、環境破壊や格差の拡大などの数々の問題が起き始めている。
キャピタリズムへの反発から、地域への回帰や、WEBの世界の発展が進んだ。自然や人の繋がりの中で生きていくことで幸せと活力を感じる人々、そして、ヴァーチャルの世界で個人ごとの個性を土台として人々が直につながり交流・創造する人々が、立ち現れてきたのである。
仕事と価値は相関しないという現実
ただし、私たちはエネルギーなど多くのものを、貨幣を用いた市場によってやりとりしている。現状は、お金を使うことは避けては通れない。
また、シェアリズムの世界にのみどっぷり浸かった人たちは、閉鎖的な人間関係等に悩まされ、ヴァーチャリズムに没入する人たちは、注目を集める為の過剰なパフォーマンスに疲れ始めている。
ではいっそ、割り切ってキャピタリズムの世界に振りきって生きればいいのかというと、ここにも歪んだ現状が存在する。お金を稼ぐことは価値貢献によってではなく、所属する階層によって決まるという事実だ。年収と社会的価値は相関していないのである。
下記の図では、縦軸に社会的価値(ここでは、収入1円が生み出す社会的価値)、横軸に年収を分布させている。この図からも分かるように、見事な逆相関が見られる。たくさん稼いでいることが社会的価値につながっているとは言えず、むしろその逆なのである。
これは、金融市場と労働市場の市場規模の差が開いたことで、資産 (資本) を運用することによって得られる富は、労働によって得られる富よりも、成長が早くなっているからである。
個人としてこの矛盾に立ち向かうには、価値貢献ではなく階級や関与する業種を「あげていく」ことが求められる。起業し経営者として株式価値の向上を狙うか、少なくとも金融業界に関わっていくことになるが、この点においては、多くの読者のみなさんは試みていることだろう。
しかし、価値貢献に伴う充実感がないまま続く、絶え間のない競争は、人の心身を疲弊させる。だからといって、シェアリズムやヴァーチャリズムといった桃源郷に活路を求めたとて、行き詰まってしまうのである。ここに3つの世界、それぞれのみで生きていくことは、困難なのだ。
そこで私たちは、「お金を稼ぐこと」「他者や社会に貢献すること」「生活すること」をはっきりと分けて考え、それぞれを成立させる生き方をお薦めしたい。まずは、今お持ちの仕事の中で「お金を稼ぐ」ことを担保しながら、根ざす地域を決め、自身や社会、未来の世代のために、地域の再構築に貢献し、生活していくのである。
(次回に続きます)