地域開発とコミュニティマネジメント#2-3
実際に地域開発は、どんな順序で着手してゆけばいいのか。3つのステップに移る前に、コミュニティマネジメントについて言及したい。
地域開発とコミュニティマネジメント
地域開発といっても、規模や手法はさまざまである。本書でいう地域開発とは、「地理特性によって定義さ れた地域における今後 100 年の豊かな暮らしのために、地域の核となるコンセプトに従って経済・福祉・行 政・教育を再編すること。」とある。 この仕事は、日本においては行政が担っている印象があるようだが、アメリカにおいては「コミュニティオーガナイザー」という名前で一般化しつつある。バラク・オバマ元大統領がコミュニティオーガナイザーとして働いていたことを自伝の中で明らかにし、2008 年の大統領選挙期間中に多くのメディア で取り上げられた事 から「コミュニティ・オーガナイザー」という仕事が一般的に使われるようになった。 コミュニティオーガナイザーとは、コミュニティが健全に発展してゆくために市民が主体となり、エリア開発や 人口分布、産業など各要素が現在どのような状態にあり、相互にどのような影響を与え合っているのか分 析しながら、コンセプトに沿ってさまざまなセクターと協業していく仕事である。 日本においても市長や商工会議所の幹部、地域の名士的企業のトップなどから推進力のあるリーダーが 増え、コミュニティマネジメントが地域にとって必要不可欠な役割の一つになるだろう。 地方局アナウンサーから史上最年少 36 歳で福岡市長に就任した、高島 宗一郎さんはその 1 人だ。人口 増加率は東京を抜いて 1 位、地価上昇率は東京都や大阪府の約 2 倍もあり、2021 年度は政令指定都市 で上昇率 1 位である。「全員をよくする」ことではなく、「全体をよくする」ことを掲げ、空港や新幹線駅までの 距離が近いという特徴持つ福岡市の主要エリアを、一気に生まれ変わらせる「天神ビックバン」という取り組 みを行った。航空法を「国家戦略特区」による特例によって緩和し、10年間で30棟のビル建て替えを誘導、都心部に新たな雇用を創出した。税金のみで街を動かすのではなく、規制緩和によって民間位よる開発を促進してゆく手法などによるものだ。
(次回へ続く)