ビジネスモデル②不動産方式により、地域における中古物件市場の課題を解決する#3-20
地域開発における大きな課題の一つに不動産の中古物件の売買や賃貸の市場が存在しないことがある。 これによって過疎地域になるほど、不動産投資が集めづらい状況にある。 そこで登場しているのが、行政主導で実施されている「空き家バンク」の取り組みだ。空き家バンクとは、空き家物件情報を地方公共団体のホームページ上などで提供する仕組みのことを指す。 行政側では、地元の方々から広報誌やホームページなどで空き家情報を広く募集し、移住・交流希望者向けの物件情報を収集して提供している。一方、空き家を紹介し助成金や補助金を交付するのみで、改修までを担当していないため、地域の統合的な再開発には寄与しない。 そこで私たちは、地域の方針に基づいた、高付加価値の不動産のための 1〜5 億のファンドを組成し、地域の主幹企業に売却することで、空き家など地域全体の改修資金を確保する形式を提案したい。売却先は外資系企業になることも多いのだが、地域の高付加価値の不動産を外資に売却することは、域内の資産を低減させることに繋がるため、望ましくない。地域の主幹企業が単独で買い取ることが難しい場合は、地域の 金融機関や主幹企業などが共同で設立した SPC(特定目的会社)に対して売却することで、外資系企業への資産流出を防ぐことができる。 上記のスキームを活用することで地域全体の投資資金を確保し、また地域内で資産を保有しながら再開発することができるのである。 ここでいう高付加価値の不動産とは、沿岸地域ではマリーナをはじめとする湾岸施設であり、山間部では太 陽光や風力、水力などの発電所や、リゾート地域ではホテルの可能性もある。地域のグランドデザインに基づいて、最も価値が高い不動産を特定し、集中的に投資するのである。
現状の一般的なマリーナに関するビジネスモデルは、船舶を係留できる区画を、船舶や区画の大きさごと に変動する価格で、一定の期間(6 ヶ月、1 年間等)、停泊料として船舶オーナーから得るものである。マリ ーナによっては、船舶のメンテナンスやメンテナンスに必要な器具のレンタル、ボートレンタル等のビジネス を並行して行っている。山間部においては、政策や補助金の後押しもあり、太陽光発電所や風力発電所の開発が盛んに行われ、 一般市民から企業までが投資できるファンドが組成されてきた。ヨーロッパの方で数十年前から盛んになっ ている ESG 投資では、現在においても自然エネルギー発電所への投資が大多数を占めている。 一方で、環境保全に配慮しない発電所の開発が進んだことから、投資家たちは十分なリターンを得たが、 大雨の際には土砂崩れが多数発生するなど、その土地や周辺の不動産価値は下がった結果となった。投資価値の高い不動産であり、地域全体の価値も向上させるものとして、近年注目を集めているのが、バイオマス発電所である。バイオマス発電は、間伐材などで実施することができる上、熱利用も可能であり、発電効率が良い。林業が盛んな地域において、山間部の新しい不動産投資として普及し始めている。
(次回へ続く)
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