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ハリポタにハマったから枝で魔法の杖作る

 アロホモーラ!!(一番好きな魔法)

 2024年は色々楽しいことがあったんですが、特にヤバおもろゲーム体験だったのが『ホグワーツ・レガシー』でした。ハリー・ポッターの世界で魔法使いになって冒険できるコンシューマーゲームで、現在PS4、PS5、PC(Steam)、Switchで遊ぶことができ、セールの時期は2600円くらいで入学できますのでぜひ遊んでください。
 で、主人公はホグワーツの転入生としてハリー・ポッター世界で悪の魔法使いとか魔法生物の密猟者や世界を危機に陥らせる陰謀と戦いますが、魔法使いの戦いに欠かせないのは……そう、

魔法の杖!


主人公の杖は自分で色々な素材やデザインから選べる

 ゲーム中でブンブン振り回しているうちに一つの考えが頭を占めてきます。やっぱり杖かっこいいな、魔法使いたるもの自分の杖くらい持っていたいよな、できれば市販のハリポタグッズの樹脂の杖じゃなくて、ホグレガ主人公の……本物の木……ナナカマドで、12.5インチで……。ああ、自分の杖持ってハリー・ポッター・スタジオツアーに行きたいなあ……。 ん? あれ? ナナカマド、手に入るかも??

 私の出身は北海道で、ナナカマドは割とありふれた樹でした。その辺に生えてる。で、ワンチャン枝の一本を手に入れられたら……削って自作できるのでは? そこで地元の友人にメッセージを送りました。

嫌だと言いつつ……
合法エリアで採取されたナナカマドの枝

採ってきてくれました。ナナカマドの枝。ホグレガクリア後、ハリポタ全巻と呪いの子を履修してハリー・ポッター・スタジオツアーに行く予定まで立ててたところに枝も来た。やるしかありません。でも、インターネットには『ド素人が枝から削って魔法の杖を作る方法』が……なくて……(菜箸とグルーガンとか、100均の材料で作れる、とかはいっぱいあった) (マジで木材を削った人もいたけど超絶技巧すぎて何が起きてるか分からなかった) ないなら俺がファーストペンギンじゃい!

これより魔法の杖作り(ド素人木工)を始める!

まずは道具から。

基本の道具
  • ゴム付き軍手(手を傷つけないために必須)

  • 小刀(500円くらいのありふれたやつ)

  • 紙やすり(目の粗さが違うのがセットになってるやつを買いました)

  • レザークラフト用革製指サック(小刀を押し出す親指の負担がすごい)

最低限これだけあればなんとかなります。他に杖に『それっぽさ』を出すための着色料や柄に巻く革テープ等出てきますが、作りたい杖の色や柄のデザインによってはあまり参考にならないと思うので、作りながら必要なアイテムを買ってください。みんなは間違っても私のように、必要かもと先走って巨大な金属ヤスリや彫刻刀を買わないようにね!!(マジで全然使わなかった)

ゴム付き軍手の上から革製指サックをはめて小刀で指にかかる負担を軽減。

1.樹皮を取り除く

 まず、表皮はデザイン上必要がないので取り除きます。小刀の練習にも丁度いいですね。

表皮は柔らかくて剥きやすい
全部剥けました

 樹皮の緑の部分が残っていても気にしなくていいです。どうせまた小刀で削ってしまうので。ちなみに生木のまま削ったので、表皮を剥いてる間は青っぽくみずみずしいナナカマドの匂いがして謎の癒し効果がありました。

2.大まかに削りながら杖の形に整える

先細りの形に削り出す

 小刀で枝の余分な部分を削り落とし、先細りの形にしていきます。この枝は曲がっているので、真っ直ぐに削るのはいったん諦めます。(太い枝から削り出せば真っ直ぐの杖が作れるんですが、この枝は細めで真っ直ぐになるまで削ると細くなりすぎてしまいます) 曲がった杖は変? 今すぐベラトリックス・レストレンジの杖を検索してきてください。曲がった杖、存在する。
 今回作りたいデザインは杖にリング状の節があるので、その部分を作るためにある程度太い状態でヤスリがけして表面を整えました。この時点で目指す細さまで削り出してしまうと、節を残した時にそれ以上細くなってしまうので。

3.杖本体のデザインを削り出す

 リング状のデザインを作るために、節と節の間を小刀で削って段差をつけます。後でヤスリで綺麗に表面を整えるので、あまり神経質にならず全体のフォルムを掴むこと優先でどんどん削っていきます。

根元は太くしたいので溝は浅め
先に向かうにつれて溝を少しずつ深くしていく
節の削り出し完了

 わ〜、もうこの時点でそれっぽい!! すごく杖!!  あとは目の細かい紙やすりで小さなささくれを削ってなめらかにしていきます。小刀の削りあとはむしろ味が出たので、あまりやすりがけで消さないように控えめにしました。

4.杖を塗ってツヤを出そう

 今回作る杖はゲーム準拠のデザインと色を再現したいので、ゲーム画面に合わせた色に着色します。ナナカマドなのに茶色なんだよなあ……(ナナカマドは本来白肌の木) 水性木部用ステインのウォルナットカラーで着色とツヤ出しを一気に済ませます。

ナナカマドの枝にウォルナット色を着色……?

 写真を撮ったときは塗ってタオルで磨いてみたんですが、綺麗に拭き取られてしまって目指したツヤが出ませんでした。なので、パレットに出して平筆に含ませてから薄く塗る、乾いたら塗り重ねる、を何度か繰り返して目指した色ツヤになるまで作業しました。

重厚感ある色とツヤが出ました

5.柄を作っていく

 画像見返したら着色の前にタコ糸巻いてましたがこちらの項目にまとめます。たぶん着色料より先にタコ糸が届いたんだと思います。

チャーシューではなく枝を巻くことになったタコ糸

 柄を作りましょう。もちろん着色前に柄を作ってもいいと思う。枝が細めで柄になるところもグリップにはやや細かったので、厚み出しをします。2.2mmのちょっと太めのタコ糸で柄になる部分を糸が重ならないように、かつキツめにぐるぐる巻いておきます。今回は加工が簡単、かつそれっぽく見えるのを期待してこのタコ糸の上から革製のテープを巻いて革グリップにします。ゲームでもグリップは色々なデザインから取り替えられるので、ここはいったんゲーム再現より『作りやすさ』を優先しました。革テープは2mm厚、幅5mmです。さて、巻き始めはこうなります。巻き始めた部分のテープが重なって、単純に4mm厚になっちゃいますよね。そのあと重なりの下部分のテープがなくなる3巻目あたりからガクッと2mm厚に戻るので見た目が悪いです。じゃあどうするか……

ここ注意⚠️
端を1mm削り取る!!

 革テープの厚さが問題なら、余分を削り取る! カッターマットの上に革テープを乗せて、裏面から1mmの厚みを小刀を寝かせてゾリゾリッと削ぎ取ります。こうすることで、4mm→2mmの落差が3mm→2mmになり、見た目はかなり自然になります。

ボコッとしてない! グッド!

巻き始めの処理はこれでOK、一度このまま革テープを柄に巻いてみて、革テープの長さが足りるか、巻いたときどんな見た目になるか確認しておきます。革テープの長さが足りなくて柄をカバーできなければ、買い足すことを検討しなければならない……。Amazonで買うとだいたい1mの単位で買うことになると思うので、1mでなんとか巻ききりたいときは革テープの幅をもっと太くすると良いと思います。ただ、革テープは伸縮がほぼないため、あまり幅広のものを選択すると柄に巻きづらい、定着しない、凹凸に沿わず浮いてくる、といった問題がでてくると思うので気をつけてください。革の扱いに長けている方はなんとかできるのかもですが、筆者は木工も革もド素人なので扱えそうな5mm幅のテープを選択しました。

革の裏面全部に両面テープを貼る

 革テープの長さに問題がなさそうなら、巻きやすいように革テープの裏に両面テープを貼ります。振り回したとき革テープがバラバラ解けたら困るので……。魔法の杖は欲しいけど、この辺はマグルの文房具でやっていきます。

コバの部分を塗っていく

 長さ確認で革テープを柄にぐるぐるっと巻き付けてみた時に、なんとなく『コバが毛羽立っててカッコ悪いな』『革テープ巻いただけだとシンプルすぎてオモチャ感が出ちゃうな』と感じました。これを同時に解決したいけど、コバ磨きの技術は持っていません。なので、文房具店でデコカラーという金属光沢の出る金色油性マーカーを購入。インクをたっぷり出してコバを着色しました。革テープの表面にインクがはみ出しますが、あえて気にせずはみ出したり垂れたりするに任せます。
 コバに塗った金インクが乾いたら、やっと柄に革テープを巻き付けていきます。浮いたり隙間が空いたりしないように、しっかり押さえてギッチギチに巻き付けます。巻き始めの部分は柄の中に隠して巻き込み、巻き終わりはギチギチに巻き込んだ革の中に入れ込むことはできないので両面テープの力を信じてしっかり柄に押し付けて留めます。この辺必死過ぎて画像残ってなくてすみません。

巻き終わりました

 巻き終わりの部分は柄の中に入ってるように見えますがフェイクです。テープ終わりを斜めに切り落として『中に巻き込んで処理した』ように見せているだけで、両面テープで健気にしがみついています。解けるのが怖いので、ここに木工ボンドを塗って固定します。ボンドの処理あとは金インクを多めに塗ってカバーします(画像をみると巻き始めと巻き終わりは金インクが吹き出たような見た目になっています。固定のためのボンドがバレないようカバーしたからですね)
 コバに塗った金インクも定着がかなり良く、手でこすっても取れません。あえて表面にはみ出させた金インクが『使い込んだ』質感を生んで、いいディティールが生まれたと思います。

これで全工程が終わりました。
仕上がりを見てみましょう。



撮影:MARINA

うわ〜ッッ!! 本物じゃん!!!


 思った以上の本物感、柄の革グリップがものすごく手に馴染む!自然に曲がったフォルムが神秘的!ド素人木工でもちゃんと形になった!!!

そしてXでめちゃバズった

 たくさんの人に『令和のオリバンダー』とか『マグルの世界に杖職人生まれることあんの』と褒められ、めちゃくちゃ嬉しかったです。木工ド素人も魔法の杖作れるよ! みんなも自分の魔法の杖作ろう!

〜そしてスタジオツアーへ〜


杖とコーヒーブレイク
ネームドの魔法の杖と記念撮影

あとがき

 自分の魔法の杖が欲しい! から公式ショップの杖完全スルーで枝一本から魔法の杖を作る、こんなことをして遊ぶことも自由にやっていいだろ! 杖の作り方なんて分からなくても、まずやってみよう! うまくいかなかったら公式ショップでセストラルモデルの杖買うからいいもんね……と思って始めたのでかなり気楽に取り組めました。中学生の時になにか課題で木を削ったきりで、たぶん20余年ぶりとかで小刀使った気がします。
 出来栄えとしては大満足、枝を切ってきてくれた親友に一番先に画像を送って感謝を伝えました。まず枝を手に入れられなければ始まらなかったので。制作過程もフォロワーたちが興味津々で見に来てくれて、とても励みになりました。完成後もいろいろな人が「自分も作ってみたい!」と言ってくれて、実際に作り始めてくれた人もいました。
 これから手元の一本の枝から自分だけの魔法の杖を削り出したい人向けに、自分がどんな風に製作を行ったか紹介したくてこちらの記事を書きました。少しでも製作の参考になれば嬉しいです。

で、

今度はサクラの枝!

二本目作ってます!!


ここまで読んでいただきありがとうございました!!

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