逃げの海外という選択肢
海外移住や海外留学と聞くと挑戦だったり、成功者が余暇を謳歌するためにするというイメージがあると思う。
私にはある。というかあった。
海外留学に行くんです、と言うと「楽しんでね!」とか「いいなー!」と声かけられることが多かった。
かけてもらった言葉はありがたいと思いつつ、何故か少し違和感を感じていた。
多分凄く前向きな気持ちで留学を選んだわけではないからだと思う。
むしろ私は日本が大好きで本当は長期で離れたくないけど環境を変えたいから行く、英語学習のために行く、何かしなきゃと焦るけど仕事は難しい、日本より生活費安くなるからまぁいいか、というネガティブな気持ちの方が強かった。
ただ、今回フィリピンに語学留学で3ヶ月半、フィンランドにホームステイとプチ移住で2ヶ月半滞在してみて思ったのは、必ずしも高みを目指す気持ちではなく、「日本にいたくないから」とか「とりあえず環境変えたい」などの理由で海外に行くという選択肢は大いにあるなと思った。
場所によっては生活費も日本の1/3以下になるし色々な事情で働けない環境であればなお良い選択肢になり得る。
私自身昨年末に父を亡くして、直後は眠るどころか意識的に目を瞑ることすら出来なかったし、昼夜問わず1人になれず、とにかく常に人の気配が欲しくて2週間経って漸く日帰り入浴施設の仮眠室で初めてちゃんとした睡眠をとれた。
その後も日中は段々元の生活が戻ってきても睡眠だけはうまくいかなくて朝日を見てからじゃないと安心して寝れない日々が4ヶ月以上続いていた。
そんな中で冒頭書いた理由でフィリピン留学に行こうと思った。
フィリピンにした理由は単純で、生活費や授業料が他の英語圏に比べて段違いに安かったのと留学中日本に一時帰国しないといけない可能性があったので航空券の安さとフライト時間の短さも考慮してほぼ1択だった。
ただ異常なほどの暑がりで汗っかきであり、1箇所蚊に刺されると周辺に何箇所もブツブツができたり、2週間以上かゆみが治らないくせに刺されやすい私とフィリピンは凄く相性が悪いだろうと予想はしていたが、実際行ってみるとかなりきつかった。
それでも凄く不思議なことに精神面が日本にいた時には考えられないほどに安定したのだ。
1人でも夜の内に寝られるようになり、1週間もすれば電気を消して暗い中でも寝られるようになった。
理由を推察するとたぶん「非日常に身を置くことで日常を思い出さなくなったから」なんだと思う。
日本にいると色々なところに色々な思い出があったりして、ふとした時に変わってしまった現実を突きつけられる。
ただ海外にはそれがない。(思い出がある海外だったら違ったかも)
縁もゆかりもない場所で縁もゆかりもない人達に囲まれて過ごす日々はただただ新しい日々なのだ。
色々なことがフラッシュバックして突然泣き出す回数も格段に減っていった。(時間の経過もあるかな)
そんな時フィリピンの小さな島で中学生の時に日本から移住したという日本人の青年に会った。
彼は日本での生活が上手くいかず、偶々支援学校での留学でフィリピンと出会い、とても肌にあったのだという。
その後一度は日本に戻ったがやはり日本では上手くいかず、再びフィリピンに戻りそのまま定住。
とても爽やかで明るい好青年だったので、そんな過去があるようには見えなかったが、人それぞれ合う場所ってあるんだなーと思ったし、彼が若い内にそういう場所に出会えて本当によかったなと思った。
日本で海外留学というと意識の高い優秀層や富裕層の子供達というのが一般的である。
そういう優秀な子達が若いうちから海外にでて見識を広げたり、新しい価値観を養って世界に旅立ったり、日本に持ち帰ってくれるのはとても意義があり、素晴らしいことだと思う。
しかし、日本に馴染めなかった子達や何かのきっかけで日本での生活が苦しくなってしまった人など世間からは一見落ちこぼれと言われてしまうような人達にこそ海外という選択肢があったら良いなと強く思う。
現在日本にはまだ逃げの海外という選択肢があまりない気がする。
そもそも海外にもあるのかはわからないが。
ただ、ググってみると意外にも「不登校留学」というものは結構存在していた。
とはいえ認知はあまりされていないのではないかと思う。
不登校で留学に行きたいと言ったら「日本の学校もまともに通えないのに海外?」という反応が返ってきそうな気がするし、社会人だとしても精神的な理由で働けなくなった人が海外に行っていたら「え⁉︎」と思われそうだし、何より本人達にこそそういう考えが強いように見受けられる。
しかし、自分が悪いのではなく環境との相性が悪いのかもと思ってみてほしい。
その人はただ桜の木をアフリカで育てようとしていただけなのかもしれない。
その場合咲かないのは当たり前で、木が悪いわけでも育て方が悪い訳でもなく、ただただ木と土壌が合わなかっただけ。
もちろん不登校児や行き詰まった人が全員海外に行けばいいとは思ってないし、行ったから解決する問題ばかりでもないのは分かっている。
ただこの文章を読んで、逃げの海外という選択肢が1つ脳の片隅に増えたらいいなと思っただけ。
そういう考えがもっと世間に広まって、支援やサービスが増えて、苦しい時、そういう選択肢をもっと簡単に選べる世界になったら良いなと思うし、私に出来ることはしていきたい。