日記 4/19
今日もフランス語を勉強したり、後輩とのランチの約束に遅刻したり、同期の激アツライブを見に行ったりだとか色々あったんだけど、日記には別のことを書く。これもう日記なのか? 好きなことを好きなように書いている。
今日、何の気なしにスマホのメモを眺めていたらこの文を見つけた。2019年。俺が17歳のときだ。俺は、このメモを見つけたとき、逆にあのときの俺に見つめられているような錯覚をした。じっとりとした目つきで、まるで今の俺を静かに責め立てるような視線で、あのときの俺は今の俺を睨んでいる。「『大人になって泣き方も忘れてしまったよ』って言い訳を垂れ流せるほど子供でもないだろ」。
なんて良い言葉なんだろう。自分ながら嫉妬すら覚える。今の俺なら絶対思い浮かばない。でもあのときの俺は違ったんだろう。本気で、そういった類の自称「大人」を見下していた。
実際あのときはそうだったんだ。顧みるに、17歳の頃が一番尖っていたように思う。つまらない大人になるくらいなら20歳になる前に死んでやると思っていた。毎朝最寄りの駅で、学校と反対の電車に乗ってやろうと考えていた。俺のことを何も理解してくれない周りの人間なんて知ったことかと、内心唾を吐き掛けていた。
過去の感傷に浸るだけの大人は気色が悪い。正しさを忘れて意地汚く生きる大人になんてなりたくない。そんな奴らはちゃんとした大人になりきれなかった中途半端なガキだ。俺は、ちゃんとした資格を持って子供でありたいし、ちゃんと大人になりたい。なれないなら子供のまま死んでやる。それがあの頃の俺の、周囲に隠した心の全てだった。俺はあの頃漠然と、20歳になるまでに、いつかに北陸で見た美しい海に飛び込んで死ぬものだと思っていた。
今、そうやって過去の青さを振り返る俺は21歳で、毎日将来に向けての不安を抱えながらせこせこ勉強をし、寝る前に酒を飲みながら感傷に耽る。恋人と将来のことをぼんやり話して、就職したら一緒に住みたいね〜なんて考える。そんな腑抜けた俺を、17歳の俺は睨んでいる。21歳の俺はそんな彼を見つめ返しながら、こう言うんだろう。
「ほら、お前もいつか、お前が一番嫌っていたつまらない大人になるんだよ」