Der Leiermann (Winterreise)
初夏だというのに何日も続けてWinterreiseを聴いている。
終曲のDer Leiermannに言いようもなくゾッとしている。恐ろしくて恐ろしくてたまらない。どこまでも虚無なのである。ライアー回しの具体的な描写があるのにも関わらず、それすら靄がかかったようになって見えてこない。表情が見えない、顔が見えない、見えるのはただ回り続けるライアーだけ……。
Drüben hinterm Dorfe
Steht ein Leiermann,
Und mit starren Fingern
Dreht er,was er kann,
Barfuß auf dem Eise
Wankt er hin und her,
Und sein kleiner Teller
Bleibt ihm immer leer.
Keiner mag ihn hören,
Keiner sieht ihn an,
Und die Hunde knurren
Um den alten Mann,
Und er läßt es gehen
Alles,wie es will,
Dreht,und seine Leier
Steht ihm nimmer still.
Wunderlicher Alter,
Soll ich mit dir gehn ?
Willst zu meinen Liedern
Deine Leier drehn ?
最後の4行をポジティブに捉える解釈も世の中には結構あるようなのだが、私にはそう思えない。どこまでも虚無の広がるこの音楽の先に、前向きな旅路が広がるだろうか?
文面通りに解釈すればかなり前向きな捉え方もできる4行である。だからこそ、これが文面通りでないとすると非常に強い反語表現である。強い、強すぎる。ありとあらゆる可能性を否定している。救いがない。孤独なライアー回しとですら一緒に行くことができない。どこまでも一人でいるしかない。ピアノの旋律はあまりに虚無であり、周りの景色すら見えてこない(Drüben hinterm Dorfeと書いてあるのにも関わらず!)。誰とも一緒になれない、どこにも行けない、白い靄の中に取り残されたようなどこまでも行き止まりの虚無……。
そしてその虚無の中に私を取り残したまま全曲は終わる。