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「日本のデザインの宝探し」展。その元にはDESIGN MUSEUM構想があった!

 残念なことに緊急事態の発令で途中で打ち切られてしまった、NHK Eテレ番組からのフリンジ企画「DESIGN MUSEUM BOX展」。

 番組との連動で開催された展示だ。番組を観ていればより楽しめるが、観ていなかったとしても十分楽しめる内容だった。さらにその元をたどっていくと大前提のテーマ自体が知れた。それはDESIGN MUSEUMを作ろうという、わくわくするものだった。

「集めてつなごう 日本のデザイン」

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 銀座のど真ん中、一等地にそのスペースはある。ソニービルの地下部分で、以前から意欲的なイベントをやっていてるオープンスペースだ。

 4月半ばから5月連休までだった展示は、NHK Eテレの番組の企画「DESIGN MUSEUM BOX展」。デザインの視点から、全国の美術館や工芸館、企業などのミュージアムに眠っているまだ知られていないお宝を掘り起こして、広く紹介していこうというのが趣旨だ。

 5人のクリエイターがピックアップしたデザインを、それぞれの立場で語り分析している。

 DESIGN MUSEUM BOX展 https://www.nhk.jp/p/ts/3477L14VG1/blog/bl/pz2m7bZj0X/

柳宗理、日常使いの究極デザイン

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       田川欣哉×柳宗理記念デザイン研究所 の展示
      「柳宗理のデザインプロセス カトラリーを例に」

 柳宗理のデザインは極限なまでにシンプルなのに、なんだか温かくて人間味が感じられる。私も大ファンだ。20世紀を代表する偉大なプロダクトデザイナーであるのに、どこかの博物館に鎮座しているわけではない。私たちが手に入れることができ、日常で使うことができるのだ。

 デザインエンジニアの田川氏は金沢の柳宗理記念デザイン研究所を訪ね、代表的なカトラリーのデザインプロセスをリポートする過程で、デザインの考え方やあり方などを掘り下げている。

 コーナーには、本人が登場するNHK番組のアーカイブ映像も流されていて、さりげないのにおしゃれなそのいでたちに、まずは魅かれた。「作り手の主張ではなく使う側のことを徹底的に考え、極限までシンプルに」「実際に形を作ってみなければだめで、そこからデザインを突き詰めていく」と語る、柳氏の語り口は柔和な中にも自信のポリシーが強く感じられ、大いに感銘を受けた。デザインのあるべき姿を改めて教えてもらった気がする。

古来の衣装デザインには、人々の信念がこもる

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       森永邦彦x 瀬戸内町立図書館・郷土館 の展示
          「ノロの装束“ハブラギン”」

 パリコレなどで最新テクノロジーを活かしたコレクションを披露して活躍するファッションデザイナー、森永氏が出会ったのは、日本の南端、奄美で祭祀(し)をつかさどるノロと呼ばれる女性たちが着用した「ハブラギン」という装束。

 魂や聖なるものは背中から入ってくるとされ、魔よけのような三角形の生地片がパッチワークされている。様々なプリント生地や織もの片をダブルステッチで丁寧に縫い合わせた年季もののパッチワークは、まるで人の念がこもっているかのような圧倒的なたたずまいだ。

 「服に、着る人を守るという強い意志が込められている」と森永氏は感動する。服は単純に自分を飾るだけのものではない、という事実を目の前に、服をまとう意味を改めて考えさせられる。

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       今回の企画にインスパイアされた森永氏の作品

 自身もデビュー当時にいろいろな想いを込めてパッチワークの作品を作ったことがあるという森永氏が、今回のために制作したオリジナル作品も展示されていた。最新コレクションでも披露された、光に反応して色が変化するという生地を部分的に配して、会場では実際に光を当ててみることができた。

伝統の住居や玩具に宿る、音が共鳴する、デザイン

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       田根剛×御所野縄文博物館 の展示コーナー
          「縄文のムラのデザイン」

 建築家 田根氏が訪れたのは縄文時代の竪穴建物復元などを試みる岩手の御所野縄文博物館。当時の建築物を通して、一万年も前から「土・火・魂」のデザインがあったことを考察し、様々に解説している。

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        辻川幸一郎×日本玩具博物館 の展示
      「ぶちゴマ、そこから広がるさまざまなコマ」

「おもちゃは人間が最初に触れるデザイン」として、映像作家の辻川幸一郎が兵庫県姫路市にある日本玩具博物館を訪問。日本のみならず、世界中で集めた9万点もの所蔵品から選ばれて展示されていたコマたちの美しさに心奪われる。

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    水口哲也×ヤマハ イノベーションロード のコーナー
  「トランスアコースティックピアノ 匠とテクノロジーの出会い」

 会場内にはピアノの響板に電気的な振動装置を搭載したピアノを設置。ピアノ自体がスピーカーになるというもので、実際に体験もできた。機能とデザインの融合と言え、紹介しているのはエクスペリエンスアーキテクトの水口氏。


5人のクリエイターが出演した番組、活動とは?

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 そもそも何ゆえにこの5人のクリエイターなのか? この企画にはその元があるというので、チェックしてみた。

 5人はこれまでNHK Eテレの番組「デザインミュージアムをデザインする」に出演した方たち。この企画はその番組からのフリンジ企画だ。

 「まだ日本にないデザインのミュージアムを実現するなら、どんなもの?」というテーマのもと、多方面クリエイターが考えていくという番組。残念ながら私は観たことがなかったが、HPを見るとあらゆる方面で活躍しているクリエイターが登場している。

NHK デザインミュージアムをデザインする https://www.nhk.jp/p/ts/3477L14VG1/ 

日本にDESIGN MUSEUMを作る!

 番組作りに協力したのがDesign-DESIGN MUSEUMという一般社団法人。HPによると、日本にDESIGN MUSEUMを作ろう、と立ち上がった組織で錚々たる方たちが名前を連ねている。

 確かに、私が過去住んでいたイギリス・ロンドンには、DESIGN MUSEUMが存在していた。美術品や彫刻など愛でるものではなく、実際に日々人々が手に触れたり使ったりする、より身近なものが展示されていた。時にはそれらは知らずに気に入って使っていたりするかもしれない。

 私たちの暮らしの中のあらゆるものに、デザインは存在すると言って過言ではないと思う。そして確かに秀逸なデザインや現代のデザインの元となったものなどが、日本中あちらこちらに眠っているに違いない。

 だから今回のフリンジ企画では、5人のクリエイターが国内でいわゆる「宝さがし」をしてきたのだ。さらに会場では、来場者自身が思いつく「日本中のこんないいデザイン」を紙片に書いてもらって、壁一面の日本地図に張り付けてもらうコーナーもあった。

 意識もせず使われ身近にあることでこそ賞賛されるデザイン。その価値に改めて光をあて、敬意を表するこんな試みと、その集大成になるであろうDESIGN MUSEUM ができること、想像するだけでわくわくする。どんなMUSEUMができるのか?

 ぜひ実現して欲しいと願う。

一般社団法人 Design-DESIGN MUSEUM https://designmuseum.jp/


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