逃走中 THE STAGEを皆さんに見てもらいたいという推薦文(ネタバレ極力なし編)
5月3日からテレビ番組「逃走中」を舞台化した「逃走中 THE STAGE」の上演ツアーが始まった。
5月現在は東京・神奈川・千葉・埼玉と関東周辺ツアーとなっており、8月・9月には福岡・大阪など全国ツアーが予定されている。
もちろん私も神奈川公演を見に行った。ゴールデンウィークも仕事まみれで唯一通勤圏外の出という本当の希望の中で見に行った作品はとても楽しかった。
また、感想に関するツイートをキャストの方、アンサンブルの方に加え脚本の伊藤さん、演出の野元さんにもいいねしていただき非常に感謝している。
だがやはりというかどうしても「あの逃走中の舞台化?」という意味で拒否反応を示す方もいらっしゃるだろうし、そもそもノベルスシリーズを始めとする「子ども向けになった逃走中」について嫌っている方もちらほらと見かける。
そこでこの記事では僭越ながら逃走中視聴歴18年の視点から見た「逃走中 THE STAGE」の魅力について語っていきたいと思う。
尚、大体の場合感想ツイートを再編するという「アナログリマスター」でお送りする。
逃走中は「筋書きのないドラマ」か「筋書きのあるドラマ」か
舞台化発表の一報を知ったのは昨年12月発売のノベルス第5作の帯に「舞台化決定」という文字を見つけた事から始まる。
この時点で私の周りでも賛否両論が多くあった。
というより、そもそも「ノベルス化」第1作が発表された時点でまあまあな賛否両論があったことを覚えている。
「逃走中」は2004年に始まり、ハンターとの戦いはもちろんだが、そして1秒ごとに増え続ける賞金の欲望とどう戦うかという「大人の鬼ごっこ」という側面を持っていた。
そこからクロノス時代、ジャンプ!〇〇中時代を経てエリア内ドラマが始まったり未来ドラマが始まったりと紆余曲折を経て現在に至る。
単発特番とはいえ18年も続く番組は昨今中々ない中で長寿番組一歩手前というべきところだろう。
一方、そんな「大人の鬼ごっこ」が次第に子どもたちからの人気が高くなったことでだんだんと「大衆向け」にシフトしていった事に対して不満を持つ古参ファンもいないわけではない。
シリアスな「サスペンス映画」を見ていたらシリーズを追うごとにドンパチだらけの「アクション映画」になってしまったら冷めてしまう人もそりゃあいるだろう。
特に「キッズ逃走者」の導入は現在でも根深い賛否がある。子ども達にとっては「自分と同じ世代の子達の奮闘を見る」という意味で感情移入がしやすいが、「子ども達が嫌い」「うるさい」という意見もある上、長年見てきた人からは「大人にとっては『子どもに協力しないわけにはいかない』とほぼ強制的に行動パターンを決められる」という縛りプレーを強いられてしまうのも難しい物である。
そんな中でノベルス第1作が発売された時、自分は購入してそのままショッピングセンターの休憩所で読破して大満足だった。
登場人物(逃走者)こそ全員小学生だが、ゲーム内容、そして逃走者の行動などはまさに逃走中そのものだった。
本放送の逃走中は「筋書きのないドラマ」だ。ミッション内容等は事前に練られているとはいえ、誰が動くのか、ミッションが成功するのか否か、そしてもちろん誰が逃走成功するのかは誰にもわからない。
これは逃走中の企画者である高瀬敦也氏が目指した「スポーツのような番組」を体現している。1秒先の展開が全く読めない戦いはまさにスポーツそのものだ。
一方、ノベルスはプロローグからエピローグまであり、舞台は開演から閉演まで決まっている。ゲームブックや即興劇ならともかく筋書きは無くてはならない。
登場人物も少人数ではなく10人以上いるという「群像劇」は割と難易度が高い。
だが、逃走中の放送歴の長さは意外にこのノベルスの形式にマッチしている。
逃走者の行動を見ると「これはあの逃走者の行動に似ているな」と思う事もあったり、ミッション内容は実際に使われた物が使用されていたり「もしあのミッションでの行動がこうだったら…」というifルートもある。
「膨大な試行回数」と「膨大な逃走者のデータとパターン」があるからこそ、それが少し違うだけでもゲームの展開は大きく異なり本放送の逃走中とは全く違う様相になる。
結果、ノベルスにおいても「先の読めない展開」をうまく作り出せている。
そしてノベルスという「文章化」が出来ている以上、それを三次元化した「舞台化」という発表があっても、自分の中では「大丈夫だろう」という肯定的な見方をすることができた。
年が明け2022年1月。「美女とハンターと野獣」の放送後、一次先行予約の受付が開始。同じく逃走中歴18年の母にも「見に行く?」と聞いたらYESと返ってきたので2枚分注文し無事予約に成功。残る4カ月を楽しみに待っていた。
主な設定など
本来なら配布されているフライヤーを取りに行きたいとも思っていたが結局ゲットするチャンスが無く当日会場で入手した。
ここではフライヤーや公式の動画で上がっている範囲のあらすじや設定について紹介する。
ゲーム設定
舞台はバーチャルタウン内に作られた「SHIBUYA」。
逃走者は小学1年生から高校3年生までの11人。
ゲーム時間は50分。
最後まで逃げ切れば賞金105万円を獲得できる。もちろん自首も可能。
ただしハンターに確保されれば即失格。賞金はゼロ。
やはり舞台は逃走中発祥の地「渋谷」。ここから逃走中の歴史が始まった。
ノベルス版第1作も舞台は「渋谷」であり、ここでの逃走中こそが全ての始まりであるということが今もなお続いていることが分かる。
ちなみにその関連から「ノベルス第1作を舞台化するのかな」と思ったが、後になって思ったらノベルスは小学生だったのでこの時点で完全オリジナルの「逃走中」ということに気づいた。
ただ、会場に来たお子さんのほぼ全て、そしてキャストの皆さんも渋谷の逃走中の時に生まれてないという心が折れる話はしないものとする。
もっと言えば10周年記念ゲームの時に生まれていないであろう子も見に来ているという心が滅する話もしないものとする。
逃走者とハンター
前述したとおり逃走者は高校生から小学生まで11人。
やはりそれぞれはっきりとしたキャラクター付けがされているのと、それぞれイメージカラーが決められているのですぐに「この子はこういうタイプなんだ」というのが子どもでもわかりやすいと思う。ゲーム番組だと揃いの衣装とか装備を着ることもあるが、原則各個人事にイメージカラーが異なる逃走中はやっぱわかりやすいと感じた。
一方、ハンターは本当にハンターである。
当方はハンターガチ勢ではないのと、あまりそこらへんを深掘りしてしまうのは自分にとって興を損なうということで触れないようにしているので「実際のハンターを使っているか」とかはわからない。
だが、客席の間を通るハンターだけでもかなりビビるし、眼前を通り過ぎるハンターは本当に反射的に息を殺してやりすごしてしまうほどだった。
かつて有吉弘行さんが「マツコ有吉かりそめ天国」にて「ただ追って来るだけなのに怖い」と語っていたが、本当に「目の前にいるだけで怖い」というのをまざまざと感じた。
セット・舞台装置
これが今まで見た舞台の中でも結構シンプルなのである。
背後にはモニター(プロジェクター)及びプロジェクションマッピングにて状況などが表示されるという演出となっている。
一方、基本は2階建てセットとなっており、1階のところは通路となっていて突然ハンターが現れたり、そこを抜けて逃走劇が繰り広げるなど神出鬼没感と躍動感に一役買っている。
また、それとは別に4つの柱のようなセット(2つは階段移動タイプ、2つははしご移動タイプ)が組まれており、これを移動させたり、登る事で舞台では難しい「立体的な逃走」を再現している。
階段の裏に潜みハンターをやり過ごす…2階から下の道を通るハンターを目撃する…逃走中で見てきた「あるある」を最小限のセットで表現しているのが実にニクイ。
ただ、私の場合前から2列目、しかも端なので実質1列目という「超エキサイトシート」で観覧したため、角度的にモニターに表示されるやつとかが見にくかったのがちょっと残念であった。ただ、ハンターと逃走者を間近で見れるという点を考えればお釣りは余りあるものである。
ミッション・ゲーム展開
こちらもネタバレを極力回避する形になる(公式PR映像を参照)が、やはりミッション1は「ゲーム時間残り30分までに時限装置を解除しないと強制失格。解除するには他の逃走者が持つ鍵は必要。」という「伝統の第1ミッション」である。今まで様々なミッションが発令されてきたが、やはり最初のミッションはこれに限る。最初の1杯目はビールぐらいの鉄板である。
一方、それ以後は「本家へのリスペクト」を感じさせながらも本家とは違うオリジナルのミッションが展開される。特にこれもまた「本家では実現できなさそうなミッション」ができるのも舞台という「作品」ならではだと思う。
前述したとおり、本家の「あるある」も「if」も所々にちりばめられており、だからこそ本家同様の緊張感と興奮を味わうことができる。
ゲーム時間終盤になると逃走成功までカウントダウンしながら手のひらに爪が食い込むほど祈るのが恒例だが、まさにその祈りを本当にやるぐらい「本物の逃走中」が繰り広げられる。
歌
劇中では逃走者たちによるオリジナルソング「逃げ勝ち」「follow me!」、そしてエンディングでは「Run For Dream」が披露される。
演技と並行してのダンスと歌唱をあの年で出来るのも凄いが、「Run For Dream」の作詞作曲はヒゲドライバーさん提供である。ギタドラ民としては「回レ!雪月花」や「打打打打打打打打打打」、「拙者拙者拙者拙者」でお世話になっている(だがスキルが上がらない)。なので凄いキャッチーに作られており、観劇してからもずっと「Run For Dream」が仕事中も頭に流れている。エンディングは動画撮影もOKなのでぜひ録画して皆の活躍を収めるのもいいだろう。
「暗転がない」からこそできる「ストレートすぎる逃走中」
ここからはより演出面に関して詳しく掘り下げていきたい。
これまで見た多くの舞台では劇中に暗転があるのが恒例となっている。
「暗転板付き」と言ったら暗転している最中に舞台上に立ち、明転してから演技を始めるといった感じである。もちろん暗転中にセットチェンジをすることもあり、場合によっては暗転時間が2、3分とかになることも割とある。
だが、この逃走中THE STAGEでは暗転することが無い。
ではどういう風に解消しているかと言うと、逃走中ならではの演出で解消している。
まずは「確保メールの読み上げ」。
本家でも1人の確保情報の読み上げに対し複数人が同時に反応する画が見られる。
舞台でも先ほど紹介した1階と2階部分を使い、上手く切り替えることで板付きの準備の時間を稼いでいる。
そして何より大きいのは「牢獄deトーク」。
本家では最近少なくなったが、確保者たちによる牢獄でのトークもちゃんと再現されており、それによって現在の状況説明はもちろん、先ほど紹介した4つの柱を動かす時間を稼いでいる。
その結果生まれたのは「ゲーム時間50分ノンストップの逃走中」である。
もちろん逃走者にとってはそれは普通なのだが、視聴者にとっては実はそれは普通ではない。
本放送ではCMの時間もあるしミッション説明の時間などもある。ずっと緊張が続くゲームの中でCMが入るとやはり一息ついてほぼ唯一のお茶を飲むチャンスとなるぐらい貴重なブレイクタイムとなる(ただ、自分が逃げ切ると予想している人が追われてCMに入ると気が気ではないが)。
しかし、この舞台ではそんなブレイクタイムは一切ない。
逃走者と同様に観客もまた50分間どうなるか分からない緊張のゲームを見守り続けることになる。
このあたりは「逃走者勢」か「ハンター勢」か「ゲーム勢」かというスタンスによって変わるとはいえ、やはり50分ノンストップは結構体に来る。
見終わった後の「楽しかった…!」感と「終わった…!」の疲労感はここ最近の3時間スペシャルと何ら変わらなかった。
時間は短いがその分ぎゅっと要素が濃縮されている。
また、その「ノンストップ放送感」を添えているのは本家でもお馴染みマーク大喜多さんによるナレーション。
これが無ければ我々が舞台を見ていてもそれは「編集する前の逃走者の映像を見ている」だけに過ぎない所を、ちゃんと「〇〇たちの近くに…ハンター…」「見つかった…」と添えてくれるだけでこの「舞台」が「逃走中」となる。
舞台を見ているようで放送を見ているようで、でもハンターは近くにいる。
なんというか「第四の壁」というか「第3.7ぐらいの壁」に観客がいるような、そんな感じでずっと楽しませてくれた。
観劇デビューが逃走中は絶対将来有望だと思う
逃走中公式でも「お子様の観劇デビューに!」という宣伝がされていた。
実際に観劇した時もちっちゃいお子さんを何人も見かけたが、ぐずってしまったのは1人ぐらいで皆泣くことも騒ぐことも無く舞台に見入っていた。
時間が1時間少々と短く、先ほどの暗転が無いことから暗さで恐怖心をあおる要素が少ないというのと、それだけ逃走中が小っちゃい子でも引き付けるぐらい楽しい物となっている証拠だろう。
子どもの頃に一番最初に見た映画や舞台は親と一生の話のタネになる。
自分は映画「ライオンキング」が最初だった。
映画なら「アンパンパン」「ドラえもん」「ポケモン」「プリキュア」あたり、舞台だと「おかあさんといっしょ」のファミリーコンサートあたりが相場だと思うが、「自分の人生で初めて見た舞台」が「逃走中」というのは間違いなく一生のインパクトになると思う。そしてそこから逃走中、ひいてはゲーム番組を含む様々なバラエティ番組を好きになってくれれば、その「先輩」として私は言うことが無い。
終わりに
逃走中が18年続き、周りのメンバーもどうしても「やっぱりクロノス期が…」「ジャンプ期の演出が…」といった懐古主義に走ってしまうのはそれは仕方がないと思うし、やはり「自分がハマった時の物が一番好き」というのはそれは誰しもがそうだと思う。
ただ、「クロノス参戦プレイヤーwiki」管理人として全逃走者のデータをまとめるという「常に逃走中の最前線にいないといけない人間」として今回の舞台を見て「今の逃走中」と「今の逃走中ファン」を見た時に、本当に「ああ、こんな小さい子まで逃走中を知って楽しんでくれてるんだなぁ」という感情と気づきを得た。別に何の製作にも携わっていない人間ではあるが、これほどまでに多くの人に支持されている番組は素敵だと思う。
これから逃走中が20年目、30年目、いや、2900年の「逃走中第1回開催」に向けて、逃走中がさらなる発展と展開を見せてほしいと願っている。
改めて、逃走中ファンと自認するならぜひ当日券で良いから見に行っていただきたい。
また、夏休み・9月の公演は5月25日から行われるプレリクエスト抽選で発売されるのでぜひそこから買っていただきたい。私と同じ「超エキサイトシート」でハンターを間近に見ることができる大チャンスである。
あとついでにYouTubeで配信されている「ADEL33」も見てください。
フライヤーに置かれていることにびっくりしたが、色々調べて「つながり」を見つけた時、これもまた感慨深くなった1つだったので…
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