
vol.23 「時間」を分かち合うシェアハウス「わの家 千峰」を、編む
「編む、ブルースタジオ」とは
「編む、ブルースタジオ」は、毎回一つのテーマに沿って、住まいのタイプやジャンルを超えて事例・サービスを再編集し、お届けします。いつもの分類とは少し異なる目線から、“役に立つ”だけではない、“大切”なモノ・コト・時間を見つけ出すnoteマガジンです。
家がシェアする「時間」
“シェア”ときくと、何をイメージしますか?
“シェア”という言葉が使われる範囲が、変わりつつあります。
技術の発達やコロナの中で、物理的な「モノ」を分かち合うことから、
写真や動画、SNSの投稿といった「情報」を分かち合うことへと、少しずつ中心がシフトしてきています。
しかし、シェアできるのは、モノ・情報だけでしょうか。
共に暮らしてきた/暮らしている家族や、共に働いたり学ぶ同僚や同級生とは、もっと違う何かがシェアできている、そんな感覚はありませんか?
vol.23,24の特集は、ブルースタジオが手がける“シェアハウス”です。
“シェアハウス”では何をシェアできるのか、どんなシェアをデザインできるのか。
それは、共用部や設備だけではないと考えています。
その場所で共に暮らす「時間」を分かち合うこともできるのではないでしょうか。

一つ屋根の下、共に暮らす人々が分かち合う「時間」、
かつて暮らしていた人から今暮らしている人へと重ねていく「時間」。
「時間」をシェアする糸口となる、“シェアハウス”。
暮らしを共にするなかでブルースタジオが「時間のシェア」をどのようにデザインしているのか、お届けしたいと思います。
昭和のお母さま、千峰さんの家
野方駅から歩いて5分、
商店街をぬけて住宅地をしばらく歩いて行くと、
新しい戸建て住宅が立ち並ぶなかに、時が止まったまま今の時代まで続いてきたような、木造平屋がみえてきます。
築90年を超える住宅をリノベーションしたシェアハウス「わの家 千峰」です。

「千峰」という名前は
大家である石川さんのお母さまであり、
この家で暮らしながら様々な芸事を嗜んでいた一人の女性の雅号に由来しています。

家のさまざまな場所にある作品や昔ながらの家具は、
この家をリノベーションする際に、この家で生まれ育った石川さんとブルースタジオがなるべく残していこうと話したものです。
今回の記事を作成するにあたり、あらためて、石川さんにもお話をお伺いしました。

笑顔がすてきな大家の石川さん。前回のインタビューは こちら から読むことができます。
石川さん
「母は、琴・三味線・日本舞踊・染物・絹染・鎌倉彫・お茶・お花、なんでもやりましたね。
私が子どものときから色々と作っていて、売ることはなかったけれども、近所の方にあげたこともありました。
玄関にある鎌倉彫もそう。時々、私の方で交換しているんです。」

お正月には獅子のお皿、竜のお皿など、何枚かあるのだそう。

その奥には共用部である広間、濡れ縁・中庭へと続きます。
作品は仕舞い込んで保管するのではなく、
日々の暮らしの一部として、いまを暮らす人々と一緒に四季をめぐり、時を重ねています。
日々使い込まれていくなかで、
少しずつ、大家さんである石川さんも手を加えながら、大切に守ってきた物たち。
昔の雰囲気を伝える写真は額装したり、
広間にある振り子時計は中の機械を自動のものに変えたり、
この場所で育まれてきた時間を今へ引き継いでいます。

はじめて見た写真でも、どこか懐かしい気持ちになります。
物を大切にする心は、石川さんだけではなく、「わの家 千峰」に暮らしてきた/暮らしている入居者の方々にも通じているようです。
石川さん
「ガラスは昔のもので、当時は節約のために薄かったんです。たぶん私が生まれたときからかな?
でも今はむしろ無いので、割れたらそこで終わりなんですよ。
冬はどうしても隙間風が入るから、神経質な人には向いていないけれども、冬だからそういうもんだって思える方には、千峰での暮らしが向いていると思うんです。」

夏場は開け放していると、風が通り抜けて気持ち良いのだそう。
自分の暮らしを作っていく家
千峰さんも、石川さんも、住んでいる人も一緒になって、皆で暮らしながら編み込んでいく「わの家 千峰」の時間。
この場所にいると、それぞれの時間がより豊かになっていくように感じます。
石川さん
「お花を飾ってくれる方が住んでいたんです。
玄関のところにかわいい花をいつも置いてくれていて。
こういう雰囲気の場所で一回住んでみたいなって思っている人は、楽しめると思います。」

また、リノベーションにあたって、シェアハウスとして住みやすいような整備も行われています。


今年で9年目を迎えた千峰。
どんな人が、この家に向いていると思いますか?
石川さん
「元々のターゲットは、高円寺あたりで1杯呑むような、どちらかというと芸術的な人。最初のうちは、ほんとにその通りだったんですよ。
それから明るい人、かな。不思議とね、どなたか一人は、先頭に立ってやってくれる、そういう方がいて。
家族じゃないけれども、友達付き合いとも違う、(シェア)ハウスだから。
自分で、自分の暮らしを作っていきたい人にはきっと面白い経験ができるはずです。
気になった方は、まずは見に来ていただけたらと思います。」

knit the time
「わの家 千峰」でシェアされている「時間」。
それは、暮らしのなかの作品が重ねてきた時間であり、
場所や作品を大切に守り続けていく価値観の時間であり、
この場所で暮らしてきたすべての人が分かち合い、育み、繋げていく時間です。
お互いの“「時間」をシェア” − 共感し、自分の暮らしへと編み込んでいくことで、
暮らしの豊かさをデザインすることができる。
モノ・情報、そして「時間」も“シェア”することができる家。
現在、“シェア”をしていきたい方々を募集しています。
「わの家 千峰」の時間は、これからもシェアハウスとしてさまざまな人々の中で編み込まれていきます。
次号では、スタッフの視点からお届けします。
お楽しみに。
今回紹介した事例についてもっと詳しく知りたい方に
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現在、わの家千峰では入居者募集をしています。
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