vol.13 集合住宅の「ハザマ」を住人の「アソビバ」に、を編む
Prologue:家の内と外の境界
家の外でやることといえば何でしょう?
いろいろなことが便利になりましたが、
誰かと会ったり、食事をしたり、
最近はテレワークがメジャーになってきたものの、かえって気分転換に外でお仕事、という方もいるかもしれません。
“ステイホーム”と言われるようになってから、
家の外に出ることで気分がリフレッシュするなど、
家の内にはないゆとり、「アソビ」がある良さに改めて気付かされた方も多いのではないでしょうか。
今回紹介するのは、「“集合住宅の”家の内と外の境界に位置する共用空間」です。
それぞれの家の内が分かれた集合住宅でも、
実は、家の内と外の境界は案外近い場所にあるのかもしれない。
境界を解いて、集合住宅の「ハザマ」に共用空間を設けることで、
“通過する場所”から、「アソビ」がある“滞在する場所”になる。
住居として使われていた1室をリノベーションすることで、
1室分の収益ではなく、
物件と、そこに住む居住者全員の暮らしにとっての価値を高めていくことができる。
そう考えたチームで手がけるプロジェクトをお届けします。
border 1:地域密着型の不動産会社とつくる、こどもと大人の共用空間
こどものための多世代交流基地
東京都大田区、久が原。
賃貸住宅・パティオ久が原の1階に「AGITO(アジト)」はあります。
中庭に面した場所にあった住居1室を共用空間へとリノベーション。
“こどものための多世代交流基地”をコンセプトに、
ゆったりできるスペース/菜園/大画面でゲーム/シェアキッチンなど、
こどもも大人も、多世代が使える場所としました。
友達と遊ぶこと。
料理やお菓子づくりを楽しむこと。
映画鑑賞やスポーツ観戦をすること。
外部の階段室や花壇などに使われていた既存の丸いモチーフを内部に入れ込みながら、芝生のスペースやビー玉洗い出しの床など、“楽しい”“外部空間との繋がり”“日常と非日常の間”を意識した環境をつくることで、
これまで外で行われていた日々の活動がこの場所でなされるように。
ばらばらの場所で行われていたことが一つの場所に集まることで、居住者同士の横のつながりが深まりました。
その先の、思い出にのこる「まちのシンボル保育園」
不動産管理業を営む東京ディフェンスさんとその後、ふたたび共同で企画した建物があります。
「Tre-sella square/ クオリスキッズ大井町保育園」です。
地域の未来をつくるこどもの場所が、地域に還元できる場所になる。
こちらはno.12で詳しく紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
border 2:こはらだの里守とつくる、暮らしを耕す共用空間
暮らしを拡張するエクステンションルーム
福島県郡山市。
歴史・環境・人との関係を再び耕す“里守”であるトラスホーム株式会社とブルースタジオで手がけた物件が二つあります。
1つめが、香久山・香久池公園エリアにある「ロカド香久山」、
そして2つめが、名倉にある賃貸住宅・レジデンス名倉の玄関口すぐ隣にある住居1室をリノベーションした「里守ひろば」です。
暮らしを拡張する“エクステンション”を担う共用空間である「里守ひろば」は、
暮らしの中の仕事環境、こどもたちの遊び場、おしゃべりの場所など
生活のための機能をコミュニティーと共有することができる場所です。
暮らしが拡張されることで、
自分の好きなことや得意なことを家の内から外へとひらき、街に分散し持つことができる。
そんなきっかけとなる場所にもなっています。
その前の、ひとびとが集う「まちかど「ロの字」共同住宅」
緑豊かな中庭に各住戸のリビングが面した「ロカド香久山」でも、
住民が一緒に楽しむ空間づくりの取り組みを建物の完成前から行ってきました。
「ロカド香久山」で行われてきたイベント=“非日常の空間”は、
「里守ひろば」では生活環境の拡張スペース=“日常の空間”へと、ゆるやかに形を変えながら
企画/建築を手がけたブルースタジオ、大家としての役割を担うトラスホームによって
歴史・環境・人との関係を再び耕し、豊かな暮らしは育まれていきます。
once over the border
「滞在する場所」、共用空間。
集合住宅の家の内と外の境界に、家の内を拡張したり、家の外を集めることで、
一人ひとりの境界の点が結ばれて線へ、
境界の線がコミュニティの面へと、
そして人々が訪れる空間へと広がります。
集合住宅の「ハザマ」にある住居1室を共用空間へリノベーションすることで、
“誰かが暮らす場所”が“自分がアソブ場所”へ。
本来収益のある貸室を共用空間にすることで、
目にはみえなくともチームで共有してきた“居住者の生活の豊かさ”“賃貸物件としての未来”が作られていきます。