「ヴィンテージ」だけでは語れない建物の魅力
最近、不動産業界では、昭和のマンションや戸建てで少し雰囲気のあるものを、何でもかんでも「ヴィンテージ」と呼び、「素敵!」「モダン!」と評する風潮があります。
確かに、古い建物には魅力がありますが、私は「ヴィンテージ」という言葉で片付けることに、少し違和感を覚えます。
たとえば、スーパーやデパ地下で閉店間際に高級なお肉やお寿司が半額になることがありますよね。
これを「お得だ!」と思うか、あるいは「味が落ちているから相応だ」と感じるかは、人それぞれです。
私も「お得だ!」と思って買うことがありますが、家に帰って食べてみると、思ったほど美味しくなく、むしろ損をしたように感じることもあります。それでも、また買ってしまうんですけどね…。
建物もそれと似たようなもので、古くなっていることを「ヴィンテージ」と評するのは、少し怖ささえ感じます。
特に、お客様が購入する場合、価格が見合っているかをしっかり考える必要があります。場所や見た目だけで簡単に判断してしまうと、本当の良し悪しが見えなくなることがあります。
だからこそ、ただ雰囲気だけで「イカす!」「素敵!」とは言えません。冷静にきちんと良し悪しを見極めることが重要です。
そして、その建物に宿っている本当の魅力をどのようにお客様に伝えるかが、不動産仲介(営業)の役割だと思っています。
建物は、そこで過ごしてきた人々の時間や、お気に入りの過ごし方、育まれた文化が詰まっているものです。
だからこそ、リノベーションや修繕を行う際には、その建物の持つ本来の魅力をしっかり理解し、それを活かして新しい価値を創り出すことが大切です。
また、リノベーションが必ずしも最適な解決策ではない場合もあります。
時には修繕に留めたほうが、その建物や住む人にとって良い選択になることもあります。
古いマンションやビルが、長い時間を経て得た力や魅力を無視してフルリノベーションしたものを、再び「ヴィンテージマンション」と呼ぶことにも違和感を覚えますよね。
新しい建物も、古い建物も、それぞれにストーリーがあります。
そのストーリーをどう未来へ繋げていくかを考えることが、私たちの仕事だと感じています。