ネコーヒー:エスプレッソ #1杯目
我々人間が外泊する時、猫は留守番となる。トイレを掃除し水を新鮮なものに換え、自動給仕器で2日分の食餌をセット。テトとマユは健康で、何より仲が良い。多少の後ろめたさはあるものの1泊程度であれば留守を任せることができる。
しかし困るのは人間の猫不足。あの素っ気なく我儘で食欲旺盛でモフモフした生物が足元にいないことは、何ものにも替えがたい渇きをもよおすのだ。
そうして出掛けた先で猫を見掛ければパパラッチよろしくカメラを構えて追跡する。皇帝が追求した至高の料理のような頬の輪郭に手の丸み、こちらに向いているのにあえて人間を無視する耳、ふてぶてしい背中から尾にかけての奇跡のライン、眺めているだけで潤いが充填される。
ああでもその毛並みを吸引したい。
猫の外飼いに賛否あるのは承知しているが、私は猫に避妊がなされ安全が担保されていれば肯しと考える。それに以前に比べ「痩せた野良猫」を見掛けなくなった。淘汰もあるだろうが、私が見掛けるのは肉付きが良く毛並みも艶々しい猫ばかりである。おそらく責任をもって面倒をみている人間がいるのだろう。
猫の外飼いを容認する人は、いや私は、猫という勝手気儘な動物が人間の命令と無関係に生きているのを眺めるのが好きなのだ。人間の生活の足元で、その境界があるのも知らずにルールの内外を出入りしている。
いつか人間が絶滅しても、猫はひび割れた廃墟を闊歩するだろう。
猫は自由に生きるだけ。
今日の英語:Cat