あらゆる宇宙のなかでもここだけの奇跡

 またもこっそりと、少し遠くに買い物に出掛けた。期間限定の青い店。電車を乗り継いで歩いて辿り着く。
 複雑にしすぎた街。人通りはあるが、どこか寒々しさがある。この首都でも有数の繁華街であるのに「テナント募集」の店舗が目立つのだ。小さな個人商店だけでなく、繁華街の路面店すら撤退が続き回復の気配がない。そもそもCOVID-19禍の前から小さめの経済で生活してきた私にはこれ以上貢献できることはない……。
 青い店が出店しているのは、以前も爬虫類キャラクター展で訪れた洗練系ホームセンター。昨年も出店していたが今回は少し売場が広くなっている。青いアクセサリー、銀色の文房具、宇宙と蒼と円環のモチーフ。そして上昇する私のアドレナリン値、交感神経が活性化し瞳孔はこの上なく開いている。
 買いたいけど買えない、何故なら私のコーディネート能力ではこの美しいモチーフを映えるように身に付けられない。だからといってただ飾るだけにしては少しお高い。つむじから黒煙をあげながら吟味に吟味を重ね、これだけは手のひらに置かずに人生を送れないというものを選ぶ。
 世の中には恐ろしいほど美しい感性とそれを顕す技術を持った人がこんなにも、そしておそらくもっといるのか。
 そしてカバンにマルチバースの破片を入れて帰途につく。素晴らしい職人が立ち行く世の中であらんことを。



今日の英語:Cosmos

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