上品と無頓着の奇跡の融合

 私の母は服を買わない。というより貰い物の服でほぼ全てをまかなっている。さすがに下着類は自分で買うが、それ以外のパジャマから訪問着まであらゆるジャンルの服を貰っている。
 これは経済的な理由でもなんでもなく、単に母が『小柄』だからだろう。身長約150cmのやや痩せ型、健康な成人女性として身長体重の下限近くにいる。そのため周囲の周囲の人達から「着れなくなった/やはりきつくて着れない」服が集まってくるのだ。自分が着れなくてもSさんであれば着れるだろうと。
 この事態において本当に幸運なのは、母の周囲は皆センスのある人達ばかりだということだ。亡き母方祖母やバイオリンのK先生もそうだったが、ほんのりと上品であったり控えめながらも華やかであったり、正しい意味で「趣味が良い」人達ばかりなのだ。なので無造作に服を選んでもそれなりに様に
なる。
 それなのに母は肌触りが気に入ってるからと同じカーディガンばかり着たり当たり障りないからと黒いシャツばかり着たりする。これには「宝の持ち腐れ」以外の言葉が出てこない。
 せめて重ね着する時はシルエットを意識してほしい。グレーの上着をもっさりと着こなした姿は「はんぺん」にしか見えないのだ、母よ。


今日の英語:Dress

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