ネコーヒー:ストレート #10杯目

 自転車で出掛けた帰り道、適当に道を曲がったら極楽の入り口に遭遇した。

 私は外を歩く時、決まったルートではなくあまり足に馴染みの無いルートを選ぶ。新鮮味とか探検気分とか理由はあるのだが、とにかく今日は絶景に出会えた。寺の山門で気だるげにしている猫。もうこの光景だけで五体投地ものだ。自転車から降り跪き手を合わせて「ありがたや」と呟く。

 猫は猫であるというだけで魅力的だ。カタログに載るような美形も嫌いではないが、私はどちらかというと面構えに個性のある猫の方が好きだ。三白眼の猫に無視されたり鼻でため息をつかれると嬉しくなる。それなのに体当たりしてきたり踏んできたりすると歓喜のあまりに昇天の極みである。

 私はこの寺の檀信徒ではないし猫たちも初対面の人間に生活圏へ入り込まれるのは望まないであろうから、今日は山門から拝観するのみ。猫が望まない限りは触ろうと追いかけてはいけない。怪訝なものを見る目で見られるだけで充分だ。

 いつまでこうやって「ふいに猫に遭遇する」ことができる世の中が続くだろうか。

 猫に辛辣な目線を送られるのはこれまでの行いの果報なのかもしれない。ならばより鋭利な眼光を向けられるよう、より徳を積まねばならないな。


今日の英語:Paradise

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