線で繋がる
私は線路というものが好きである。その上を走る車両については、交通網として感謝はしているが特に関心は無い。
惹かれる理由は、まず第一に遠近感があること。何故私が遠近感のある構図に惹かれるかは私の人生を量子コンピューターにて解析せねばならないだろうが、線路には都市部で失われた「流れ」の構図を持つ。河川にも似たうねりがそこにある。
第二には、植物の侵食。線路にはバラスト(砂利)が敷かれているため雑草の繁茂は避けられない。もちろん車両の運行には邪魔になるものだろうし、定期的にメンテナンスもしているだろう。しかし柵や鉄柱に絡み付く蔓の緑には深く心が揺さぶられる。
踏み切りという仕掛けや橋梁の合理的な構造などまだ語れる部分は多い。一方で車両そのものにはそう興味が湧かない、猫柄でもない限り。
昨日は1日で職場と保健所を2往復もさせられた。暑さと疲労で脳髄が凝集する思いだったが、乗り合わせた車両が猫柄であったことに相当救われた。いつか乗ってみたいと思っていた車両に疲労困憊の日に巡り逢う、それはバステト神の采配か。
河川や道路は遠くから来て彼方へ続いている。線路も然り。誰かが向こうまで行こうと鉄を綴った。この向こうへ誰かが乗った列車が去り、向こうの駅で誰かが列車を待っている。
人が歩くことはない路。車両も走らなくなったその時は、緑の川になるのだろう。
今日の英語:Line
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